F.A.SS -
「鋼の錬金術師」の二次創作
【基本のエドロイSS】 -
原作をベースにした、エドロイSSです。
時系列順に並んでいます。
(下に行くほど後の出来事になります。)
誰がために - (まだロイの片想い)08.06.25up
- (両想いでもお互い気付かない)08.6.26up
水の中の月 - (告白)08.6.29up
- 08.6.30up
- (初めての触れ合い。大佐が咥えるのみ)08.7.1up
- (初体験)08.7.11up
蹟(しるし) - (大佐から初めてのキスマーク) 08.7.16up
シチュー - (大佐が熱を出さなくなったあたり)08.7.16up
- (大佐が壊れてます。ちょっとギャグ)08.7.22up
フソク - (豆がいないと闇がぶり返す大佐)08.7.22up
摂取 - (「フソク」の続き。相変わらず闇に囚われている大佐と帰ってきた豆)
08.7.22up
Turn R
Turn E
幕間 - (ごめんなさいなギャグ)
08.8.8up
- (ヤってるときのエドVer. 「虚」と対になってます。)
08.8.8up
- (ヤってるときのロイVer. 「彩」と対になってます。)
08.8.8up
- (「虚」の続き。どーしようもなくグダグダなロイ)
08.8.8up
- (兄さんと酔ってご機嫌の大佐。未然ジェラシー)08.10.25up
- (鬼畜い兄さん♪後、ヘタレ)08.10.25up
【遊 シリーズ】 -
パラレル。税務署長のロイと税理士のエド。

このSSは途中からRPG方式で、「遊」(ロイエドVer.)と「遊 脇道」(エドロイVer.)に枝分かれします。
但し、「遊 脇道」は「遊」本編と「遊 番外編」数本を包括した入れ籠構造になっておりますので、
「遊」→「遊 番外編」→「遊 脇道」の順に読まれることをお奨めします。
その順番にupして行きます。

「遊」vol.1〜vol.9 - 「遊」「遊 脇道」とも枝分かれするまで共通です。
「遊」vol.1 - 08.11.12up
「遊」vol.2 - 08.11.12up
「遊」vol.3 - 08.11.13up
「遊」vol.4 - 08.11.13up
「遊」vol.5 - 08.11.13up
「遊」vol.6 - 08.11.16up
「遊」vol.7 - 08.11.16up
「遊」vol.8 - 08.11.16up
「遊」vol.9 - 08.11.16up
「遊」 Vol.10以降(ロイエドVer.) -
ロイエドがお嫌いな方も、これはこの後のエドロイver.がこの「遊」のロイエドバージョンを含んだものですので、お読み戴ければ幸いと存じます。

