F.A.SS -
「鋼の錬金術師」の二次創作
【基本のエドロイSS】 -
原作をベースにした、エドロイSSです。
時系列順に並んでいます。
(下に行くほど後の出来事になります。)
誰がために - (まだロイの片想い)08.06.25up
- (両想いでもお互い気付かない)08.6.26up
水の中の月 - (告白)08.6.29up
- 08.6.30up
- (初めての触れ合い。大佐が咥えるのみ)08.7.1up
- (初体験)08.7.11up
蹟(しるし) - (大佐から初めてのキスマーク) 08.7.16up
シチュー - (大佐が熱を出さなくなったあたり)08.7.16up
- (大佐が壊れてます。ちょっとギャグ)08.7.22up
フソク - (豆がいないと闇がぶり返す大佐)08.7.22up
摂取 - (「フソク」の続き。相変わらず闇に囚われている大佐と帰ってきた豆)
08.7.22up
Turn R
Turn E
幕間 - (ごめんなさいなギャグ)
08.8.8up
- (ヤってるときのエドVer. 「虚」と対になってます。)
08.8.8up
- (ヤってるときのロイVer. 「彩」と対になってます。)
08.8.8up
- (「虚」の続き。どーしようもなくグダグダなロイ)
08.8.8up
- (兄さんと酔ってご機嫌の大佐。未然ジェラシー)08.10.25up
- (鬼畜い兄さん♪後、ヘタレ)08.10.25up
【遊 シリーズ】 -
パラレル。税務署長のロイと税理士のエド。

このSSは途中からRPG方式で、「遊」(ロイエドVer.)と「遊 脇道」(エドロイVer.)に枝分かれします。
但し、「遊 脇道」は「遊」本編と「遊 番外編」数本を包括した入れ籠構造になっておりますので、
「遊」→「遊 番外編」→「遊 脇道」の順に読まれることをお奨めします。
その順番にupして行きます。

「遊」vol.1〜vol.9 - 「遊」「遊 脇道」とも枝分かれするまで共通です。
「遊」vol.1 - 08.11.12up
「遊」vol.2 - 08.11.12up
「遊」vol.3 - 08.11.13up
「遊」vol.4 - 08.11.13up
「遊」vol.5 - 08.11.13up
「遊」vol.6 - 08.11.16up
「遊」vol.7 - 08.11.16up
「遊」vol.8 - 08.11.16up
「遊」vol.9 - 08.11.16up
「遊」 Vol.10以降(ロイエドVer.) -
ロイエドがお嫌いな方も、これはこの後のエドロイver.がこの「遊」のロイエドバージョンを含んだものですので、お読み戴ければ幸いと存じます。

