F.A.SS -
「鋼の錬金術師」の二次創作
【基本のエドロイSS】 -
原作をベースにした、エドロイSSです。
時系列順に並んでいます。
(下に行くほど後の出来事になります。)
誰がために - (まだロイの片想い)08.06.25up
- (両想いでもお互い気付かない)08.6.26up
水の中の月 - (告白)08.6.29up
- 08.6.30up
- (初めての触れ合い。大佐が咥えるのみ)08.7.1up
- (初体験)08.7.11up
蹟(しるし) - (大佐から初めてのキスマーク) 08.7.16up
シチュー - (大佐が熱を出さなくなったあたり)08.7.16up
- (大佐が壊れてます。ちょっとギャグ)08.7.22up
フソク - (豆がいないと闇がぶり返す大佐)08.7.22up
摂取 - (「フソク」の続き。相変わらず闇に囚われている大佐と帰ってきた豆)
08.7.22up
Turn R
Turn E
幕間 - (ごめんなさいなギャグ)
08.8.8up
- (ヤってるときのエドVer. 「虚」と対になってます。)
08.8.8up
- (ヤってるときのロイVer. 「彩」と対になってます。)
08.8.8up
- (「虚」の続き。どーしようもなくグダグダなロイ)
08.8.8up
- (兄さんと酔ってご機嫌の大佐。未然ジェラシー)08.10.25up
- (鬼畜い兄さん♪後、ヘタレ)08.10.25up
【遊 シリーズ】 -
パラレル。税務署長のロイと税理士のエド。

このSSは途中からRPG方式で、「遊」(ロイエドVer.)と「遊 脇道」(エドロイVer.)に枝分かれします。
但し、「遊 脇道」は「遊」本編と「遊 番外編」数本を包括した入れ籠構造になっておりますので、
「遊」→「遊 番外編」→「遊 脇道」の順に読まれることをお奨めします。
その順番にupして行きます。

「遊」vol.1〜vol.9 - 「遊」「遊 脇道」とも枝分かれするまで共通です。
「遊」vol.1 - 08.11.12up
「遊」vol.2 - 08.11.12up
「遊」vol.3 - 08.11.13up
「遊」vol.4 - 08.11.13up
「遊」vol.5 - 08.11.13up
「遊」vol.6 - 08.11.16up
「遊」vol.7 - 08.11.16up
「遊」vol.8 - 08.11.16up
「遊」vol.9 - 08.11.16up
「遊」 Vol.10以降(ロイエドVer.) -
ロイエドがお嫌いな方も、これはこの後のエドロイver.がこの「遊」のロイエドバージョンを含んだものですので、お読み戴ければ幸いと存じます。