「遊」vol.10 - 08.11.19up
「遊」vol.11 - 08.11.19up
「遊」vol.12 - 08.11.19up
「遊」vol.13 - 08.11.19up
「遊」vol.14 - 08.12.7up
「遊」vol.15 - 08.12.7up
「遊」vol.16 - 08.12.7up
「遊」vol.17 - 08.12.7up
「遊」vol.18 - 08.12.7up
「遊」vol.19 - 08.12.7up
「遊」vol.20 - 08.12.7up
「遊」vol.21 - 08.12.12up
「遊」vol.22 - 08.12.12up
「遊」vol.23 - 08.12.12up
「遊」vol.24 - 08.12.12up
「遊」vol.25 - 08.12.12up
「遊」vol.26 - 08.12.12up
「遊」vol.27 - 08.12.12up
「遊」vol.28 - 08.12.12up
「遊」vol.29 - 08.12.12up
「遊」vol.30 - 08.12.12up
「遊」vol.31 - 08.12.16up
「遊」vol.32 - 08.12.16up
「遊」vol.33 - 08.12.16up
「遊」vol.34 - 08.12.16up
「遊」vol.35 - 08.12.17up
「遊」vol.36 - 08.12.17up
「遊」vol.37 - 08.12.17up
「遊」vol.38 (これで完結です) - 08.12.17up
「幻」 (「遊」 番外編)(エドロイ) - 08.12.17up - (旧テレビアニメのラストから映画シャンバラのその後。ロイVer.)
「惑」 (「遊」 番外編)(エドロイ) - 08.12.17up - (旧テレビアニメのラストから映画シャンバラのその後。エドVer.)
「遊 脇道」(エドロイVer.) - 「遊」Vol.10以降
こちらはエドロイバージョンのうえ、ロイが精神的に壊れてしまっています。
しかも暗いです。
弱いロイが厭だという方はお読みならないで下さい。
「遊 脇道」Act.1 - 08.12.17up
「遊 脇道」Act.2 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.3 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.4 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.5 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.6 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.7 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.8 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.9 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.10 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.11 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.12 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.13 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.14 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.15 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.16 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.17 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.18 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.19 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.20 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.21 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.22 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.23 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.24 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.25 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.26 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.27 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.28 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.29 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.30 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.31 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.32 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.33 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.34 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.35 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.36 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.37 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.38(とりあえず完結ですが、「澱」へ続きます) - 08.12.26up