「遊」vol.10 - 08.11.19up
「遊」vol.11 - 08.11.19up
「遊」vol.12 - 08.11.19up
「遊」vol.13 - 08.11.19up
「遊」vol.14 - 08.12.7up
「遊」vol.15 - 08.12.7up
「遊」vol.16 - 08.12.7up
「遊」vol.17 - 08.12.7up
「遊」vol.18 - 08.12.7up
「遊」vol.19 - 08.12.7up
「遊」vol.20 - 08.12.7up
「遊」vol.21 - 08.12.12up
「遊」vol.22 - 08.12.12up
「遊」vol.23 - 08.12.12up
「遊」vol.24 - 08.12.12up
「遊」vol.25 - 08.12.12up
「遊」vol.26 - 08.12.12up
「遊」vol.27 - 08.12.12up
「遊」vol.28 - 08.12.12up
「遊」vol.29 - 08.12.12up
「遊」vol.30 - 08.12.12up
「遊」vol.31 - 08.12.16up
「遊」vol.32 - 08.12.16up
「遊」vol.33 - 08.12.16up
「遊」vol.34 - 08.12.16up
「遊」vol.35 - 08.12.17up
「遊」vol.36 - 08.12.17up
「遊」vol.37 - 08.12.17up
「遊」vol.38 (これで完結です) - 08.12.17up
「幻」 (「遊」 番外編)(エドロイ) - 08.12.17up - (旧テレビアニメのラストから映画シャンバラのその後。ロイVer.)
「惑」 (「遊」 番外編)(エドロイ) - 08.12.17up - (旧テレビアニメのラストから映画シャンバラのその後。エドVer.)
「遊 脇道」(エドロイVer.) - 「遊」Vol.10以降
こちらはエドロイバージョンのうえ、ロイが精神的に壊れてしまっています。
しかも暗いです。
弱いロイが厭だという方はお読みならないで下さい。
「遊 脇道」Act.1 - 08.12.17up
「遊 脇道」Act.2 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.3 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.4 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.5 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.6 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.7 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.8 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.9 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.10 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.11 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.12 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.13 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.14 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.15 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.16 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.17 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.18 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.19 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.20 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.21 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.22 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.23 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.24 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.25 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.26 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.27 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.28 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.29 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.30 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.31 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.32 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.33 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.34 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.35 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.36 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.37 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.38(とりあえず完結ですが、「澱」へ続きます) - 08.12.26up
「澱」 (「遊 脇道」完結話) - 08.12.26up - (「脇道」のロイVer. これで「脇道」の本編は終わりになります)
「寥」 (「遊 脇道」 番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (「幻」の割愛部分)
「仕」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (駅前相談するセンセイ)
「誤」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (ある日税務調査が…)
「加」 (「遊」番外編 エドロイでもどっちでも) - 09.1.7up - (本編に入れ忘れた生協の小ネタ)
「罪」 (「遊 脇道」番外編) - 09.1.7up - (そして今2人は)
「問」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (そして今2人はその2)
「策」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 16.12.29up - (あの夜の男は)
【その他 ロイ受】
「戯」 (ブラロイ) - 09.1.7up - (ロイにホムンクルスと知られ、別れを告げるブラッドレイ)
「蓮」 (キンロイ) - 09.1.7up - (イシュヴァールにて。意外にほのぼのかと…。)
「痴」 (エドロイ)(単発) - 09.1.7up - (淫乱ロイの純情)
「羞」 (エドロイ前提ハボロイ)(「痴」シリーズ?) - 09.1.7up - (「痴」の続編。エドを愛しているロイだが、ハボに…。いや、ハボは被害者なのですが。)
- 上下につながりはありません
「紅」 (エドロイ) - 09.1.7up - (久しぶりに司令部に来た兄さん)
【単発 ロイエド】 - (焦れたロイにレイプされるエド。18禁のレイプものですんで、ご注意下さい)
「赦」 Act.1 - 09.1.7up
「赦」 Act.2 - 09.1.7up
【単発 ハボロイ】
「憂」 - 14.10.16.up - (ロイとハボックの阿呆らしいすれ違い)
「今更」 - 09.1.7up - (自分の想いに気付くロイ)
「蜜」 - 09.1.7up - (恋人になった後。エロシーンばっか)
「背」 - 09.1.7up - (ハボの背中に惹かれるロイ)
【「錯」シリーズ】 - ハボロイオンリーです。
イシュヴァールでの経験がロイに与えたものは…。
- 今はなき某数字SNSで、2007年9月から書いていたものです。
「錯」 Act.1 - 09.1.7up
「錯」 Act.2 - 09.1.7up
「錯」 Act.3 - 09.1.11up
「錯」 Act.4 - 09.1.11up
「錯」 Act.5 - 09.1.12up
「錯」 Act.6 - 09.1.16up
「錯」 Act.7 - 09.1.16up
「錯」 Act.8 - 09.1.17up
「錯」 Act.9 - 09.1.17up
「錯」 Act.10 - 09.1.18up
「錯」 Act.11 - 09.1.20up
「錯」 Act.12 - 09.1.21up
「錯」 Act.13 - 09.1.24up
「錯」 Act.14 - 09.1.27up
「錯」 Act.15 - 09.1.29up
「錯」 Act.16 - 09.2.1up
「錯」 Act.17 - 09.2.6up
「錯」 Act.18 - 09.2.12up
「錯」 Act.19 - 09.2.15up
「錯」 Act.20 - 09.2.20up
「錯」 Act.21 - 09.2.26up
「錯」 Act.22 - 09.3.9up
「錯」 Act.23 - 09.3.13up
「錯」 Act.24 - 09.3.20up
「錯」 Act.25 - 09.3.26up
「錯」 Act.26 - 09.4.7up
「錯」 Act.27 - 09.4.21up
「錯」 Act.28 - 09.5.6up
「錯」 Act.29 - 13.5.21up
「錯」 Act.30 - 13.5.22up
「錯」 Act.31 - 13.5.23up
「錯」 Act.32 - 13.5.26up
「錯」 Act.33 - 13.5.31up
「錯」 Act.34 - 13.6.2up
「錯」 Act.35 - 13.6.17up
「錯」 Act.36 - 13.6.19up
「錯」 Act.37 - 13.6.26up
「錯」 Act.38 - 13.7.11up
「錯」 Act.39 - 13.7.14up
「錯」 Act.40 - 13.7.19up
「錯」 Act.41 - 13.7.27up
「錯」 Act.42 - 13.8.13up
「錯」 Act.43 - 13.11.22up
「錯」 Act.44 (完結) - 13.11.26up
「聴」 (『錯』番外編) - 最終話後、ツケを支払に行くロイ。
Vol.1 - 17.1.7up
Vol.2 - 17.1.7up
【瑠】シリーズ - 【注意書きです】
これはいつものロイエドロイと、また原作とも異なるパラレルのロイエドロイSSです。
(すみません!最初間違えて『ロイエド』と書いてましたが、ロイエドロイです。)
原作またはアニメ設定以外受け容れないと言う方はお読みにならないで下さい。
最初は「人魚」のタイトルでしたが、後に「瑠」にしました。
「瑠」 Act.1 - 16.12.30up
「瑠」 Act.2 - 17.1.1up
「瑠」 Act.3 - 17.1.3up
「瑠」 Act.4 - 17.1.11up
Gift - 頂き物など
取調室にて -
ヒューズ×ロイ from 志乃さま
give me more -
ヒューズ×ロイ from 志乃さま
> 【「錯」シリーズ】 > 「錯」 Act.10
「錯」 Act.10
09.1.18up
最近はテロや大きな事件があまりなく、静かな日が続いていた。
オレとしちゃ有り難い(いや、社会的にも勿論いいことだ)が、ロイはこの隙に書類を片付けろと中尉に厳命されることとなり、オレ達の勤務シフトは結構ずれることが多くなった。