「遊」vol.10 - 08.11.19up
「遊」vol.11 - 08.11.19up
「遊」vol.12 - 08.11.19up
「遊」vol.13 - 08.11.19up
「遊」vol.14 - 08.12.7up
「遊」vol.15 - 08.12.7up
「遊」vol.16 - 08.12.7up
「遊」vol.17 - 08.12.7up
「遊」vol.18 - 08.12.7up
「遊」vol.19 - 08.12.7up
「遊」vol.20 - 08.12.7up
「遊」vol.21 - 08.12.12up
「遊」vol.22 - 08.12.12up
「遊」vol.23 - 08.12.12up
「遊」vol.24 - 08.12.12up
「遊」vol.25 - 08.12.12up
「遊」vol.26 - 08.12.12up
「遊」vol.27 - 08.12.12up
「遊」vol.28 - 08.12.12up
「遊」vol.29 - 08.12.12up
「遊」vol.30 - 08.12.12up
「遊」vol.31 - 08.12.16up
「遊」vol.32 - 08.12.16up
「遊」vol.33 - 08.12.16up
「遊」vol.34 - 08.12.16up
「遊」vol.35 - 08.12.17up
「遊」vol.36 - 08.12.17up
「遊」vol.37 - 08.12.17up
「遊」vol.38 (これで完結です) - 08.12.17up
「幻」 (「遊」 番外編)(エドロイ) - 08.12.17up - (旧テレビアニメのラストから映画シャンバラのその後。ロイVer.)
「惑」 (「遊」 番外編)(エドロイ) - 08.12.17up - (旧テレビアニメのラストから映画シャンバラのその後。エドVer.)
「遊 脇道」(エドロイVer.) - 「遊」Vol.10以降
こちらはエドロイバージョンのうえ、ロイが精神的に壊れてしまっています。
しかも暗いです。
弱いロイが厭だという方はお読みならないで下さい。
「遊 脇道」Act.1 - 08.12.17up
「遊 脇道」Act.2 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.3 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.4 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.5 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.6 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.7 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.8 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.9 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.10 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.11 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.12 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.13 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.14 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.15 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.16 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.17 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.18 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.19 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.20 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.21 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.22 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.23 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.24 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.25 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.26 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.27 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.28 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.29 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.30 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.31 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.32 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.33 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.34 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.35 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.36 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.37 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.38(とりあえず完結ですが、「澱」へ続きます) - 08.12.26up
「澱」 (「遊 脇道」完結話) - 08.12.26up - (「脇道」のロイVer. これで「脇道」の本編は終わりになります)
「寥」 (「遊 脇道」 番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (「幻」の割愛部分)
「仕」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (駅前相談するセンセイ)
「誤」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (ある日税務調査が…)
「加」 (「遊」番外編 エドロイでもどっちでも) - 09.1.7up - (本編に入れ忘れた生協の小ネタ)
「罪」 (「遊 脇道」番外編) - 09.1.7up - (そして今2人は)
「問」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (そして今2人はその2)
「策」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 16.12.29up - (あの夜の男は)
【その他 ロイ受】
「戯」 (ブラロイ) - 09.1.7up - (ロイにホムンクルスと知られ、別れを告げるブラッドレイ)
「蓮」 (キンロイ) - 09.1.7up - (イシュヴァールにて。意外にほのぼのかと…。)
「痴」 (エドロイ)(単発) - 09.1.7up - (淫乱ロイの純情)
「羞」 (エドロイ前提ハボロイ)(「痴」シリーズ?) - 09.1.7up - (「痴」の続編。エドを愛しているロイだが、ハボに…。いや、ハボは被害者なのですが。)
- 上下につながりはありません
「紅」 (エドロイ) - 09.1.7up - (久しぶりに司令部に来た兄さん)
【単発 ロイエド】 - (焦れたロイにレイプされるエド。18禁のレイプものですんで、ご注意下さい)
「赦」 Act.1 - 09.1.7up
「赦」 Act.2 - 09.1.7up
【単発 ハボロイ】
「憂」 - 14.10.16.up - (ロイとハボックの阿呆らしいすれ違い)
「今更」 - 09.1.7up - (自分の想いに気付くロイ)
「蜜」 - 09.1.7up - (恋人になった後。エロシーンばっか)
「背」 - 09.1.7up - (ハボの背中に惹かれるロイ)
【「錯」シリーズ】 - ハボロイオンリーです。
イシュヴァールでの経験がロイに与えたものは…。
- 今はなき某数字SNSで、2007年9月から書いていたものです。
「錯」 Act.1 - 09.1.7up
「錯」 Act.2 - 09.1.7up
「錯」 Act.3 - 09.1.11up
「錯」 Act.4 - 09.1.11up
「錯」 Act.5 - 09.1.12up
「錯」 Act.6 - 09.1.16up
「錯」 Act.7 - 09.1.16up
「錯」 Act.8 - 09.1.17up
「錯」 Act.9 - 09.1.17up
「錯」 Act.10 - 09.1.18up
「錯」 Act.11 - 09.1.20up
「錯」 Act.12 - 09.1.21up
「錯」 Act.13 - 09.1.24up
「錯」 Act.14 - 09.1.27up
「錯」 Act.15 - 09.1.29up
「錯」 Act.16 - 09.2.1up
「錯」 Act.17 - 09.2.6up
「錯」 Act.18 - 09.2.12up
「錯」 Act.19 - 09.2.15up
「錯」 Act.20 - 09.2.20up
「錯」 Act.21 - 09.2.26up
「錯」 Act.22 - 09.3.9up
「錯」 Act.23 - 09.3.13up
「錯」 Act.24 - 09.3.20up
「錯」 Act.25 - 09.3.26up
「錯」 Act.26 - 09.4.7up
「錯」 Act.27 - 09.4.21up
「錯」 Act.28 - 09.5.6up
「錯」 Act.29 - 13.5.21up
「錯」 Act.30 - 13.5.22up
「錯」 Act.31 - 13.5.23up
「錯」 Act.32 - 13.5.26up
「錯」 Act.33 - 13.5.31up
「錯」 Act.34 - 13.6.2up
「錯」 Act.35 - 13.6.17up
「錯」 Act.36 - 13.6.19up
「錯」 Act.37 - 13.6.26up
「錯」 Act.38 - 13.7.11up
「錯」 Act.39 - 13.7.14up
「錯」 Act.40 - 13.7.19up
「錯」 Act.41 - 13.7.27up
「錯」 Act.42 - 13.8.13up
「錯」 Act.43 - 13.11.22up
「錯」 Act.44 (完結) - 13.11.26up
「聴」 (『錯』番外編) - 最終話後、ツケを支払に行くロイ。
Vol.1 - 17.1.7up
Vol.2 - 17.1.7up
【瑠】シリーズ - 【注意書きです】
これはいつものロイエドロイと、また原作とも異なるパラレルのロイエドロイSSです。
(すみません!最初間違えて『ロイエド』と書いてましたが、ロイエドロイです。)
原作またはアニメ設定以外受け容れないと言う方はお読みにならないで下さい。
最初は「人魚」のタイトルでしたが、後に「瑠」にしました。
「瑠」 Act.1 - 16.12.30up
「瑠」 Act.2 - 17.1.1up
「瑠」 Act.3 - 17.1.3up
「瑠」 Act.4 - 17.1.11up
Gift - 頂き物など
取調室にて -
ヒューズ×ロイ from 志乃さま
give me more -
ヒューズ×ロイ from 志乃さま
> 【遊 シリーズ】 > 「遊 脇道」(エドロイVer.) > 「遊 脇道」Act.32
「遊 脇道」Act.32
08.12.24up
ヤヴァイ!
遅れる!
オレはお客さんへと走っていた。
特に時間にうるさいお客さんという訳ではない。
しかし時間に正確な『パンクチュアル・エルリック事務所』がオレ等の主義だ。
最大でも遅れは5分までと決めている。