「澱」 (「遊 脇道」完結話) - 08.12.26up - (「脇道」のロイVer. これで「脇道」の本編は終わりになります)
「寥」 (「遊 脇道」 番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (「幻」の割愛部分)
「仕」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (駅前相談するセンセイ)
「誤」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (ある日税務調査が…)
「加」 (「遊」番外編 エドロイでもどっちでも) - 09.1.7up - (本編に入れ忘れた生協の小ネタ)
「罪」 (「遊 脇道」番外編) - 09.1.7up - (そして今2人は)
「問」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (そして今2人はその2)
「策」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 16.12.29up - (あの夜の男は)
【その他 ロイ受】
「戯」 (ブラロイ) - 09.1.7up - (ロイにホムンクルスと知られ、別れを告げるブラッドレイ)
「蓮」 (キンロイ) - 09.1.7up - (イシュヴァールにて。意外にほのぼのかと…。)
「痴」 (エドロイ)(単発) - 09.1.7up - (淫乱ロイの純情)
「羞」 (エドロイ前提ハボロイ)(「痴」シリーズ?) - 09.1.7up - (「痴」の続編。エドを愛しているロイだが、ハボに…。いや、ハボは被害者なのですが。)
- 上下につながりはありません
「紅」 (エドロイ) - 09.1.7up - (久しぶりに司令部に来た兄さん)
【単発 ロイエド】 - (焦れたロイにレイプされるエド。18禁のレイプものですんで、ご注意下さい)
「赦」 Act.1 - 09.1.7up
「赦」 Act.2 - 09.1.7up
【単発 ハボロイ】
「憂」 - 14.10.16.up - (ロイとハボックの阿呆らしいすれ違い)
「今更」 - 09.1.7up - (自分の想いに気付くロイ)
「蜜」 - 09.1.7up - (恋人になった後。エロシーンばっか)
「背」 - 09.1.7up - (ハボの背中に惹かれるロイ)
【「錯」シリーズ】 - ハボロイオンリーです。
イシュヴァールでの経験がロイに与えたものは…。
- 今はなき某数字SNSで、2007年9月から書いていたものです。
「錯」 Act.1 - 09.1.7up
「錯」 Act.2 - 09.1.7up
「錯」 Act.3 - 09.1.11up
「錯」 Act.4 - 09.1.11up
「錯」 Act.5 - 09.1.12up
「錯」 Act.6 - 09.1.16up
「錯」 Act.7 - 09.1.16up
「錯」 Act.8 - 09.1.17up
「錯」 Act.9 - 09.1.17up
「錯」 Act.10 - 09.1.18up
「錯」 Act.11 - 09.1.20up
「錯」 Act.12 - 09.1.21up
「錯」 Act.13 - 09.1.24up
「錯」 Act.14 - 09.1.27up
「錯」 Act.15 - 09.1.29up
「錯」 Act.16 - 09.2.1up
「錯」 Act.17 - 09.2.6up
「錯」 Act.18 - 09.2.12up
「錯」 Act.19 - 09.2.15up
「錯」 Act.20 - 09.2.20up
「錯」 Act.21 - 09.2.26up
「錯」 Act.22 - 09.3.9up
「錯」 Act.23 - 09.3.13up
「錯」 Act.24 - 09.3.20up
「錯」 Act.25 - 09.3.26up
「錯」 Act.26 - 09.4.7up
「錯」 Act.27 - 09.4.21up
「錯」 Act.28 - 09.5.6up
「錯」 Act.29 - 13.5.21up
「錯」 Act.30 - 13.5.22up
「錯」 Act.31 - 13.5.23up
「錯」 Act.32 - 13.5.26up
「錯」 Act.33 - 13.5.31up
「錯」 Act.34 - 13.6.2up
「錯」 Act.35 - 13.6.17up
「錯」 Act.36 - 13.6.19up
「錯」 Act.37 - 13.6.26up
「錯」 Act.38 - 13.7.11up
「錯」 Act.39 - 13.7.14up
「錯」 Act.40 - 13.7.19up
「錯」 Act.41 - 13.7.27up
「錯」 Act.42 - 13.8.13up
「錯」 Act.43 - 13.11.22up
「錯」 Act.44 (完結) - 13.11.26up
「聴」 (『錯』番外編) - 最終話後、ツケを支払に行くロイ。
Vol.1 - 17.1.7up
Vol.2 - 17.1.7up
【瑠】シリーズ - 【注意書きです】
これはいつものロイエドロイと、また原作とも異なるパラレルのロイエドロイSSです。
(すみません!最初間違えて『ロイエド』と書いてましたが、ロイエドロイです。)
原作またはアニメ設定以外受け容れないと言う方はお読みにならないで下さい。
最初は「人魚」のタイトルでしたが、後に「瑠」にしました。
「瑠」 Act.1 - 16.12.30up
「瑠」 Act.2 - 17.1.1up
「瑠」 Act.3 - 17.1.3up
「瑠」 Act.4 - 17.1.11up
Gift - 頂き物など
取調室にて -
ヒューズ×ロイ from 志乃さま
give me more -
ヒューズ×ロイ from 志乃さま
> 【遊 シリーズ】 > 「遊 脇道」(エドロイVer.) > 「遊 脇道」Act.17
「遊 脇道」Act.17
08.12.23up
家に帰って夕食を作った。
肉は男が帰ってきてから焼けばいいだろう。
まだ男に告げるかどうかの決心が付かない。
何が有っても、何を抱えていてもあいつを見捨てることはきっとない。
いや、絶対無いとオレは思う。
しかしそれは甘いのだろうか。
人一人の薬に頼るほどの精神の傷をオレは支えきることが出来るのだろうか。
それともしっかりと2人で傷に向き合って治療をすれば良くなるんだろうか。

