F.A.SS -
「鋼の錬金術師」の二次創作
【基本のエドロイSS】 -
原作をベースにした、エドロイSSです。
時系列順に並んでいます。
(下に行くほど後の出来事になります。)
誰がために - (まだロイの片想い)08.06.25up
- (両想いでもお互い気付かない)08.6.26up
水の中の月 - (告白)08.6.29up
- 08.6.30up
- (初めての触れ合い。大佐が咥えるのみ)08.7.1up
- (初体験)08.7.11up
蹟(しるし) - (大佐から初めてのキスマーク) 08.7.16up
シチュー - (大佐が熱を出さなくなったあたり)08.7.16up
- (大佐が壊れてます。ちょっとギャグ)08.7.22up
フソク - (豆がいないと闇がぶり返す大佐)08.7.22up
摂取 - (「フソク」の続き。相変わらず闇に囚われている大佐と帰ってきた豆)
08.7.22up
Turn R
Turn E
幕間 - (ごめんなさいなギャグ)
08.8.8up
- (ヤってるときのエドVer. 「虚」と対になってます。)
08.8.8up
- (ヤってるときのロイVer. 「彩」と対になってます。)
08.8.8up
- (「虚」の続き。どーしようもなくグダグダなロイ)
08.8.8up
- (兄さんと酔ってご機嫌の大佐。未然ジェラシー)08.10.25up
- (鬼畜い兄さん♪後、ヘタレ)08.10.25up
【遊 シリーズ】 -
パラレル。税務署長のロイと税理士のエド。

このSSは途中からRPG方式で、「遊」(ロイエドVer.)と「遊 脇道」(エドロイVer.)に枝分かれします。
但し、「遊 脇道」は「遊」本編と「遊 番外編」数本を包括した入れ籠構造になっておりますので、
「遊」→「遊 番外編」→「遊 脇道」の順に読まれることをお奨めします。
その順番にupして行きます。

「遊」vol.1〜vol.9 - 「遊」「遊 脇道」とも枝分かれするまで共通です。
「遊」vol.1 - 08.11.12up
「遊」vol.2 - 08.11.12up
「遊」vol.3 - 08.11.13up
「遊」vol.4 - 08.11.13up
「遊」vol.5 - 08.11.13up
「遊」vol.6 - 08.11.16up
「遊」vol.7 - 08.11.16up
「遊」vol.8 - 08.11.16up
「遊」vol.9 - 08.11.16up
「遊」 Vol.10以降(ロイエドVer.) -
ロイエドがお嫌いな方も、これはこの後のエドロイver.がこの「遊」のロイエドバージョンを含んだものですので、お読み戴ければ幸いと存じます。

