F.A.SS -
「鋼の錬金術師」の二次創作
【基本のエドロイSS】 -
原作をベースにした、エドロイSSです。
時系列順に並んでいます。
(下に行くほど後の出来事になります。)
誰がために - (まだロイの片想い)08.06.25up
- (両想いでもお互い気付かない)08.6.26up
水の中の月 - (告白)08.6.29up
- 08.6.30up
- (初めての触れ合い。大佐が咥えるのみ)08.7.1up
- (初体験)08.7.11up
蹟(しるし) - (大佐から初めてのキスマーク) 08.7.16up
シチュー - (大佐が熱を出さなくなったあたり)08.7.16up
- (大佐が壊れてます。ちょっとギャグ)08.7.22up
フソク - (豆がいないと闇がぶり返す大佐)08.7.22up
摂取 - (「フソク」の続き。相変わらず闇に囚われている大佐と帰ってきた豆)
08.7.22up
Turn R
Turn E
幕間 - (ごめんなさいなギャグ)
08.8.8up
- (ヤってるときのエドVer. 「虚」と対になってます。)
08.8.8up
- (ヤってるときのロイVer. 「彩」と対になってます。)
08.8.8up
- (「虚」の続き。どーしようもなくグダグダなロイ)
08.8.8up
- (兄さんと酔ってご機嫌の大佐。未然ジェラシー)08.10.25up
- (鬼畜い兄さん♪後、ヘタレ)08.10.25up
【遊 シリーズ】 -
パラレル。税務署長のロイと税理士のエド。

このSSは途中からRPG方式で、「遊」(ロイエドVer.)と「遊 脇道」(エドロイVer.)に枝分かれします。
但し、「遊 脇道」は「遊」本編と「遊 番外編」数本を包括した入れ籠構造になっておりますので、
「遊」→「遊 番外編」→「遊 脇道」の順に読まれることをお奨めします。
その順番にupして行きます。

「遊」vol.1〜vol.9 - 「遊」「遊 脇道」とも枝分かれするまで共通です。
「遊」vol.1 - 08.11.12up
「遊」vol.2 - 08.11.12up
「遊」vol.3 - 08.11.13up
「遊」vol.4 - 08.11.13up
「遊」vol.5 - 08.11.13up
「遊」vol.6 - 08.11.16up
「遊」vol.7 - 08.11.16up
「遊」vol.8 - 08.11.16up
「遊」vol.9 - 08.11.16up
「遊」 Vol.10以降(ロイエドVer.) -
ロイエドがお嫌いな方も、これはこの後のエドロイver.がこの「遊」のロイエドバージョンを含んだものですので、お読み戴ければ幸いと存じます。