がぁー。喉乾いた。
でもお客さんは喫茶店経営だ。
もう少しで水物にありつける。
今日はここが終わったら貰った帳面を事務所に置いて帰ることにしよう。
男はもう仕事が終わって事務所にいるだろう。

やっと辿り着いた。
なんとか時間に間に合ったな。
乱れた息をしばし店の外で整える。
何気なく店の中を覗くと男がいるのが見えた。

なんでここに?

向かいには女性が座っている。
…デート…な訳ないよな?
税務相談…は税務署でする。(そもそも署長職は税務相談なんてしないだろう。)
なんだろ?
とりあえず邪魔にならないように仕事だけ済ませよう。
オレはドアを開けた。

「こんにちは。エルリック事務所です。」
男が驚いてオレを見たのが解った。
しかしここは他人のフリをした方がいいだろう。
オレはなんの反応も示さなかった。

「先生、いつも有り難うございます。」
お客さん(母さんくらいの年齢の女性だ。落ち着いていてやわらかい印象を受ける。)に挨拶をする。
旦那さんは確か会社員だとか言っていた。
「こちらこそいつもお世話になっております。
 テーブルはこちらで宜しいですか?」
「どちらでも先生のお好きなところで。」

大抵この時間にはロクに客がいないので、資料の受取りは店内でしている。
オレはいつもの壁際の席に座った。
ここからは男の背中が見える。
男と向かい合っている人をさりげなく見やると綺麗な女性だ。
年の頃24〜27歳ってとこか?
長い金髪がよく手入れされているようだ。
ふーん。さすがに趣味がいいな。間柄は不明だが。

「お飲み物は何が宜しいですか?」
「あ、すみません。アイスコーヒーを戴けますか?」
走ってきたから冷たいモンが欲しい。
「はい。今帳面お持ちしますね。」
「あ、あと通帳もお願いします。」

ふぅ、と息をついているとこの店のお嬢さん(たしか13歳?あれ?15歳だったかな?その辺だ。)が勢い良くカウンターから出て来た。
「先生、いらっしゃいませ!」
「こんばんは。」
いつもニコニコしてて明るい娘だ。

「ねえ!先生、お仕事忙しいの?」
「今は忙しいな。この時期ヒマだったらオレ、食いっぱぐれてるよ。」
「そうなんだ。あのね。先生、お仕事ヒマになったらデートして!」
は!?
あ、今男の肩がぴくっとした。

「デート?オレと?」
おい。
あんた今目の前にいる人の言葉より、こっちに耳傾けてるだろ!?
連れの女性に集中しろよ!失礼だろ?
「デートは好きな男とするもんだろ?」
誤解すんな!