「遊」vol.10 - 08.11.19up
「遊」vol.11 - 08.11.19up
「遊」vol.12 - 08.11.19up
「遊」vol.13 - 08.11.19up
「遊」vol.14 - 08.12.7up
「遊」vol.15 - 08.12.7up
「遊」vol.16 - 08.12.7up
「遊」vol.17 - 08.12.7up
「遊」vol.18 - 08.12.7up
「遊」vol.19 - 08.12.7up
「遊」vol.20 - 08.12.7up
「遊」vol.21 - 08.12.12up
「遊」vol.22 - 08.12.12up
「遊」vol.23 - 08.12.12up
「遊」vol.24 - 08.12.12up
「遊」vol.25 - 08.12.12up
「遊」vol.26 - 08.12.12up
「遊」vol.27 - 08.12.12up
「遊」vol.28 - 08.12.12up
「遊」vol.29 - 08.12.12up
「遊」vol.30 - 08.12.12up
「遊」vol.31 - 08.12.16up
「遊」vol.32 - 08.12.16up
「遊」vol.33 - 08.12.16up
「遊」vol.34 - 08.12.16up
「遊」vol.35 - 08.12.17up
「遊」vol.36 - 08.12.17up
「遊」vol.37 - 08.12.17up
「遊」vol.38 (これで完結です) - 08.12.17up
「幻」 (「遊」 番外編)(エドロイ) - 08.12.17up - (旧テレビアニメのラストから映画シャンバラのその後。ロイVer.)
「惑」 (「遊」 番外編)(エドロイ) - 08.12.17up - (旧テレビアニメのラストから映画シャンバラのその後。エドVer.)
「遊 脇道」(エドロイVer.) - 「遊」Vol.10以降
こちらはエドロイバージョンのうえ、ロイが精神的に壊れてしまっています。
しかも暗いです。
弱いロイが厭だという方はお読みならないで下さい。
「遊 脇道」Act.1 - 08.12.17up
「遊 脇道」Act.2 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.3 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.4 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.5 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.6 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.7 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.8 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.9 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.10 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.11 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.12 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.13 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.14 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.15 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.16 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.17 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.18 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.19 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.20 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.21 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.22 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.23 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.24 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.25 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.26 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.27 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.28 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.29 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.30 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.31 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.32 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.33 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.34 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.35 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.36 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.37 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.38(とりあえず完結ですが、「澱」へ続きます) - 08.12.26up
「澱」 (「遊 脇道」完結話) - 08.12.26up - (「脇道」のロイVer. これで「脇道」の本編は終わりになります)
「寥」 (「遊 脇道」 番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (「幻」の割愛部分)
「仕」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (駅前相談するセンセイ)
「誤」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (ある日税務調査が…)
「加」 (「遊」番外編 エドロイでもどっちでも) - 09.1.7up - (本編に入れ忘れた生協の小ネタ)
「罪」 (「遊 脇道」番外編) - 09.1.7up - (そして今2人は)
「問」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (そして今2人はその2)
「策」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 16.12.29up - (あの夜の男は)
【その他 ロイ受】
「戯」 (ブラロイ) - 09.1.7up - (ロイにホムンクルスと知られ、別れを告げるブラッドレイ)
「蓮」 (キンロイ) - 09.1.7up - (イシュヴァールにて。意外にほのぼのかと…。)
「痴」 (エドロイ)(単発) - 09.1.7up - (淫乱ロイの純情)
「羞」 (エドロイ前提ハボロイ)(「痴」シリーズ?) - 09.1.7up - (「痴」の続編。エドを愛しているロイだが、ハボに…。いや、ハボは被害者なのですが。)
- 上下につながりはありません
「紅」 (エドロイ) - 09.1.7up - (久しぶりに司令部に来た兄さん)
【単発 ロイエド】 - (焦れたロイにレイプされるエド。18禁のレイプものですんで、ご注意下さい)
「赦」 Act.1 - 09.1.7up
「赦」 Act.2 - 09.1.7up
【単発 ハボロイ】
「憂」 - 14.10.16.up - (ロイとハボックの阿呆らしいすれ違い)
「今更」 - 09.1.7up - (自分の想いに気付くロイ)
「蜜」 - 09.1.7up - (恋人になった後。エロシーンばっか)
「背」 - 09.1.7up - (ハボの背中に惹かれるロイ)
【「錯」シリーズ】 - ハボロイオンリーです。
イシュヴァールでの経験がロイに与えたものは…。
- 今はなき某数字SNSで、2007年9月から書いていたものです。
「錯」 Act.1 - 09.1.7up
「錯」 Act.2 - 09.1.7up
「錯」 Act.3 - 09.1.11up
「錯」 Act.4 - 09.1.11up
「錯」 Act.5 - 09.1.12up
「錯」 Act.6 - 09.1.16up
「錯」 Act.7 - 09.1.16up
「錯」 Act.8 - 09.1.17up
「錯」 Act.9 - 09.1.17up
「錯」 Act.10 - 09.1.18up
「錯」 Act.11 - 09.1.20up
「錯」 Act.12 - 09.1.21up
「錯」 Act.13 - 09.1.24up
「錯」 Act.14 - 09.1.27up
「錯」 Act.15 - 09.1.29up
「錯」 Act.16 - 09.2.1up
「錯」 Act.17 - 09.2.6up
「錯」 Act.18 - 09.2.12up
「錯」 Act.19 - 09.2.15up
「錯」 Act.20 - 09.2.20up
「錯」 Act.21 - 09.2.26up
「錯」 Act.22 - 09.3.9up
「錯」 Act.23 - 09.3.13up
「錯」 Act.24 - 09.3.20up
「錯」 Act.25 - 09.3.26up
「錯」 Act.26 - 09.4.7up
「錯」 Act.27 - 09.4.21up
「錯」 Act.28 - 09.5.6up
「錯」 Act.29 - 13.5.21up
「錯」 Act.30 - 13.5.22up
「錯」 Act.31 - 13.5.23up
「錯」 Act.32 - 13.5.26up
「錯」 Act.33 - 13.5.31up
「錯」 Act.34 - 13.6.2up
「錯」 Act.35 - 13.6.17up
「錯」 Act.36 - 13.6.19up
「錯」 Act.37 - 13.6.26up
「錯」 Act.38 - 13.7.11up
「錯」 Act.39 - 13.7.14up
「錯」 Act.40 - 13.7.19up
「錯」 Act.41 - 13.7.27up
「錯」 Act.42 - 13.8.13up
「錯」 Act.43 - 13.11.22up
「錯」 Act.44 (完結) - 13.11.26up
「聴」 (『錯』番外編) - 最終話後、ツケを支払に行くロイ。
Vol.1 - 17.1.7up
Vol.2 - 17.1.7up
【瑠】シリーズ - 【注意書きです】
これはいつものロイエドロイと、また原作とも異なるパラレルのロイエドロイSSです。
(すみません!最初間違えて『ロイエド』と書いてましたが、ロイエドロイです。)
原作またはアニメ設定以外受け容れないと言う方はお読みにならないで下さい。
最初は「人魚」のタイトルでしたが、後に「瑠」にしました。
「瑠」 Act.1 - 16.12.30up
「瑠」 Act.2 - 17.1.1up
「瑠」 Act.3 - 17.1.3up
「瑠」 Act.4 - 17.1.11up
Gift - 頂き物など
取調室にて -
ヒューズ×ロイ from 志乃さま
give me more -
ヒューズ×ロイ from 志乃さま
> 【遊 シリーズ】 > 「遊 脇道」(エドロイVer.) > 「遊 脇道」Act.9
「遊 脇道」Act.9
08.12.21up
んー…。
アル?
お前でっかくなったのに、まだ兄ちゃんのベッドに潜り込んでくるのか?
全くしょうがねぇヤツだな。
くしゃくしゃと髪をまぜながら瞳を開けると、艶やかな闇色の髪が有った。
ああ。
オレ、ショチョウと暮らすことになったんだっけ。