「遊」vol.10 - 08.11.19up
「遊」vol.11 - 08.11.19up
「遊」vol.12 - 08.11.19up
「遊」vol.13 - 08.11.19up
「遊」vol.14 - 08.12.7up
「遊」vol.15 - 08.12.7up
「遊」vol.16 - 08.12.7up
「遊」vol.17 - 08.12.7up
「遊」vol.18 - 08.12.7up
「遊」vol.19 - 08.12.7up
「遊」vol.20 - 08.12.7up
「遊」vol.21 - 08.12.12up
「遊」vol.22 - 08.12.12up
「遊」vol.23 - 08.12.12up
「遊」vol.24 - 08.12.12up
「遊」vol.25 - 08.12.12up
「遊」vol.26 - 08.12.12up
「遊」vol.27 - 08.12.12up
「遊」vol.28 - 08.12.12up
「遊」vol.29 - 08.12.12up
「遊」vol.30 - 08.12.12up
「遊」vol.31 - 08.12.16up
「遊」vol.32 - 08.12.16up
「遊」vol.33 - 08.12.16up
「遊」vol.34 - 08.12.16up
「遊」vol.35 - 08.12.17up
「遊」vol.36 - 08.12.17up
「遊」vol.37 - 08.12.17up
「遊」vol.38 (これで完結です) - 08.12.17up
「幻」 (「遊」 番外編)(エドロイ) - 08.12.17up - (旧テレビアニメのラストから映画シャンバラのその後。ロイVer.)
「惑」 (「遊」 番外編)(エドロイ) - 08.12.17up - (旧テレビアニメのラストから映画シャンバラのその後。エドVer.)
「遊 脇道」(エドロイVer.) - 「遊」Vol.10以降
こちらはエドロイバージョンのうえ、ロイが精神的に壊れてしまっています。
しかも暗いです。
弱いロイが厭だという方はお読みならないで下さい。
「遊 脇道」Act.1 - 08.12.17up
「遊 脇道」Act.2 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.3 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.4 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.5 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.6 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.7 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.8 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.9 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.10 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.11 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.12 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.13 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.14 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.15 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.16 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.17 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.18 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.19 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.20 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.21 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.22 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.23 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.24 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.25 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.26 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.27 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.28 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.29 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.30 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.31 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.32 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.33 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.34 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.35 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.36 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.37 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.38(とりあえず完結ですが、「澱」へ続きます) - 08.12.26up