それでも一緒に過ごせる夜は、ロイの躰を貪った。
抱いている最中にロイが感じてエレクトすることはなかったけど。
それはまだ慣れないからだろう。
(『受け身の男が感じるには回数を重ねて慣れて行くしか方法はない。』
 という点ではマニュアルが正しかったようだ。)

「ロイ、もっと脚を開いて?」
オレの精液を受けとめた後の、滑(ぬめ)る後孔に指を匍わせながら囁いた。
満足するまで抱いた後にロイをフェラでイかせるというのが、既にオレ達の手順になっていた。
その方がオレの精液の手助けもあって中で指が動かし易く、ロイのイイトコロを刺激しやすかったから。

「私はいい…。」
いつもロイは遠慮をする。
「オレばっかりイく訳にいかんでしょ?
 あんたも感じて下さいよ。」
「お前が感じたのならそれでいいから…。」
フェラさせるのが申し訳ないと思うんだろうか?
そりゃ、オレだって初めて咥えるときはちょっと覚悟を決めたけどな。

「オレに咥えられんの、イヤ?」
聞くといつも少し困った顔をする。
「…お前が疲れるだろう?」
確かにロイは仲々イかない。
オレのやり慣れないフェラが拙いってこともあるんだろうが。
「オレがロイをイかせたいんスよ?」