オレは怪我をすれば治療をするように、精神が病気になればやはり治療をすればいいと思う。
しかし男はそうは思わないんだろうか。
それともヤツの言う通り、医者になんかには自分は治せないと思っているのだろうか。

「早く…帰ってこい。」
それでも結論が出ないまま逢うのをオレは恐れているのかも知れない。
『焦らずよく考えろ。』
オレは何度もその言葉を思い返した。
うん。今日結論を出さなくてもいい。
先ずは男を抱きしめよう。
オレが側にいると先ずは伝えよう。
何度でも。
オレはいなくならないとあいつが納得して、オレがいるのが当たり前なのだと思うまで。

インターフォンが鳴った。
オレはオーブンに設定してあった電子レンジのスイッチを入れて玄関へ行った。
「おかえり。」
? 息を切らしている?
「ああ…センセイ…ただいま…。」
オレに抱きついて来る。
「お…おお。どうした?なんでそんなゼイゼイ言ってんだ?」
しばらく息を整えている男の背中を撫でてやった。
「センセ…が一目散に…走ってこい…と…。」
はあ?
「言ってない!言ってないぞ!? そんなこと。」

ようやく落ち着いてきたようだ。
「はぁ…。言ったじゃないか、昼に。だから走ってきた。」
言ったっけか?
「オレ、一目散に『帰って来い』とは言ったと思うけど?」
「同じことだ。」
同じじゃねぇだろ!?
「走ってまで来なくていいんだよ。疲れただろ?
 とりあえず水を飲め。」
離れようとしたオレを強く抱きしめて
「とりあえずなら、先ず口づけを欲しいな。」
仕方のないヤツだ。
「ん。ほら。おかえり。」
軽いキスをする。

すぐに離れたのが不満だったようだ。
「足りない…。」
言うなりまたキスをしてきた。
なんで玄関でこんな深いキスをしてるんだろう。
とは思ったが男の好きにさせたかったのでオレもそれに応えた。
ふと時計を見ると5時10分だ。
ちゃんと定時まで税務署にいたんだろうな!?


「あ、ちゃんと野菜に巻けってば!
 ちょっとよこせ。」
肉ばかり食べようとする男の皿を取り上げた。
「セロリ以外は食べるって割には、あんた野菜をよけるよな?」
「野菜が嫌いな訳ではない。肉が好きなだけだ。」
子供か!?
「あんた野菜が足りてねぇんだよ。もっとちゃんと食べろ。
 ほら。巻いたからこれをまたレタスに乗せて。
 ああもう。手で喰っていいから!」
オレ、自分の食事が出来てねぇ。
なんなの?この手の掛かるコドモは!?

「どうだ?」
一口喰った男に聞く。
「…これなら好きだ。」
やっぱ野菜嫌いなんじゃん。
「茹でるときに塩を多めに入れておくんだ。
 味が付いてると食べやすいだろ?」
「ん…。」
ソースがレタスから垂れかかってている。
姿勢良く食べているせいで却って服に落ちそうだ。
「ほら。もっと皿の上で喰わないと垂れるぞ?」
「ん…。」
言われるまま少し上半身を前に傾ける姿に思わず溜め息が出た。
「なあ。喰いにくかったか?この料理。」
いつもは優雅な食べ方をする男が苦労するのも見てて楽しいけど。
それでもやはり細やかな動作が綺麗だ。見ていて気持ちがいいのは変わらない。
「ん?いや美味しいよ。こういうのは初めて食べた。」
うーん。手で掴んで食べる類のモノは知りませんって人種だな。
だから『ぎょみん』なんだっつの。

ようやくオレも自分の食事にありつけた。
と同時にレンジが鳴った。
「?」
「ああ。オニオングラタンスープが出来たんだ。」
セットになっている木製のポット受けに乗せて男の前に置く。
「入れ物が熱いからな。気を付けろよ?」
もう、どんなコドモにオレは注意してんだか。

「これもセンセイが?」
スープを見て不思議そうに言う。
「? そうだけど。なんで?」
ほら。とスープスプーンを渡してやる。
「自分の家で出来るものだったのか…。」
しみじみ見つめている。

「は!?簡単だぜ?オーブンが有ればすぐだ。」
「そうなのか!?」
なにを驚いているんだ?
「好きなのか?これ。」
「ああ。ミネストローネも美味しかったが、これは大好物なんだ。
 レストランでしか食べられないものだと思っていたよ。
 センセイはすごいな。」
嬉しそうに笑う。
ホントに嬉しそうだな?そんなに好きなのか?
つか、玉ネギ炒めるだけだぞ?労力は。

「スープはまだ残ってるからもっと欲しかったら言えよ?
 ここんちは6客ずつ食器があるから平行して焼けるしな。」
引き出物天国は、欲しいものは少ないが数は揃っている。
「それは嬉しいな。」
「あ、その前に豆も喰え、豆も。ちゃんとベーコンが入ってるから。」
豆と野菜の煮物も手を付けていない。
「ん。ああ。…これも美味いな。
 豆は好きだぞ?大好きだ。」
それは意外だった。野菜が入ってたから躊躇してたのか?
「ん。よかった。」
男はマッシュポテトを野菜と一緒に肉に巻くと美味いという新発見を嬉しそうにオレに披露し、スープを結局三杯飲んだ。