「澱」 (「遊 脇道」完結話) - 08.12.26up - (「脇道」のロイVer. これで「脇道」の本編は終わりになります)
「寥」 (「遊 脇道」 番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (「幻」の割愛部分)
「仕」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (駅前相談するセンセイ)
「誤」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (ある日税務調査が…)
「加」 (「遊」番外編 エドロイでもどっちでも) - 09.1.7up - (本編に入れ忘れた生協の小ネタ)
「罪」 (「遊 脇道」番外編) - 09.1.7up - (そして今2人は)
「問」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (そして今2人はその2)
「策」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 16.12.29up - (あの夜の男は)
【その他 ロイ受】
「戯」 (ブラロイ) - 09.1.7up - (ロイにホムンクルスと知られ、別れを告げるブラッドレイ)
「蓮」 (キンロイ) - 09.1.7up - (イシュヴァールにて。意外にほのぼのかと…。)
「痴」 (エドロイ)(単発) - 09.1.7up - (淫乱ロイの純情)
「羞」 (エドロイ前提ハボロイ)(「痴」シリーズ?) - 09.1.7up - (「痴」の続編。エドを愛しているロイだが、ハボに…。いや、ハボは被害者なのですが。)
- 上下につながりはありません
「紅」 (エドロイ) - 09.1.7up - (久しぶりに司令部に来た兄さん)
【単発 ロイエド】 - (焦れたロイにレイプされるエド。18禁のレイプものですんで、ご注意下さい)
「赦」 Act.1 - 09.1.7up
「赦」 Act.2 - 09.1.7up
【単発 ハボロイ】
「憂」 - 14.10.16.up - (ロイとハボックの阿呆らしいすれ違い)
「今更」 - 09.1.7up - (自分の想いに気付くロイ)
「蜜」 - 09.1.7up - (恋人になった後。エロシーンばっか)
「背」 - 09.1.7up - (ハボの背中に惹かれるロイ)
【「錯」シリーズ】 - ハボロイオンリーです。
イシュヴァールでの経験がロイに与えたものは…。
- 今はなき某数字SNSで、2007年9月から書いていたものです。
「錯」 Act.1 - 09.1.7up
「錯」 Act.2 - 09.1.7up
「錯」 Act.3 - 09.1.11up
「錯」 Act.4 - 09.1.11up
「錯」 Act.5 - 09.1.12up
「錯」 Act.6 - 09.1.16up
「錯」 Act.7 - 09.1.16up
「錯」 Act.8 - 09.1.17up
「錯」 Act.9 - 09.1.17up
「錯」 Act.10 - 09.1.18up
「錯」 Act.11 - 09.1.20up
「錯」 Act.12 - 09.1.21up
「錯」 Act.13 - 09.1.24up
「錯」 Act.14 - 09.1.27up
「錯」 Act.15 - 09.1.29up
「錯」 Act.16 - 09.2.1up
「錯」 Act.17 - 09.2.6up
「錯」 Act.18 - 09.2.12up
「錯」 Act.19 - 09.2.15up
「錯」 Act.20 - 09.2.20up
「錯」 Act.21 - 09.2.26up
「錯」 Act.22 - 09.3.9up
「錯」 Act.23 - 09.3.13up
「錯」 Act.24 - 09.3.20up
「錯」 Act.25 - 09.3.26up
「錯」 Act.26 - 09.4.7up
「錯」 Act.27 - 09.4.21up
「錯」 Act.28 - 09.5.6up
「錯」 Act.29 - 13.5.21up
「錯」 Act.30 - 13.5.22up
「錯」 Act.31 - 13.5.23up
「錯」 Act.32 - 13.5.26up
「錯」 Act.33 - 13.5.31up
「錯」 Act.34 - 13.6.2up
「錯」 Act.35 - 13.6.17up
「錯」 Act.36 - 13.6.19up
「錯」 Act.37 - 13.6.26up
「錯」 Act.38 - 13.7.11up
「錯」 Act.39 - 13.7.14up
「錯」 Act.40 - 13.7.19up
「錯」 Act.41 - 13.7.27up
「錯」 Act.42 - 13.8.13up
「錯」 Act.43 - 13.11.22up
「錯」 Act.44 (完結) - 13.11.26up
「聴」 (『錯』番外編) - 最終話後、ツケを支払に行くロイ。
Vol.1 - 17.1.7up
Vol.2 - 17.1.7up
【瑠】シリーズ - 【注意書きです】
これはいつものロイエドロイと、また原作とも異なるパラレルのロイエドロイSSです。
(すみません!最初間違えて『ロイエド』と書いてましたが、ロイエドロイです。)
原作またはアニメ設定以外受け容れないと言う方はお読みにならないで下さい。
最初は「人魚」のタイトルでしたが、後に「瑠」にしました。
「瑠」 Act.1 - 16.12.30up
「瑠」 Act.2 - 17.1.1up
「瑠」 Act.3 - 17.1.3up
「瑠」 Act.4 - 17.1.11up
Gift - 頂き物など
取調室にて -
ヒューズ×ロイ from 志乃さま
give me more -
ヒューズ×ロイ from 志乃さま
> 【遊 シリーズ】 > 「遊」 Vol.10以降(ロイエドVer.) > 「遊」vol.13
「遊」vol.13
08.11.19up
オレ達は来年始めの確定申告に向けて、ひたすら帳面を計算して仕訳して入力をする。
この時期の仕事はその繰り返しと残った年末調整だ。
「アル、合計表(『給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表』の略称)はできたか?」
オフコンで年末調整の入力と出力をしているアルに聞く。
「うん。これが最後の一社。兄さん、署名お願い。」
「おっしゃ。」