オレが望めばロイがなんでも赦してくれることは、もう解っている。
言い成りと言ってもいいくらいに。
勿論それを逆手に取るようなことはしない。
初めてン時のことを反省して、オレはもうロイを虐めまいと心に決めていた。
大切な可愛いこの人を、出来るだけ優しく愛するんだと。

「ね?オレが望んでもイヤ?」
「厭な訳じゃ…ない…」
「じゃ、いいでしょ?
 ねえ、言って?」
殊更低い声でロイの耳元に囁くと
「ん…。ジャン。『…イ…かせ…て?』」
真っ紅になって、震える掠れ声で応えてくれる。

コレはオレがお願いした約束。
イかせる前(ま、フェラの前だな)にこの言葉を言ってくれること。
ロイが恥ずかしがるのを知ってはいるけど、それも可愛くて。
これも…虐めてることになるんだろうか。
それでも初めてこの言葉を(オレがお願いして)ねだらせた時に、ロイがそれまでよりも感じていたから。
それからはこれがオレ達の間の取り決めになっていたんだ。

「よく言えました。ご褒美です。」
片脚を肩に担ぎ、ロイのモノを咥えながら後孔に指を沈ませる。
「は…。ジャン…」
ふる、と躰を震わせて名前を呼んでくれるのが嬉しい。

オレとしても、感じさせようと色々努力はしてみていた。
舌を絡ませたり、裏筋を舐め上げたり。
手指で扱きながら、鈴口に舌先を突っつくように差し込んだり。
そういや、強く吸われると感じたよな、なんて思い出してそれをやってみたり。

自分が過去にフェラでイった所要時間なんて正確に覚えちゃいないんだが、それにしてもロイはイきにくい方だと思う。
だから毎回遠慮するのかも知れないな。
イかせるまでにかなり顎と舌が疲れるのは事実だ。
だからといってイヤな訳じゃ、勿論ない。
ロイを感じさせられるのはやはり嬉しいから。

「っ!」
やべっ!
口いっぱいに含んだまま絡めようとした舌が攣った拍子に、かなり強く歯を立ててしまった。
「ひ…ぁっ!…あ!」
その瞬間、びくびくと躰を痙攣させてロイが達した。
「へ?」
オレは飲み込むことも忘れて、口から精液を垂らしながらロイの見上げた。
「ぁ…ち…違…。歯が…急に…お…驚いて…」
慌てた顔で、オロオロと言葉を紡いでいる。
えーと?
もしかして。
「凄く感じた…とか?」
「いや!そ…んな…こと…。」
両手で口を覆ってしまった。

感じたらしい。
歯で強く噛まれて。
オレはようやく解った気がする。
この人が女性にモテていた理由が。
そうか。
生半な刺激を与えられた位じゃイかないからこそ、充分に時間を掛けて女を感じさせられたってことだよな?
アレの鈍さが武器だったんだ。
オレの慣れないフェラじゃ、仲々イかなかった訳だ。
そんでもって今までそれを言わなかったのは、オレに気を使ってくれてたんだろう。
何しろ、情けないことにオレはこの人の躰に感じすぎて(いや、決してオレは早い方じゃない!そうじゃない!…と思いたいぞ!?)たし、この人にもしフェラなんかされたらあっと言う間に果ててただろうから。

「違うんだ…。ジャン…。」
黙ってしまったオレの頬にそっと手を添えて、気遣わしげに言ってくる。
オレ、ホントにこの人に大事に想われてんだなー。
くす、と笑うと驚いたようだ。
躰がびくっと揺れるのが見えた。
「あんたが感じてくれたんなら、嬉しいんスよ?」
安心させるように笑いかけ、躰をずらして抱きしめた。
「ジャン?」