「えー。だって先生カッコイイからデートしたいんだもん。」
いや。気持ちは嬉しいけどな。
君は今、ものすごく面倒な事態を引き起こそうとしてんだぞ?

「こらこら。先生が困っているでしょう?
 お仕事の邪魔をしてはダメよ。」
お客さんが助けてくれた。
「仕事終わったら先生に見せたいものがあるの!」
「ああ。じゃあ終わったらな。」
それでも去ろうとはせず、オレの向かいに座っている。

「いつもすみません。
 この娘、先生のファンなもので。」
「いえいえ。光栄ですよ。」
にっこりと営業用スマイルを浮かべた。
うん。お客さんのお嬢さんだ。
嫌われるよりは好かれた方がいいだろ?

「ホントに!?嬉しい?」
嬉しかねぇよ!
特に今はな!
ああもう、男の肩が強張ってるのが見えるよ。
仕方がない。

「気持ちは嬉しいよ。
 でもオレには精神に決めた人がいるから。」
オレの言葉に男の肩から力が抜ける。
あからさまに安堵するな!
自分の連れに集中しろよ!

「えーーー!
 ホントにぃ!?
 先生恋人いるのぉ!?」
そんなに驚くことか?

「ああ、いるよ。一生大切にしたいと思う恋人がいるんだ。
 残念だけど、デートは他の男としてくれな?」
ほら。これでいいんだろ?
いい加減女性の話を聞いてやれ。

「あらあら残念だったわね。さ、先生はお仕事があるから下がっていなさい。」
「はぁい。先生、後でね。」
「はいはい。」

それでも帳面の確認と通帳の写しをしている間に、お嬢さんがなにやら抱えて戻ってきた。
今度は黙って座っているので、オレも声を掛けずに仕事に集中する。
お客さんは接客で席を立って行った。

そろそろ資料の整理も付いた頃に、お嬢さんがこそっと話しかけてくる。
「あのね。あっちにお客さんいるでしょ?あたしの後ろの。」
男のことだ。
オレもこそっと
「君の真後ろの男女?」
男のテーブルまでは聞こえない小さな声で聞く。

「そう。結構修羅場なんだよ。」
「シュラバ?」
「女の人がね。結婚を迫ってるみたい。でも男の人はそんなつもりじゃなかったとか言ってんの。酷いよね。」
うん。客観的に見たら酷いわ。それ。

「お互い遊びって割り切って始めたとかじゃないのか?」
オレも結構酷いこと言ってんな。全国の女性の方、ごめんなさい。
しかしこれであの女性がこの前の浮気相手だと解った。
ふーん。
アレを抱いたって訳か。
女性を『アレ』呼ばわりするのも我ながらどうかと思うが。

「それもアリかも知んないけどさ。もっと大人の付き合いが、とか言ってたし。
 それってマジになった方が負けってヤツ?」
さて。それはどうだろう。
だいたいオレはそんな不誠実な付き合いはしたことがないから解らない。

「最初にどう始めたかによるような気がする。よく解らないけど。」
正直に答えた。
「そうかもね。あの人カッコイイから逃がしたくないって気持ちも解るけど。」
うんうん。いい男だろ?
君は仲々男の趣味がいいな。

「そうだな。いい男だよな。美人だし。」
お嬢さんはちょっと驚いた顔をしてオレを見ている。
「ん?どうした?」
「やっぱり先生は男の人が好きなの?」
ガタ!
オレの肘がテーブルから落ちた。

「な…なんで!?」
おっと思わず声がデカくなっちった。
男も向かいの女性もこっちを見ている。
オレは思わずお嬢さんに隠れるようにまた頭を下げた。

「なんでそんなことを?」
また小さな声で聞く。
「だってこれに書いてあったもん。先生そっくりだよ?」
お嬢さんが抱えていたモノをテーブルに広げた。

「うっ!」
そこには『実録 公務員シリーズ R18』の文字が。
表紙はやたらと液体にまみれた男を、もう一人の男が膝に抱いている図で。
(ちなみに副題は『鎖を喰いちぎれ…!』だ。どんだけ歯が丈夫なんだよ。)