めずらしく朝まで目が覚めなかったな。
オレに抱きついているこいつは、まるで縋り付いているようだ。
どこか傷ついているように見えるのは気のせいだろうか。
しかしよく眠る男だな。
昨日熱があったとはいえ、昼中寝てたクセに一晩また寝たのか。
…そんなに負担を掛けたのかな。
寝顔が穏やかなことを確認してからそっとベッドを出た。

朝食の用意をして男を起こしに行く。
「おい。ショチョウ。朝だぞー。起きろー。」
「ん…。」
寝ぼけた顔もかわいいな。
うっすら開いた瞳は潤んで艶やかで。
まるで漆黒の宝石みたいだ。
オレはそっと目蓋にキスを落とした。
「センセイ…?」
「はよ。具合はどうだ?」
「ん。大丈夫だ。ああ、センセイ。」
躰を起こし掛けたオレに手を伸ばしてくる。

「ん?どした?」
顔を覗き込もうとしたらキスされた。
「目蓋への口づけも嬉しいが、朝の挨拶はやはり口にして欲しいな。」
にやりと笑う表情は全くいつも通りのこいつで。
ああ、よかったと思いはしたがなんか悔しい。
「解った。明日から口と言わず躰中にしてやる。」
同様ににやりと返してやる。
「…それは…嬉しいな。」
こいつ、少し顔が紅くなったな。
へっ!オレの勝ち!
「ほら。顔洗って来いよ。メシ出来てるぞ。」
「ああ。」
起きあがるのに少し手を貸してやったが、すっかり大丈夫そうだ。
よかった。

そのまま寝室で着替えを済ませている間に、今日がプラスチックゴミの日だったことを思い出した。
事務所とこれだけ近いんだから、おそらく同じ曜日で回収されるだろう。
ゴミを集めとこう。
寝室のゴミ箱をみると、きちんとビニールが掛けてある。
とりあえずビニールごとゴミを取り出した。
「あ!こいつ分別してねぇ!」
燃えるゴミもプラスチックゴミもいっぺんに捨ててやがる。
「ちっ!全部分けなきゃなんないじゃねぇか。」
仕方がないのでウチ中のゴミを一つ一つ分けていった。

「? 錠剤…だよな?」
分けていく内に薬のパッケージが多いことに気付いた。
病院でもらう類の錠剤だ。
「なんか持病でもあんのかな。」
だからあんなに厭世的なんだろうか。
今度聞いてみよう。
…聞かれたらイヤかな。
自分から言い出すのを待った方がいいんだろうか。
とりあえずオレはそのカラになったパッケージを一つ、スーツのポケットに入れた。

プラスチックゴミを一袋にまとめて、玄関へ置いたところに男が来た。
「あんたさ、ゴミ出しってしたことないだろ?」
「? ああ。クリーン・サービスが持って行ってくれるからな。」
なるほど。
こいつが掃除をするとこなんて想像できない。
「ゴミは分別が必要なんだ。
 これからは燃えるゴミとプラスチックゴミと金属ゴミは分けて捨てろ。」
「…ゴミに種類があるのか?」
知らないのかよ!