「少し…強くした方が感じるんだって、言ってくれて良かったのに。」
前髪を掻き揚げて、キスを落とす。
「そんなこと…ジャンが…。だって…してくれて…。」
ああ、やっぱり気を使ってくれてたんだな。
「『してくれて』じゃないっしょ?オレが『させて貰って』たんです。」
もう、どうしてこの人はオレのことだけ考えるのかなー。
オレがこの人を幸せにしたいってのに。

「嫌いに…ならない…か?」
は?
「ナニを言ってるんすか?オレがあんたを嫌いになるわけないでしょう?」
うん。この人の思考回路ってやっぱ解んねぇ。
気を使ってたことをオレが不快に感じると思ってるのかな。
別にこの人程じゃなくとも、オレはオレなりに女を感じさせて来たと思ってるし。
気にするこたないのに。
本当に普段の軍での態度からは考えられないほど、細やかな気遣いをしてくれるこの人。

「オレはあんたを、ロイを愛してます。呆れも嫌いにもなりませんよ。」
「本当に?ジャン?」
どうしてそんな心配をするんだろう。
ナニがそんなに不安なんだろう。
「そうですね。じゃあオレだけが触れていいその唇で、オレにキスして?
 そうしたらナニがあってもオレはあんたを愛し続けますよ?」

まるで御伽噺だ。
ロイという姫君の唇はオレだけに赦されたモノ。
オレだけがロイに掛けられる魔法がある。
そんな御伽噺。

「本当だな?」
まだ不安そうに言うのが不思議で、それでも可愛い。
「ええ。この可愛い唇でキスをくれたら。」
「ん。ジャン…。」
ほ、と安心したように息を零して腕を廻して抱きついてくれる。
そしてそっと触れてくる唇を、オレは激しく貪った。

思えばこれが一番幸せな時間だった。

哀しいくらい

切ないくらい

幸せだった。



  ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「くぁ〜。」
その日夜勤に当たっていたハボックは、夕刻あくびをしながら司令部へと向かった。
ロイの夕食を用意してから家(マスタング宅)を出たのは言うまでもない。
当のロイは日勤で、書類が予定通り終われば宵のうちに帰宅できるはずだ。

「はよーっす。」
執務室に隣接している部屋のドアをあけると同時に
「よお!犬っころ。元気かー?」
陽気な声が聞こえた。
「ああ、ヒューズ中佐。いらしてたんですか。」
かつては恋の好敵手だと思っていた上官へ挨拶をした。
「おうよ。ロイがどうしてっかと思ってなー。
 オレって、面倒見がいいだろ?」
それでもロイを任されたのだと思うと、急に親しみを覚えるから現金なモノだ。

「何を言っている。会議のついでに書類を届けただけだろうが。」
つれない言葉を吐いてはいても、やはりロイも親友に逢えるのは嬉しいようだ。
「ロイちゃんの欲しがってた文献も届けてやったろうが。
 そんなこと言うと返して貰うぜ?」
ヒューズが伸ばした手をはたき落としながら
「これはもう貰った。私のものだから返さん。ああ、ハボックちょっと来い。」
ソファから立ち上がり、執務室へとハボックを誘(いざな)う。
「Yes,Sir.」

後を付いて執務室のドアを閉めたハボックに、いきなりロイが抱きついてきた。
「ロ…大佐?」
「今日はヒューズと飲む約束をしているんだ。」
言葉は断定のクセに伺うような口調で。
自分の了承を取ろうとしているのだと、ハボックは笑い出しそうなほど嬉しくなった。

「オレはご存じの通り夜勤ですから、お迎えには行かれませんけど。
 それでもよろしいですか?Sir?」
ちゅ、とキスを落として応える。
「うん。それは構わないのだが、…ヒューズが家に泊まると言うんだ。」
(ああ、そうか。)
「じゃあオレは自分ちに帰りますから。ゆっくり積もる話でもして下さいよ。」
「ん。すまんな。」
「いいえ。オレのことは気にしないで、楽しんで来て下さい。」
もう一度抱き合ってキスをして、恋人達は躰を離した。