「…これ、君の?」
聞くと同時にお客さんの
「何してるの!」
咎める声が聞こえた。
「すみません、先生。この娘ったら!」
「だってお母さん、いつも楽しそうに読んでるじゃない!」
「…これ、お嬢さんのではなく…?」
「す…すみません。…私の趣味です…。」
消え入りそうな声で躰まで縮めている。
「あ、いえ。趣味は人それぞれですよね。は…ははは…。」
オレ、どこまで広まってるのかマジで知りたくなってきた!

ガチャ!
カップがソーサーに跳ねる音が聞こえた。
「どうして?あたしを選んだから誘ったんじゃなかったの?
 ねえ!」
お、シュラバが盛り上がっているようだ。
怒るのも解るよ。
そいつ半分以上アナタの言うこと聞いてないもんね。今。

「でさー。先生の恋人ってやっぱりこういう人?」
君、あの声を聞いてもマイペースを貫くな。
仲々大物だ。

「ああ。そうだ。そういう人だよ。」
とお嬢さんに答え、お客さんに
「他の方には内密にして戴きたいんですが。」
とお願いする。

「は?何をですか?」
「オレがこれからすることです。
 あ、書類は戴きましたのでこのまま失礼します。
 今日は有り難うございました。」
頭を下げる。

解らないままにお客さんも
「ああ。有り難うございました。
 えと、とにかく誰にも言いません。
 それで宜しいですか?」
「はい。お願いします。
 では、今日はこれで。」
もう一度頭を下げた。
「あ、はい。失礼致します。」

「先生、またね。」
「ああ。
 あ、ちょっと君は向こうに行っててくれないかな?
 見て欲しくないんだ。」
ぽん、とお嬢さんの頭を軽く叩く。
「えー?」
少しぐずったがお客さんが言い聞かせて自宅部分へと連れて行ってくれた。

オレは席を離れ男の隣に立った。
カウンターに戻ったお客さんがどうもワクワクとこちらを見ているような気がするが、まあいいだろう。
あの人も腐女子なんだから。

「ナニしてんだよ?」
男の肩をぽん、と叩く。
「センセイ…。」
男がオレを見上げるのと
「あなたは?」
訝しげな顔で女性がオレを見上げるのとは同時だった。

「ん?こいつの男。
 つか、こいつはオレのモンなんだけど、アナタは?」
不敵ながらも極上の笑顔で答える。
「な…!冗談でしょ!?」
女性は男に詰め寄った。
「本当だ。」
男が座ったままオレの腰に手を廻してくる。

「で、ナニしてんだよ?」
男のアゴに指を掛けてもう一度聞く。
男が答える前に
「女に走りたくなったか?
 オレはそれでもいいぜ?」
指を離して一歩男から離れた。
男の腕が力無く落ちる。
「別れるってんならこのままだ。
 オレを選ぶんならそっちからオレに縋ってキスしてこい。」
もう一歩下がって、下げた両腕を少し広げた。

迷うことなく男は立ち上がり、オレの腰とうなじに手を廻してキスしてきた。
オレも広げた腕を男の背中に廻す。
「ロイ!本気なの?」
男が唇を離し、女性を振り返る。
「ああ。本気だ。私が愛しているのはこの人だけだ。」
オレの腰に手を廻したまま答える。
オレは黙っていた。

「そんな訳には行かないでしょう?
 あなただって、ゆくゆくは国銀の…」
「興味がないな。
 そんな話にも。
 君自身にも。
 こんなに頭も躰もつまらない女だとは思わなかった。」
女の言葉を遮って、気怠そうでいながら力強い声で言う。

国銀?
それにしても女性に対してなんて言葉だ。
「…失礼するわ!」
怒りで顔を紅潮させ、女性は去っていった。
うん。伝票を置いていく辺り、仲々しっかり者のようだ。

ナニも言わず女を見送っている男の頬を平手で叩いた。
軽くだけど。
「センセイ?」
男は頬を抑えて驚いた顔でオレを見る。
「浮気の尻ぬぐいなんかオレにさせるな。
 それと女性に対してあんなことを言うモンじゃない。」
「…すまない。」
「オレに言うことじゃないだろ?」
まあ、あの女性に言う機会ももうないだろうが。