「ああ。こんなに沢山食べたのは久しぶりだな。」
もう紅茶も入る余裕がないと言い、ソファに凭れている。
「腹壊すなよ?」
オレは先に風呂に入り、ビールを飲んでいる。
男はまだ動けないと風呂には付いてこなかった。
…よかった。

「センセイの作ってくれたもので腹など壊せないよ。」
くッ!かわいいヤツめ!
「なんだ?今日は随分機嫌がいいな?」
男の頬に指を滑らす。
そのまま耳たぶに触れて髪を撫でると、男は気持ちよさそうに目を細めた。

「ん。センセイが抱いてくれると言ったから…。」
うわ。下半身直撃爆弾投下!? ←お下品
しかし喰ったばかり&かなりの量
これ、吐かれたら結構苦しそうだよな?
もう少し消化してからじゃないとマズいよな?
つか、考えて喰えよな!?
いや、喜んで沢山喰ってくれるのは嬉しいけどさ。

手を出したいが出せない状況にオレは悩んだ。
どう…消化するまで時間を潰せば?
大体3時間で消化は終わる。
いや、胃をカラにしなくてもいいのか。
それにしても吐く量は少ない方がいいよな。
前戯で2時間ってのもアリだが、オレの理性が持ちそうにない。
こいつの感じてる声も顔も揺れる躰もオレを煽るから。

くぅ〜〜〜!
なんで男を抱くのにこんなに悩まなきゃ?
あー。すんげぇ上等のお嬢さんを前にした気分?
いや、女性はあんまり吐かないだろうけどな。
つか、男同士ってこんなに大変だったんだなー。
ウィンリィたちの描いてる『受け』も吐くほどつらい思いをしてるんだろうか?

ああ、『公務員シリーズ』借りてくりゃよかったかな。
…しかし、そもそも女性が書いたものって参考になるのか?

「センセイ?」
動きを止めて思考の淵に沈んでしまっていたオレに声が聞こえた。
「あ?ああ。どうした?」
いや、どうしたはオレだろう?
「ん?いや、なにか考え込んでいるようだったから。」
「ああ。なんでもねぇ。」
首を少し傾げてオレを見るその表情がかわいいぜ!

あ、理性飛びそう。
なにか…なにか話を…。
「あ!…のさ。」
「ん?」
「風呂、そろそろ這入れるか?」
男は自分の躰と相談しているようだ。
「んー…。まだ動けない。」
ああ。だからそんなかわいい言い方を…。
「そ…そか。のぼせたら気持ち悪くなるもんな。」
オレ、ヘンな汗がダラダラ出てきたよ。
どうしよ?

落ち着け、落ち着くんだ。オレ!
「センセイ?大丈夫か?」
「んあ!?」
あ、声ひっくり返っちゃったよ…orz
「どうした?具合でも悪いのか?」
心配そうな表情に申し訳なくなる。
「いや、大丈夫だ。すまないな。」
「? 何が?」
「ああ。心配掛けちまってさ。」
ふ、と笑うその顔も好きだ。
…好きだーーーー!!!
ああ。オレ、壊れてる?

「そんなに…厭か?」
あ?
あれ?
なんで哀しそうな顔?
いつの間に? さっき笑ってたよな?
「なにが?」
いや、待つ時間は結構イヤかも。
早く消化してくれ。

「やはり…男を抱くなど…イヤか?」
はあ!?
あ、オレ今ものすごくマヌケた顔してる。
「あ…ナニ言って…。」
「無理を…しなくてもいい。」
どういう誤解だ?
昨日だってオレちゃんと『抱きたい』って言ったよな?

「私が望むから、無理に抱こうとしてくれるんだろう?」
どうして解らないんだ? こいつは。
「オレ、あんたを抱きたいよ?」
「センセイは…優しい…から…。」
ああ、そんな泣きそうな顔……も煽るっての!!!