署名をできるのは税理士だけだから、今のところオレが全ての署名をしなくちゃならない。
出来上がった合計表にオレが署名をしてアルに渡す。
アルは控え用には控印を捺し、オレの署名の後に税理士印を捺す。
流れ作業であっと言う間に終わった。
提出用の合計表に源泉徴収票や支払調書をくっつければ一丁上がりだ。

それを提出税務署別に分けて提出するか、遠いところは郵送する。
「これで年調(年末調整の略。ちなみに源泉徴収票は『源ビラ』もしくは『ビラ』と呼ぶ。)は終わったな。」
年末の一仕事が終わった。
「うん。次は確定申告だね。」
郵送するものを送り先別に封筒に入れる作業もすぐ終わった。


「兄さん、はい。」
いきなりアルが何か差し出してくる。
ん?切手はもう貼ったぞ?
見るとソレは絆創膏だった。
「…。」
2枚。
やっぱそれって…。

「アル…?」
「貼りづらいでしょ?やってあげようか?」
「あの。それは…?」
アルが自分の首と手首を指差した。
「見えてるよ。自慢したいならほっとくけど、どうする?」
「スミマセン。貼ってクダサイ!」
朝のばたばたですっかり忘れていた。
あの痴れ者!許さん!

「随分しっかりついてるねー。」
弟よ!黙って貼ってくれ。
「なんか寂しいな。」
どうした!?
寂しいなんて言わないでくれ!
オレはアルとずっと一緒だぞ!?
「兄さん、大人になっちゃったんだね。」
「やめろーーーー!!!」
清くないとか言うなよ!?な!?頼むよ!

「ま、しょうがないよね。」
しょうがなくなんてない!
「お…オレは好きで…!」
『好きで』? んでなんて言えばいいんだ?
『好きで犯られたんじゃない』?
…言えない。言えねぇよ…。
「うん。好きなんだから当たり前だよね。」
違ーーーーーーう!!!
もうオレは何も言えなかった。

「ボク郵便局に行って、ついでにお昼ご飯食べてくるよ。
 兄さんもちゃんと食べなきゃダメだからね。」
オレ達は二人で仕事をしているので、いつも交代に食事をとる。
事務所をカラにする訳にはいかないから。
「ああ、今日弁当作ってきたんだ。
 お前の分もあるから喰ってから郵便局行けよ。」
「お弁当作ったんだ。ヒューヒュー♪
 新妻さんしてるねっ!」
「なっ!ナニ言ってんだ!」
誰が新妻だ!?

「なに作ってきたの?」
「あ?ただのサンドイッチだ。自分で挟むヤツ。
 具は卵とツナとハムと野菜。」
「兄さんのツナペースト、セロリがアクセントになってて美味しいんだよね。
 ボクあれが一番好きだな。」
セロリ…。
「あー…。今日はセロリはナシだ。」
「え?買い忘れたの?」
きょとんとした顔でアルが言う。
「いや…。」

「兄さん顔が紅いよ。…あ、そういうことかぁ。」
くすくすとアルが笑う。
「兄さん、コトバ、間違えてるよ。
 『今日は』じゃなくて『これからは』でしょ?」
「…。」
「ロイさん、セロリ嫌いなんだ。
 なんかかわいいね。あんな大人なのに。」
「生じゃなきゃ食べるんだけどな。」
あ、生でも食べてたか。

「旦那さんの好き嫌いを把握する、か。いいね。新婚さんは♪」
アル、アル、それ違うから。
「新婚じゃねぇよ!ついでにオレは新妻でもねぇし!」
「あ、そうだ。母さんからの伝言。」
人の話を聞け!
「え?どうかしたのか?」
用があれば携帯に掛ければいいのに。

「えっとね。『たまにはロイさんも連れて、実家にいらっしゃい。』ってさ。
 兄さんの部屋にベッドも残ってるし。
 『残ったスーツは後で送るわね。』って。」
「…。」
母さん、オレもう家を出された身?
いつの間に?
オレ、三界に家無し?

「『仕事忙しくてご飯作れないようなら、二人で食べにいらっしゃい。』とも言ってたよ。」
「そう…か。」
『いらっしゃい』なんだ。
『帰る』じゃないんだ。
あの家、オレの『実家』なんだ…。
オレ今まで、あれは『オレんち』だと思ってたよ。
それに『残った』スーツなんだ。
オレのクローゼットに『入ってる』んじゃないんだ。
違ってたんだ…。
なあ。いったいどういう根回しをすれば、こういうことが出来るんだ?

「なぁ、アル。あいつ、いつ家に来てたんだ?
 何回も来たのか?」
「ロイさん?よく来てるけど?」
「へ?よく?オレ知らないぞ?」
「兄さん、すぐ事務所に泊まるから。
 そうだなぁ、2週に1回は来てるんじゃない?」
おおおオレんちまで侵蝕されてる!?

「な…なにしに来てんだ!?そんな頻繁に?」
「うーん。父さんにとっちゃ兄さんをお嫁に出すようなもんだから、お許しを貰いにって感じかな。
 今はすっかり仲良くお酒飲んだりしてるけどね。
 母さんともよく話してるし。」
オレの知らない間にオレの家族に溶け込んでいたのか…。
つか、『お嫁に出す』ってナニ?