「…。」
黙って俯いてしまった男にもう何も言わず、オレはテーブルの伝票を見て代金をその場に置いた。
カウンターを振り返ると、お客さんが心底嬉しそうな表情で口に人差し指を立てている。
オレも同じように人差し指を立てると軽く会釈をした。
「さ、帰るぞ。」
男を促して店を出た。


男は俯きがちに黙って歩いている。
オレは隣を歩きながらさっきの女性の言葉を考えていた。
『ゆくゆくは国銀の…』
国銀ってアメストリス国有銀行だよな?
こいつと国銀がどういう関係なんだ?
国税庁まで出世した後は国銀に出向でもすると言うのか?
他の地域に転勤も無しにセントラル税務署長でい続けているこの男が、今更国税庁にも国銀にも行く訳がないと思うんだが。
ま、どっちもオレの事務所から遠いからだってだけだけどな。
でもそういうヤツだよな。
出世よりもオレの近くにいることを間違いなく選ぶだろう。

駐車場にアルの車はなかった。
もう帰ったようだ。
事務所のドアを開け、部屋のライトを灯す。
「ふー。」

しかしあのお客さんまでもが腐女子だったとは。
『実録 公務員』シリーズ、人気だなぁ。
ホークアイさんって、給料より同人誌の売り上げの方が多いんじゃないのか?
ちゃんと確定申告してんのかな。
それともアレは事業規模にあたらないから申告の必要がないのかな。

お客さんから預かった書類を机の未処理箱へ入れる。
計算や仕訳は明日でいいだろう。
明日の仕事の段取りをぼんやり考えていた。

「まだ…怒っているのか?」
聞こえた声の意味が解らなかった。
別にオレは最初から怒ってなんかいない。
「いや。怒ってない。」
振り返ると男は不安そうな顔で上目遣いにオレを見ている。

うっっ!
かっ…かわいい!!
思わず下半身にキそうになり、瞳を逸らす。
「怒っているんだろう?」
おい!大佐ぁ!
それワザとか!?
なんかかわいさがショチョウっぽい。

「怒ってないって。ホントに何とも思ってねぇよ。」
「だって口を聞いてくれないし、瞳を合わせてもくれないじゃないか。」
詰め寄ってくるな!
セリフもかわいいぞ!
自分(の下半身)を落ち着かせようと大きく息を吐いた。

「…それとも呆れているのか?そんな溜め息をついて。」
オレの腕を掴み、覗き込んでくる瞳には少し涙が溜まっていた。
『職場でって燃えるよね。』
ああ、悪魔の囁きが聞こえた。
この場合の悪魔とは間違いなくアルを差すんだが。

「怒ってないって何回言ったら解るんだ?
 話さなかったのは考え事をしていたからだ。
 浮気の件は、この前にもうカタがついたろ?」
宥めるように言葉を掛ける。

「何を考えていたんだ?もう私に愛想を尽かしたのか?」
ぽろ、と頬に涙が落ちた。
あ。も、限界。
オレは男の後頭部に手を廻すと引き寄せてキスをした。

キスだけでとりあえず落ち着くかな。オレ。
幽かな期待が有ったんだが逆効果だったようだ。
力が抜けて、半ばオレに縋るようになった男の唇の端から飲み込みきれなかった唾液が垂れていた。
それを舌で舐め取り顔を覗いた…のが更なる失敗だった。
耳朶と目尻に朱が差して、少し伏せた目蓋の下には欲情に濡れた瞳が見える。
その陶然とした表情とうっすらと開いた唇から覗く紅い舌。

ダメだ。
男を抱き寄せ、今度こそ溜め息をついて
「ここで抱いてもいいか?」
耳元に囁く。
ふる、と躰を震わせて男が頷く。

男の上半身を机の上に倒す。
ネクタイを外しワイシャツのボタンを外しながら耳殻に舌を匍わせ、耳朶に歯を立てる。
「ん…っ。」
いつものように男が息を乱した。
そのまま首筋を舐め時折吸い上げながら胸元まで降りる。
男の脚を広げその間に躰を入れ、両の胸の先を舌と指で弄った。