「オレ…。も、そろそろ我慢の限界でさ。
 ぶっちゃけて本音言ってもいいか?」
自分で思ったよりも低い声だった。
びく、と躰を揺らして怯えたように不安な瞳で見てくる表情にすら、もう危ないくらい煽られて襲う寸前だぜ。
「セン…?」
「あのな!
 さっきからあんたに煽られてもうオレ限界だ!
 今すぐにでも抱きたいんだよ!
 ずっと我慢してんの!
 でも今、あんた風呂にも入れないくらい腹いっぱいだろ?
 大体あんたが喰った量プラス胃液考えると、吐いたら洗面器が溢れんだ。
 ここんち洗面器イッコしかねぇし!
 あと使えるっつったら、鍋くらいだよな?
 あんた自分の吐瀉物受けた鍋で作った料理、明日から食えるか?
 そもそもかわいすぎるのがいけねぇんだよ!
 男のクセに、三十路超えてるクセになんなんだ?
 そのかわいさはよ!
 すげえ抱きてぇよ!
 今すぐにでもな!
 そんでオレを我慢させた挙げ句に『無理しないでいい。』だあ!?
 ふざけんな!
 オレはずっと無理してるよ! 我慢してるっての!
 あんたを抱くのをな!
 解ったか!?
 解ったらさっさと喰ったモン消化するか、ちったぁオレを萎えさせるような話の一つでもしてみやがれ!」
イッキに捲し立てたオレを呆然と見つめている。

ちっ!
思わず舌打ちをしてしまった。
「ああ。オレ、カッコ悪ぅ。
 ずっとあんたの前じゃ余裕でいたかったのに。
 どうしてくれんだよ?」
ぅう。
自己嫌悪で溜め息をついちまう。

しばらく2人ともナニも言わなかった。
いや、オレはナニも言えなかったんだけどさ。
今更ながら恥ずかしくて。
自己嫌悪で口も開けなかったんだ。
情けねぇ。


それからどれだけの時間が経ったんだろう。
ふいに男が口を開いた。
「センセイ。
 …『人魚姫』という童話があるだろう?」
は?脈絡の無いヤツ。
「…ああ。」
それでもこいつがナニを言い出すのか興味が湧いた。
「あの童話を書いたアンデルセンという男には支援者がいたんだ。
 ヨナス・コリンという。」
「…ふぅん?」
「ヨナス・コリンにはエドワードという息子がいた。
 …次男だがね。」
エドワード?
オレと同名?

「うん…。」
「アンデルセンはエドワードに求愛をした。」
「あ?両方男だよな?」
「そうだ。まあ同時にエドワードの妹にも求愛していたらしいがな。」
「は!?兄妹いっぺんに?」
「ああ。アンデルセンには、夫婦や兄弟などの一対の対象をまとめて愛する性癖が有ったそうだ。
 まあ、妹の方はほっといて、だ。」
「ん。」
「エドワードはアンデルセンの求愛を退け、結婚してしまった。
 しばらくアンデルセンは落ち込んだそうだ。」
「…。」
「それでもエドワードもアンデルセンを断ち切ることはできず、ずっと友人として過ごした。
 やがてアンデルセンはエドワードの息子のヨナスに求愛をし、晩年にようやく『愛する人』という称号の『Du』と呼んで貰えたんだ。
 そしてアンデルセンは自分の死後、すべての財産をエドワードに譲るという遺言を残して死んだ。
 ヨナスではなくね。
 アンデルセンはエドワードを愛していたんだ。
 妹や息子に求愛をしたのは、ただエドワードと対になっていたからだと私は思うのだよ。
 アンデルセンは生涯エドワードという人間だけを愛し続けたと。」

「…。」
「『人魚姫』の話は哀しいものなのだろう。
 しかし、愛する男が自分から去るその日に、泡になったことは私には『救い』だとしか思えない。」
少し話が飛んでないか?
こいつの精神状態は大丈夫か?
薬は飲んでいるんだろうか?