「なぁ、ヒューズ。あいつはおかしいんだよ?」
東部での2人の行きつけとなっている店のカウンターで、くすくすと笑って親友が言う。
お前におかしいと言われたら、ヤツの立つ瀬がないだろうよ。
内心思いながらもヒューズはそれを口に出来なかった。


ヒューズが親友の置かれた状況を竟に知ったのはイシュヴァール戦の終結前夜のことだった。
兵の帰還に関する指令を拝命してこいという喜ばしい伝令を言い渡され、烟る雨の中、皮肉にもこの内乱が始まって以来初めて足取りも軽く赴いた上官のテントで、数人の男達に犯されて泣き叫ぶ親友を見た。

引き絞るような悲鳴をあげる彼を前に呆然と立ち尽くしていたヒューズは
「なんだ、お前もか。今日は随分人数が多いな。
 ま、こうやって雨の日も楽しめたんだ。正に『焔の錬金術師』サマ、万々歳だな。」
と傍らでにやにやと笑う男に語りかけられ、これが初めてのことではなく日常に行われていた行為なのだと悟った。

今でもヒューズはこの見目麗しい親友への罪悪感を抱き続けている。
この男が置かれていた状況を悟ってやれなかったことに。
それが原因でこの親友が持ってしまった性癖に。
それを責められたことは一度もないけれど。

『責める』ということを思いつきもしない親友。
自分が知らない間に『そういう』精神構造を組み立ててしまったこの男。
それは哀しいことだと解っていながらも、ヒューズはもう慣れてしまった。
この親友の異常な性癖にも、彼がその不安定な精神を護るために数知れない男達に手酷く犯されて、それを悦ぶことにも。

だからこそ、無責任とは知りながらその髪の色と同様の明るい精神を持つかの犬にこの親友を託したのだ。
こいつなら親友の抱いてしまった闇を払拭してくれるかも知れないと。
それは醜い贖罪。
自分の罪をあの健やかな青年に擦り付ける行為だと解ってはいた。

同時に自分は彼に、心の奥底でこの親友に抱いてしまった欲望を肩代わりして欲しかったのだ。
(本当はあんな風に泣かれて拒絶されようとも、オレがロイを抱きたかったんだ。)
その自分の欲望から瞳を逸らす為にヒューズはグレイシアを愛した。
忘れる為にグレイシアに溺れようとした。
その結果、彼の置かれた状況を知ることが出来なかっのだ。
その時は親友をこんな欲望の対象として貶めたくないという思いも存在していたのだが。
(欺瞞だな。)
自嘲の笑みが浮かぶ。

「でな。…聞いているのか?ヒューズ。」
酔い染めた舌っ足らずな声が耳に届いた。
「ああ。お前さんの犬が変態だって?」
既に自分の心境を隠して語ることなど朝飯前だ。
そんな自分を哀しいと思うほど、もう若くはない。

「変態なんかじゃないぞ。ハボックはなぁ。」
「ああ。お前のかわいい犬っころがどうした?」
(どうしてオレはこの親友を護ってやれなかったんだろう。
 自分の醜悪な欲望から瞳を逸らしたばかりに。)
「うー。だからな。ヤツは私に食事をさせることが一番好きらしいんだ。
 …ヘンだよな?」

ついぞ見たことのない、親友の嬉しそうな顔。
こんな顔をずっと見ていたかった。
自分の欲望と正面から向き合っていたら、それが出来たのだろうか。
ヒューズはあの時から今まで、何度も繰り返した思考をまた辿る。
今更なにを後悔しても詮無いことだと、この聡い男には解っているのだけれど。

「食事をさせんのが好きなんじゃなくて、お前に健康でいて欲しいんだろ?」
どうしてこんなことすらコイツには解らないんだろう。
その理由を本当は知っていてもこの親友の精神が哀しいことに代わりはない。

「健康に…?任務の為か?」
「あのな、少尉はお前が大事で、元気でいて欲しいんだよ。お前が大切なんだ。」
噛んで含めるように言ってみる。
「大切?食事をさせることがか?」
(やはり理解出来ないんだな。)
ヒューズは溢れ出そうになった思いを誤魔化そうと天井を見上げた。
(こいつはとことん、自分を他者に大切にされるってことを知らないから。)
最早それは泣き言に近かった。