「ん…ふ…」
抑え切れずに漏れる声が更にオレを煽る。
やがて紅く熟れて堅く立ち上がってもなお吸い上げ、甘咬みし濡れた声をあげさせ続けた。
男の声が嗄れかかる頃、ひくひくと揺れる度に浮き上がる腹筋の瘤に舌を匍わせベルトを外しファスナーを降ろした。
臍に舌をねじ込みながらズボンと下着を膝まで降ろし男のモノを握る。

「…ぁ…っ!」
無意識に捩る白い躰が軟体動物を思わせる。
既に立ち上がっていたそれを指で扱きながら舌で裏筋を舐め上げ、先に舌を捻り込むように差し込んだ。
「は…ぁっ!…ん…っ!」
くびれた部分を舌でぐるりと一周し、先を口中に咥え込む。
びくびくと揺れる躰が素直でかわいい。
吸い上げながら唇に力を入れて扱くように根元から先まで上下すると一際甘く高い声があがる。

なめらかな粘膜で覆われた男のモノはオレの唇にも気持ちがいい。
こんなに固いのに表面はぬめるようでなんの抵抗も持たない。
咥えきれない既にぐしょぐしょに濡れた根元を指で扱き、口に咥えた棹に舌を絡めながら更に激しく上下する。

「ぁ…っ!も…エドワード…。」
限界を知らせる声があがる。
「ぁ…ぁ…!や…もう…!」
ぐち、と強めに指で扱くと同時に強く吸い上げたまま根元から先まで唇を滑らせた。
「あ…!…ぁ…く…っ!」
びくびくと最後の痙攣をおこしながらオレの口中に精が放たれる。
今日はそれを飲み込まず、まだひくつく男の躰を反転させ机にうつ伏せにさせた。

…履いたままだと汚すかも知れない。
オレは無言のまま男のズボンと下着を全て脱がせた。
脚を開かせ、最奥を舌で突く。
「ひゃ…っ!」
腰が逃げようとするが机に当たるだけだ。前には逃げられない。

襞の一枚一枚を確かめるように舌先をでゆるゆると舐めては少し差し込み、また襞を舐める。
「…そんなこ…しなくていいっ!」
男の声を無視し、震える双丘を両手で掴み両の親指に力を入れて強く割り開く。
「や…っ!エド…!」
上半身と両足の角度が付いているせいか、いつもよりそこは開きやすかった。

舌を少しづつ深く差し入れる。
「はっ!…んっ!ん…っ!」
口に含んだままの男の精を少しずつ中へ注ぎ入れていく。
しかし舌の柔らかさでは限界がある。
オレは自分の口中に人差し指と中指を入れて精を絡ませ、男の後孔に差し入れた。

「ぁ…ぐ…っ!」
第一関節までとはいえ、いきなり2本の指を入れられた男の躰がひくりと強張った。
宥めるように舌で襞を舐めては突く。
そのうちに少し後孔が解れてきた。
2本の指で孔を開き、その間に舌を差し入れて中に精を注ぐ。
「ん…ん…っ。」
全て注ぎ込んだ後、指を根元まで一気に差し込んだ。

「ひ…っ!…つ…痛…!」
強張りかける躰には構わず、中を掻き混ぜるように指を動かす。
「や…エド…痛…やめ…」
「すぐ良くなる。少し我慢してな?」
ようやく声が掛けられた。
ホントは心配だった。
オレの顔が見えないままだったから。

やはり緊張していたんだろう。
声を掛けた瞬間に躰から力が抜け、指が容易に動くようになった。
「ごめんな。声を聞かせられなくて。
 もう大丈夫だからな?」
「うん…。…ぁっ!そこ…!」
宥めるように言うと、途端に安堵して甘えてくる。
「ああ。ここがイイトコロなんだよな?」
あまりにもそれがいじらしくて、解っていながらワザと訊ねた。

与えられる刺激に素直にひくつく躰がかわいくて愛おしい。
快感に震え、軽い痙攣をおこす躰にもう一本指を増やす。
全部の指をバラバラな方向に動かして痛まないように解していった。

「あ…も…欲し…。エド…。」
オレももうはち切れそうになっている。
「ああ。挿れるぞ?ロイ。オレを受け容れられるな?」
「ん…。」

挿れ易いように双丘を手で広げ、熱を押し当てる。
「は…エドワード…」
「ああ。オレだ。あんたを抱いているのはオレだ。」
少しずつ、それはこの状態のオレにとっては結構な忍耐力を要したが、それでもゆっくりと差し挿れていった。