「それでもね、絶対泊まらないんだよ。
 今日は兄さんが家に来てくれるかもって、必ず帰ってた。」
いや、普通泊まらないから。
他人が泊まる方がヘンだから。
「それなのに全然行ってなかったんだって?」
行く義理がゴザイマセンから。
…今までは。だけど。
「オレいつ家を出たことになってんだ?
 オレの荷物は、いつあいつんちに送られたんだ?」
「んー。年調が忙しくなった当たりだったから、先々週くらいかな?
 兄さんこの2週間帰ってこなかったでしょ?」
そういえば。そうかも。
「少しずつあいつが荷物運んでたのか?」
「ううん。
 母さんがちょっとずつでも専門書が減ると気が付くから、一遍に送っちゃえって引っ越し屋さんに頼んでたよ。」
母さん。母さん。
オレのこと愛してる!?
オレは母さんを愛してるんだよ?

「なんでみんなオレをあいつに差し出すんだ?」
「ロイさん、兄さんのこと大切にしてくれるでしょ?」
「大切ぅ!?」
「そうだなー。
 兄さん、昨日仕事のこと考えた?」
「…。考えなかった。」
そういえば、それどころじゃなくて仕事のことなんか考えなかったな。
「兄さんは根を詰めすぎるんだよ。
 忙しくなると家にいたって仕事のことばかり考えてる。
 気分転換とかしようとしないじゃない。
 でも昨日は兄さんが仕事のこと、全然考えなかったんでしょ?
 それはロイさんがそうしてくれたんじゃないの?
 いつもあの人は兄さんにとって一番いいようにって考えてくれるんじゃない?」
いいようにどころか凄く大変な目に遭わされたんだけど。
とてもじゃないが、それはアルに言えない。

「ロイさんね。最初に挨拶に来たとき、父さんと母さんに土下座して頭下げたんだよ。
 『絶対幸せにします。どうしても一緒に暮らして幸せにしたいんです。どうかお願いします。』って。
 凄く真剣だった。
 だからボク達、そりゃ驚いたけどきっと兄さんは幸せになるって、そう思ったんだ。」
思うな!
もっと常識的にモノは考えろ!
オレの不幸は家族の非常識さに有ったのか…。


インターフォンが鳴った。
「ん?バイク便かな?」
ドアを開けると朝持たせた弁当を手に、男が立っていた。
「センセイ。昼食がまだだろう。一緒に食べよう。」
あのな。携帯して職場で喰えるから弁当なんだよ。
なんでここに持ち寄って喰うんだよ。
「…なにしてんだ?」
っていうより、なんでそんな上機嫌なの?
「センセイが初めて作ってくれたのだから、顔を見て食べたいと思ってな。」
「…。」
「あ、じゃぁボクは郵便局に行きますんで。」
アルが封筒を持って出ようとする。
「あ、おい。お前の分もあるんだから…。」
「ボクは外で食べてくるよ。ボクの分も食べてね。
 ロイさん、ごゆっくり。」
「気を遣わせて悪いね。」
「いいえ〜。」
「おいアルっ!」
アルが出て行ってしまった。

「ここでいいのかな?」
応接テーブル兼作業場はまだ書類が広がっている。
「あ、ちょっと待て。」
順番が狂わないように片付けた。
「もう合計表まで終わったのかね。これは年明けでも間に合うのに。」
「うちは法人より個人が多いからな。
 早めに片付けないと確定申告が間に合わなくなるんだ。
 今からもう帳面の入力を進めないと。」
「なるほど。」

「飲むものはナニがいい?っつってもコーヒーとティーパックの紅茶しかないけど。」
「ではコーヒーを。あ、いや、私がやろう。」
男が立ち上がる。
「いいって。一応客なんだから座ってろ。」
コーヒーメーカーのポットから注いでいると背後に立った男が
「身体は大丈夫か?」
腕を腰に回してくる。
「おい。コーヒーがこぼれるからやめろ。」
空いた手でオレからポットを取るとコーヒーメーカーに戻す。
「具合は悪くないかね?」
どうして身体が震えるんだろう。
男の右手が顎に添えられ後ろ側に向けられた。
「大丈夫だ。離せ。」
「本当に?」
「大丈夫だって言ってんだろ?」
仕方がない。
恥ずかしくて堪らなかったが、オレは軽く触れるだけのキスをする。
それで満足したのか、男がようやくオレから手を離し席に戻った。