(オレや中尉がどれだけこいつを大切に思っても、コイツにとってそれは後付けでしかない。
 オレ達が『あの時』、コイツを護ってやらなかったから。)
「なぁ、ロイ?」
「んー。」
存外に酒に弱い親友は、もうカウンターに懐きそうだ。

「お前はあの坊やのセックスに満足してるのか?」
弾かれたように躰を起こすのが見えた。
そうか。
ダメだったのか。
あの青年がその身の持つ、深い愛情で以てしても。

「わ…私はハボックが好きだ。」
それは解っている。
(それでもお前の躰は違う答えを持ってしまっているんだろう?)
苦々しい思いを噛みしめた。

ヒューズより早くロイの異常な性癖に気付いたのはホークアイ中尉だった。
躰についた不可解な傷の理由や、ふとしたことから知った『所謂そういう輩の集まる店』にロイが偽名で通っていることも。
どう転んでもロイの望む行為が出来ない代わりに、彼から絶対の信用を勝ち得ていた中尉は詰問と説得の上、自分の抱いた疑問が当たっていたことを知ったのだ。
ロイが既に修正のしようもないマゾヒストになってしまっていたということを。

(それからの彼女の行動は素早かった。
 即座に『その店』に通う者全員の素性を調べ上げ、店のオーナーに一見の客すらも逐一調べてから通すこと、『ユーリ』=ロイに対しては特別の注意を払うことを厳命したのだ。
 あの持ち前の凍り付くような恐ろしさを持って。
 そして当然『ユーリ』の相手は、すべて中尉の息が掛かった人間に行わせていた。
 それは全て、ロイの知ることではなかったが。)

その中尉が心配していたことが的中してしまったのだ、とヒューズは知った。
コイツは駄犬とのセックスでは満足していない。
いや、満足しないことは既に解っていた。
あのいかにも健全な青年はきっとコイツの望むようなセックスはしないと。
ただ、コイツが本当に愛されて大切にされることを知れば、自分を痛めつけるようなセックスに意味はないのだと悟ってくれることを願っていたのだ。
自分もホークアイ中尉も。

「あ…あいつは本当にヘンなんだぞ?ヒューズ。
 女を相手にするような抱き方をするんだ。
 …そういうのが好き…なんだそうだ。」
それは人間が愛する人を抱くときの普通の行為なんだよ。
男も女も関係なく。
相手を慈しんで大切に扱うことは。

言わなくても本当はこの親友がそれを知っていることも解っている。
ただ、理解出来ないだけなんだ、と。
あまりに酷い犯され方しかされたことがなかったから。
『それ』が『当たり前』なのだと、自分の躰に刻み込んでしまったから。
そうしなければこのある面ではとても図太いのに、ある面では非常に繊細なこの親友の精神は保たなかったのだから。

「それにな、あいつはその…後始末までしたがるんだ。」
「後始末?」
意味を取りかねてヒューズは聞き返した。
「だから…アレの後の…処理を…な。」
「ああ。中出しした後の始末か?」
言葉を選んでいたロイにさらりと返された言葉。
こいつにはデリカシーが足りない。
こんなんでグレイシアに愛想を尽かされなければいいが、とロイは思わず親友を案じてしまった。

「ああ…。普通は終わればそのまま去っていくのに。
 きっとあいつは遊び終わった玩具を綺麗に整えるタチなんだろうな。」
うっすらと瞳をうるませながら、くすくすと笑う親友が哀しすぎた。
遊び終わった玩具のように打ち捨てられることを『普通』と思うこの親友が。
そんな扱いしかされて来なかったということが。
『愛し合った』後を『ともに過ごす』という経験をしたことがない、そんなことを想像したこともないということが。