また指を噛むかも知れない。
そう思って見やると男の左手は机の上に置かれ、握りしめられて震えている。
右手は躰の下にあるようで、オレからは見えない。
縋るところもないこの状況ではまた爪で怪我をされるかも知れない。
オレは左手の指を開かせ、指を男の指に絡ませて握り込んだ。
男の瞳からは痛みからなのか生理的なものなのか涙が流れている。

ナカに馴染んだかと思われる頃
「動くぞ?いいか?」
声を掛け、頷くのを待ってから律動を開始する。
「ぃ…っ!ん…ぅっ!」
動き始めは苦痛しかないのだろう。
横向きの顔しか見えないが、眉が強く顰められいる。
顔も躰も蒼白だ。
少しでも早く感じさせたい。
男の感じるところを重点的に突き上げていった。

ふと顔を見ると、男は涙を零れさせながら重ねた手に顔を寄せていく。
「?」
何をするのかと思ったら、オレの親指に舌を匍わせ始めた。
紅い舌がなまめかしくオレの親指を舐っている。
その視覚からの刺激でオレの体温は上がった。

そして男はオレの指を咥えた。
ちゅく、と音を立てオレの指が男の口腔に含まれていく。
その暖かい湿った粘膜に包まれていく感覚はオレのモノが今感じている感覚と酷似していて。
「ぅぁっ!」
オレは思わず声をあげてしまった。

咥えたオレの指に、口内で舌を絡ませている。
同時に男の中の無数の粘膜の突起がオレを包み込んで蠢いている。
「ぁぁ…。」
こんな快感は今まで知らなかった。
たまらずオレは突き上げる。
最奥まで、もっと奥まで。
男の感じるところを突き上げながら。

「ん…ぅ!ぁ…!」
激しい突き上げに男が唇を開いた。
それでも舌はオレの指を舐り続けている。
その縋る様な仕種にも煽られてオレはもう限界だった。

男の腰を掴み、腰を強く叩き付ける。
肉と肉のぶつかる音と、男の後孔からあがるぐちゅぐちゅと粘着質な音が室内に響く。
「ぁ…ぁ!エド…エドワード!…もう…ぁっ…あ!」
「ああ…ロイ…ロイ…オレも…も…!」
男が果て、腔中が痙攣する刺激にオレも果てそうになり、慌てて引き抜く。
男の腿に先を押し当て、飛び散るのを防いだのは無意識のことだ。


男の放ったモノは床に散っていた。
ぐったりとまだ上半身を机に預けている男の横顔に一つキスを落とし、オレはそれを拭き取った。
オレの精は男の腿を汚し、膝まで垂れていた。
その情景は酷く扇情的で、まだ一夜に一度しか情を交わせないと解っていながらもオレは躰の奥がまた熱くなった。
無理をさせてはいけない。
腿をティッシュで簡易に清めながらもまたオレのモノは立ち上がり掛けていたが。

「さ、そろそろ帰ろうぜ?」
下着とスボンを履かせ、声を掛けると
「ん…。」
気怠げに男が躰をおこす。

「エド…もう怒っていないか?」
オレがとうに忘れていた話題を持ち出してきた。
「ハナっから怒ってなんかいないって言ってるだろ?
 ナニをそんなに気にしてるんだ?」
ワイシャツのボタンを留め、ネクタイを結んでやりながら聞く。
「エドワードが怒っていたから…捨てられるんじゃないかと思った…。」
俯きながらぽそりと呟かれた言葉にオレは一層煽られてしまった。

深呼吸をそっと一つしてから聞いてみた。
「なあ。今日、も一回できるか?
 あんたの躰、大丈夫か?」
オレが望めば無理をするとは解っていたんだが。
「ああ。私ももっと君が欲しい。
 エドワード…もっと抱いてくれないか?」
妖艶に微笑まれてアッサリオレは理性を手放した。
家に帰って男を押し倒してコトが終わってからだ。
夕メシも食ってないことに気付いたのは。

そして、男が都合の悪そうなことをオレの欲情に紛らわせたと気付いたのも。





この話の喫茶店は実在します。
今は客席の配置換えがあり、壁際の客席から背中が見えなくなりましたが。
湯島天神近くにある、ランチの美味しいお店です。


Act.33

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