「ブラックでいいな。」
「ああ。」
うちの事務所に牛乳などない。
オレは自分用のマグと来客用のカップをテーブルに置いた。
「ではいただきます♪」
いい年して「ます♪」はねぇだろ!?
こんなことならひとまとめにしても同じだったなと思いながら弁当を広げった。
バターを塗って合わせただけのパンの他に、パックに詰めたペーストと野菜。

「適当に自分で好きなモン乗せて喰え。」
「面白いな。こういうのは初めてだ。」
見ると男はツナペーストのみを乗せている。
「ちょっと待て。野菜も乗せろ。」
「? ツナサンドは普通ツナペーストだけじゃないのか?」
「あんた外食ばっかで野菜足りてないんだよ。ちょっと貸せ。」
男のパンを取り上げた。

「全くもう少し健康に気を付けろっての。玉ネギは食えるな?」
「ああ。セロリ以外なら、なんでも平気だ。」
玉ネギとレタス、トマトを男のパンに乗せ
「トマトは汁がこぼれるから気を付けて食べろよ。」
ほい。と男に手渡した。
「…。」
男は黙ってパンを見ている。
「あ?どした?」
「いや。いいものだと思ってな。こうして君に世話を焼いて貰うのは。」
頭に『ヒューヒュー♪新妻さんしてるねっ!』とアルの言葉が浮かんでしまった。
「お…オレは長男気質なんだよ!」
ああ。顔が熱い。
とにかく喰おう。

「センセイ?」
「ん?」
「付いてる。」
オレの口端に付いたペーストを男の指が拭う。
そのまま口元に寄せられたので指を咥えてしまったぁぁああ!!!
にっこり胡散臭い表情を浮かべるな!
サカるな!
絶対サカるなよ!?
今度から弁当の端にはセロリを入れておこう。

「とても美味しいよ。」
あ?普通の発言だ。よかった。
「こんなに美味しいサンドイッチは初めてだ。」
「そうか。よかったな。」
「センセイが作ってくれるモノはなんでも美味しいな。」
うん。作ったモノを美味いと食べて貰うのはやはり嬉しいな。
「あー。アリガト。なぁ。今晩は何喰いたい?」
「ん?センセイは何が食べたい?私はそれがいい。」
「あ?」
「君の食べたいものが食べたいんだ。何がいい?」
聞いてんのはオレなんだけど。

「あんたが好きな料理ってなんなんだ?
 ただ『肉』って言われてもな。」
食べ終わって片付けを済ませた。
「そうだな。あまり食事には興味がないんだ。
 腹が満たせればそれでいい。」
新しく注いだコーヒーを飲みながら男が言う。
「それってつまらなくないか?
 美味いモン喰うとそれだけで嬉しいし。
 身体のためにもバランスよく喰わないとダメだぞ?」
「それはこれから君が私に教えてくれないか?」
「しょうがねぇな。喰いたいモンとかあんたにはないのか?」
「…デザートが食べたい。」
「あ?今日は果物がなかったからデザートはない。ここに菓子とか残ってたかな?」

テーブルの端には間食用の菓子が入った箱がある。
アルがチョコやクッキーを時々補充しているものだ。
立ち上がって菓子箱を見ていると、いつの間に近づいた男が
「その菓子より美味しいデザートがいい。」
オレの身体を抱き寄せ、膝の上に向かい合わせに座らせた。
「っ!おい!」
男に跨る形になったのが妙に恥ずかしい。
いや、膝に乗ること自体恥ずかしいんだけど。

「美味しい食事をありがとう。」
あまりに素直な声が却って不思議だ。
「ああ。いや。お粗末様でした。」
オレも素直に答えてしまう。
「とても嬉しかったよ。」
どうかしちゃったのか?
この姿勢はいつもの男らしいが、発言がヘンだ。
素直すぎる。