「そんなことをされるのも恥ずかしくて…それでも…そうされると…あいつがまだ…私を捨てるつもりが無いと解って…。
 それが私には…とても嬉しかっ…」
震えながら俯いた拍子に、溜まっていた涙が頬を伝って落ちるのが見えた。
嬉しかったのか。
そうか。
それはオレも嬉しいよ、とはとてもじゃないが言えなかった。
そんなことをお前は…と思ってしまうと。

「で?お前さんは『そうじゃない』抱き方をあの犬っころにねだったのか?」
そうしなかっただろうと予測はついたけれど。
とりあえず今の状況を把握しておかなくてはと、ヒューズは思っていた。
それにより、あの忠実な女性とまた連絡を取らなくてはならないから。
(その実、こんな哀しい状況を払拭したいと思っていたのも事実で。)

「そんなことは出来ない…だろう?ハボックが…望んでいない…。」
さりげない仕種をよそおって涙を拭い、顔を上げて反論してくる。
「お前の好きな抱き方を好まないと?」
「そう…だ。ハボックは私を『優しく抱きたい』と言っていた。
 なあ、『優しく』と言うのは、私を女として扱いたいということなのか?
 …私には解らなくてな。」
そんなことすら解らないこの哀しい親友。

「『女として』じゃないんだよ。ロイ。
 優しく抱きたいってのは、性別は関係ないんだ。
 お前はあいつに大切にされてるってだけなんだぜ?」
それが理解できないから。
そんな抱き方じゃ満足できないから。

この壊れてしまった親友と愛すべき犬っころの前途は、いかに聡いこの男にも解らなかった。

「私は…どうすればいいんだろう?
 なあ、ヒューズ?」
そんなこと、オレにだって解らないさ。
それは哀しい独白。

「無理をすんな。オレに言えるのはそれだけだ。
 偽るよりはあの犬っころに素直にねだってみたらどうだ?」
「そんな無責任なことを言うな!
 それであいつに嫌われたらどうするんだ。
 軽蔑…されるかも知れないじゃないか。」
それなりに自分の性癖が異常だとは理解しているようだ。
こりゃ、中尉の教育のタマモノだな。
ヒューズの指摘は正しかった。

「なあ、ロイ?それを怖いと思うことが愛なんだよ。」
「あ…い?ハボックが『アイシテル』と私に言うのと同義か?」
「そうだ。あいつを失いたくないと思う、そのお前さんの気持ちを『愛』って言うんだ。」
「そう…か。これが『愛する』ということか。」
生真面目に頷く横顔がまた哀しくて。

オレはこいつに幸せになってもらいたい。
それをただ他人に任せるのはやはり無責任なことなんだろうか。
オレに出来ないことを、あの犬っころに任せようとするのは。

「失いたくないと思うのは自然なことなんだな?」
どうしてこんなことがコイツには解らないのか。
エリシアに自然の理を教えるよりも難しい、愛しくて哀しいこの親友。
「ああ、そうだ。お前さんのその気持ちは自然で、持って当たり前の感情だ。」
「ハボックを哀しませたくないと思うのもそうだな?」
「ああ。そうだ。」
「私はハボックを…ちゃんと『愛せて』いるんだな?」
「そうだ。お前さんはあの犬っころを『愛して』いるんだよ。
 『普通』の人間と同じでな。」

こうやって、一つ一つ学んで行ってくれればいい。
そうしていつか、幸せになってくれると信じたい。

「うん。解った。私はハボックを失いたくない。」
なにが本当に解ったのか、どうも思考回路が他人と異なるこの親友については若干の不安がつきまとうけれど。
「そうか。まあ、やってみろや。全てはそれからだ。」
「ん。私はハボックが好きだ。ずっと側にいて欲しい。
 それでいいんだよな?」
いっそ、晴れやかとも言える顔で言う親友が眩しくとも不安だ。
しかしそれでも見守るしかない。
「いいんじゃないか?」

ああ、オレってホントに無力。
それがこの日の会談を終えたヒューズの感想であった。









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