no.2 パートナー

slippery when wet



リョウが食べ散らかしていった夕食の片付けを済ませ、
冴羽商事の帳簿を付け、
(はぁ・・・、もっと書き込みしたいわ)
家計簿を付け、(うーん、今月もヤバそうだわ・・・)
ゆっくりと湯浴みをすれば、長い夜の物語が始まる。


お気に入りのテレビドラマの展開に一喜一憂。
夜のニュースを眺めて一応の情報収集。
最近面白いと思っている
芸人さんが出ているバラエティにチャンネルセット。
あはは!と笑っているうちに
物語を追うのが退屈な、深夜映画が始まる。
 
 
寝てしまえばいいのに。
眠れない。
ボリュームを大きめにしても、聞こえる、雨の音。



考えることをしたくないから
何かを読もうと、作り付けの本棚へと向かう。



むむっ?
こ、これは、遼のもっこり雑誌?!
何で分かりやすいところに隠しておくんだか。
さ、処分処分。
慌てていたのか、思ったより動揺しているのか。
手から滑り落ちる雑誌、開かれる内側。
目に刺さる、扇情的な女性たちの艶に、息を呑む。

 

・・・今頃、遼は、何をしているの?
 

 
考えることをしたくないから
身体を動かす。


中身が見えないようにして、
黒いゴミ袋に詰め込んで、
資源ごみの日までは納屋に隠そう。 
結構な重さになったそれを引きずるうちに、
自分はこんな深夜に
いったい何をしているのだろうと、ふと思う。


かちゃり、と小さく鍵が開く音が
突然時を告げるごとく鳴り響く
鐘の音ほどの歓喜を伴って耳に届く。

 
無為なことをしていると思いたくないから
慌てて迎えに出てしまう。
眠れなかったことも隠せない。



「おか・・・えりって!!遼、びしょぬれじゃない
 早く脱いで、上だけでも全部脱いで!
 いくらあんたでも風邪引くわよ!
 あ、上がらないで。床濡れちゃうし。
 今タオル持ってくるから待ってて!」



起きているとは思っていなかった遼は
香のその剣幕に逆に驚く。


「お、おう、ただいま」


上着を脱ぎ、Tシャツを剥ぎ取り、
そのまま立ち尽くす。
遠くからせわしない足音、
まっすぐ自分の方へ向かってくる。


切羽詰った様子で
身体の水滴を拭き取っていく香の仕草に
女にこんなことをされたのは初めてだと思う。

  
お礼を言うのも何だか違う。
なんと言っていいのか分からず、
遼はただ黙って立ち続ける。
上半身を拭われるタオル越しに感じる、暖かい掌。

 

「・・・よし、と。さ、とりあえず水滴はもう落ちないし
 お風呂も沸いているから、入ってきちゃいなさいよ。
 あたし、もう寝るから」

 
「なあ・・・俺が風邪引くの、そんな心配か?」


「当たり前じゃない!
 私たちの仕事は体力勝負でしょーう?」
 

香はにっこりと微笑む。美しい笑顔で。 


「そうだな、愚問だった。
            … thanks, my betterhalf」



illustrated by Aterier XYZ


 
そう呟くと、遼は香を慈しむように見つめ、
そのまま風呂へと足を向けた。
 



 
  


 

  



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060905
Aterier XYZ 様から
夏のフリー画像ということで
どうにもこらえきれず
強奪してきてしまいました。すみませんっ。
題名「濡れているときは滑りやすい」口も行動も・・・。
愚問だな、って遼さんに言って欲しかったんです、
香さんの不安も含めて。

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