「あー。それは良かった。で、降りてもいいか?」
「ダメだ。」
なんでオレがいつも指示されるかな?
「やっと腕のなかに来てくれたんだ。放せないな。」
「やっと?」
「そう。やっと。努力もしたよ?」
「?どんな?」

「私は色々な部署に行ったが、君と出会ったのは個人課税部門だった。」
「ああ。そうだな。親父の調査に来たんだから。」
「それから他の税法も勉強したんだ。」
「なんで?」
「君は最初に調査に行ったとき、『父さんみたいな税理士になる。』て言っただろう?」
…言ったかな? 言ったかも。
「だから私は君を支えられればと思って、それから法人税や消費税をしっかり学んだんだ。
 その他の税法や会計学もね。」
「その前は?」
「それまでは仕事がこなせればいいと思っていた。
 適当でもなんとかこなせていたから。
 しかし君に逢って、君を支えたいと思って学んだんだ。
 今回の新会社法も同様にね。」

「…あんたさ、オレのこといつ好きだって思ったの?」
初めて無料相談に行ったときかな?
あんとき初めてキスされたんだよな。
「初めて逢った時からだよ。」
「はぁ!?初めてって?」
オレ9歳だったぞ!?
「君に初めて逢ったときから、君を好きだと思った。」
「それって犯罪じゃ…」
「だから待ったんだ。ずっと待ったよ。
 君といつ愛し合えるのかと長いこと心待ちにしていた。」
「あのー。そこにオレの意志は?」
待ったって、オレが好きにならなきゃしょうがないだろ?

「君も私のことが好きだっただろう?」
はぃい!?
「初めて逢ったときから、君は私の一挙一動に集中していた。
 私を見ていないときにもね。」
「それは警戒していたんだよ!
 ゼイムショは敵って言われてたからな!」
「ならば調査に行った、もう一人の調査官を覚えているかね?
 いつの時でもいい。」
調査官は大概二人一組で来る。
えーっと。なんか背の高い金髪の兄ちゃんがいたような。
…いなかったような。

「…。」
当てずっぽうで言って外れたらなにをされるか解らない。
「初回と三回目はホークアイ君だった。」
「え!?」
あ、そうだ。
それでホークアイさんって素敵だねってアルと言ったんじゃないか。
どうして忘れてたんだろう。
「な? 君は私しか見ていなかった。君も私を好きだっただろう?」

もうどんなロジックかなんて、どうでもいいのかも知れない。
オレはこの男に捕まってしまった。
それだけなのかも知れない。
「解んねぇ。…忘れた。」
「デザートを戴けるかな?」
抱き寄せられて深く口づけられる。
もう慣れてしまった行為。
慣れない快感。


この姿勢はいくない。いや、よくない。
その…興奮したお互いのモノが触れ合ってお互いに解ってしまって。
男のモノを感じたとき、知らず身体が強張ってしまった。
この聡い男がそれに気付かない訳がなかった。
「すまなかった。」
膝から降ろされる。

ホッとしながらも男に申し訳ないと思って
「マグ。」
なんでもいいから、オレが男を拒否していないことを伝えたかった。
「ん?センセイ?」
「ショチョウ用のマグ、今度ここにも置いておこうな。
 ここにはうっすいコーヒーとまずい茶しかないけどさ。
 どうせこれからはオレの仕事が終わるまで、あんたここで待つつもりだろ?」
ぎゅっと抱きしめられた。
「嬉しいよ。センセイ。」
気持ちが伝わってよかった。

「うん。でももう見えるところに証をつけるのはやめろな。」
「ああ、この絆創膏はやはりそうか。」
「ん。アルに貼って貰ったんだ。これからこんな思いをオレにさせるな。」
ドスの利いた声で告げる。
オレは恥ずかしかったんだ。
「しかし、首筋の絆創膏は『キスマークを付けてます』という表示なのだが、そんなに喜んで貰えたかね。」
「あ!?」
なんだそれ?
オレ知らねぇぞ?
やっぱ前言取り消し!
オレ、断固こいつを拒否させてもらう!!


Vol.14


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