「海に戻れなくて?泡になって消えちまうのに?」
オレには『救い』とは思えない。
「自分が『ただ独り』取り残され、愛するものに去られた後の日々を生きないで済んだんだ。
 …それは『救い』ではないかね?」
どうなんだろう?
オレは人魚姫よりも今こいつの方が心配だ。

「わかんねぇ。
 オレが人魚姫だったら、みすみす王子を他の女になんか渡さねぇな!
 さっさと押し倒してモノにしてやる。
 言葉なんか話せなくたって、その位やりゃあよかったんだよ。
 ヘンに遠慮なんかしてっから、かっ攫われちまうんだっての!」
オレの言葉に楽しそうに笑っている。
よかった。
安定しているようだ。

「センセイらしいな。
 うん。私も同感だ。失う前にもっと努力をすべきだと思う。
 自分の全てを投げ打ってでもね。
 …それでも失ってしまう時は、やはり私も泡のように消えたいと願うけれど。」
声が震えている?

「どうだ?少しは萎えたかね?」
にやり、と笑う顔はいつもの通りだった。
「! お陰様で!」
「っははは。君のリクエストに応えたつもりだったのだがな。
 ああ、『人魚姫』の像というのがアンデルセンの過ごした街にあるのだが、その像を造った彫刻家もエドワードと言うのだよ。」
「あんた、なんでそんなこと知ってんだ?
 童話が好きなのか?」
意外だった。
そんなことを知っているのも、こんな話をすることも。

「いや。ただ、以前新聞だったかに『エドワード』という文字があったのでなんとなく読んでみたらアンデルセンの記事だったんだ。
 それで覚えていた。
 別に他の童話にはなんの感慨もないな。」
なるほど。って、ちょっと照れくせぇぞ?それ。

「で、あんたも生涯を掛けて『エドワード』を愛するって?」
お、余裕大王、オカエリナサイ。
「ああ。その通りだ。私の王子様。」
あ、どこ行くんですか?大王!
「では人魚姫、そろそろ風呂に行かれてはどうですか?
 人魚には躰が乾いて仕方がないでしょう?」
余裕大王の裾を踏んで押し留めることに成功!
「私の王子様が他の女性に靡かないと言って下さらない限り安心できません。」
だーかーらー。
その艶麗な表情はヤメロ。
オレを萎えさせてくれるんじゃなかったのか?

「バカ!オレを煽ってどうするんだよ?まだ腹にモノが入ってんだろ?」
我慢出来ずにキスしてしまう。
「ん…もうそろそろこなれてきた。
 君が時間を掛けて愛してくれればいいだけだろう?」
オレにこれ以上我慢させるつもりか!?

「ほおお?速攻突っ込んだら、人魚姫を捨てた王子より貶されるってか?」
「いや。私は君が抱いてくれるのならなんの不満もないが?」
こいつ…。
「もっとこなれるまで、ゆっくり風呂に入ってこい!
 …オレは姫を待ってるから。
 例え抱くとゲロ吐く姫でもな!」
う、と詰まった様子にようやく溜飲が下がったぜ。
「そういうことを言うのか。君は。」
あ、姫の逆鱗に触れた?
「す…すみません!失言でした!」
ああもう。オレはどこまでこいつに振り回されればいいのか。

しかしナンの反撃も出来ないのも悔しい。
オレは男のうなじに手を廻し
「なあ。あんたって萎えさせるのヘタだよな?
 もう抱きたくて仕方がないんだよ。
 この白くて美味そうな躰をオレが食べられるようにしてきてくれないか?」
耳元に囁く。
「君だって…萎えさせるのがヘタじゃないか。」
真っ紅に染まって拗ねた声を出す。
ふっ、ちょろいぜ。
男の言葉にイッキに下半身が暴走しそうになったけどな。
…こいつが風呂入ってる間に1回ヌいとこう。

「待ってるから。風呂入って来いよ。
 …抱いてやるから。
 あ、風呂上がるときに洗面器、持って来いよ?」
必要だと思うから言ったんだが
「君は…デリカシーに欠けているな!」
怒られてしまった。
だって、必要だよな?
オレ、間違ってる?

紅い顔をした男を見送った後で、オレはトイレにダッシュした。






アンデルセンの支援者ヨナス・コリンの息子がエドワード、エドワードの息子の名前が祖父と同じくヨナスです(たぶん。記憶が確かなら)。



Act.18

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