「あるんだよ。もっとゴミ箱買ってくるから捨てるときに分けるんだ。いいな?」
「解った。どれがどのゴミなのか教えてくれたまえ。」
「ゴミの分類表だって来てるはずだぞ?」
「…見た覚えがないな。」

興味のないモノは全然目に入らないタイプの人間なんだな。
まあオレだってそうだけどさ。
ああ。きっと雑紙と新聞も分けてないんだろうな。
段ボールとかも一緒になってるに違いない。
…ゴミの分類はいつかこいつの仕事にしよう。
きっちり覚えてもらうぞ。


朝食を済ませて、事務所まで二人で歩いていた。
「なあ。オレんとこは多分、今日で仕事納めになると思うんだ。
 仕事終わったらとりあえず一度、自分ちにアルと帰るから。」
いきなり家を出ちまったからな。
挨拶もしてねぇし。
「…今日中に帰ってきてくれるのだろうね?」
おい。脚が止まってるぞ。
「帰ってくるよ。忘れたモンとか見に行って、ちょっと話をしてくるだけだ。
 あんたも仕事終わったら来たらどうだ?」
笑いかけて、背中を押してまた歩かせる。
なんだかなー。
「そうさせて貰おう。仕事が終わったらとりあえず連絡をいれてくれたまえ。」
「ん。解った。」

マンションの前で別れようとしたのに、事務所まで付いてきた。
「なあ。仕事行けよ。ここまで送らなくていいっつってんのに。」
「ダメだ。アルフォンス君に手渡すまでは私の責任だ。」
「なんの責任だよ。オレは子供か?」
まだアルは来ていないようだ。
「ほら。じゃあ事務所に入ったからもういいだろ?」
「ダメだと言っている。君を預かって行ったのだからね。」
まあ、あんときゃオレの意思じゃなかったのは確かだ。

「あんたはオレの保護者じゃないだろ?
 アルだって違う。オレはガキじゃないんだから預かられてる訳じゃねぇ。」
でもなんでいきなり子供扱いだよ。
ちょっとムカツク。
男の後頭部に手を廻して引き寄せるとその唇に噛み付くようにキスをした。
「!?…セ…!…んっ」
開いたところに舌を入れ込んで絡ませる。
驚いたように目を見開いていた男が目蓋を伏せた。
「ン…。」
甘えた声が聞こえてくる。
上顎を撫でるように舐め、絡めた舌を吸い上げて甘咬みすると男の躰が震えた。

「は…ぁ。」
口を離して顔を覗き込む。
すこし惚けたようなその表情が婀娜っぽい。
「あんたがオレのかわいい人だろ?
 オレはあんたの方こそ税務署まで送りたいくらいだ。
 ホークアイさんに手渡すまでが、オレの責任なんじゃないのか?」
くすりと笑って囁いてやると耳まで紅く染まっている。

「センセイ…。」
男が抱きついてきた。
「ん?なんだ?」
その背中を優しく撫でてやる。
「国税専門官にならないか?」
ナニ言い出すかと思えば。
いつも一緒にってか。
「あんたの部下なんてごめんだ。仕事しなさそうだもんな。
 あんたのお守りはホークアイさんに任せるよ。」

もう8時半過ぎだ。
ここを出さなくちゃと思いながらもう一度深くキスをする。
「…ン…ンッ…」
キスしているときに喉から漏れる甘えた声が、オレを蕩かすようで好きなんだ。
あー。押し倒したい。
キスしたまま男を両腕で抱き寄せ、机に背をあてるように移動させる。
「ん…?」
疑問の声が聞こえたが、そのまま酷くぶつけないように腕で背中と頭を支えながら、男の上半身を机の上に倒した。
更に深く舌を絡ませてると
「…ン…」
安心したのか、また甘い声を洩らしてくる。

男の胸元に手を匍わせたところに
「おはよう!兄さん!」
元気にアルがドアを開けた。
「うわ!」
オレが躰をおこすより早く男が勢い良く上半身をおこし、アゴと額が思いっきりぶつかった。
「つぅーーー!!」
「ってぇーー!!」
オレはアゴを押さえて座り込んだ。
横には同様に額を押さえてへたり込んでいる男。

「仲好しさんだねぇ。」
溜め息とともにアルの言葉が落ちてきた。
「私はこの辺で失礼するよ。」
まだ額に手をあてたまま男が立ち上がる。
「あ…ああ。気ぃ付けてな。終わったら連絡すっから。」
「ああ。ではアルフォンス君、仕事を頑張ってくれたまえ。」
にっこりとアルに笑いかけて男は去って行った。
今更爽やか笑顔したって遅いだろ?
恥ずいヤツ。

「なに朝からサカってんのさ。」
呆れ顔で言われてしまった。
「あいつが子供扱いすっからさ。
 どっちが誰のモノなのか、はっきりさせとこうと思ったんだよ。」
『あいつ』が『オレ』のモンなんだってしっかり覚えさせないとな。
「オスだねぇ。兄さん。」
ひゅー、と口笛を鳴らしてアルが言う。
「イテェ…。これアザになるな…。」
それには応えずアゴをさする。

「ま。仲良きことはうつくしき哉。
 神聖な職場で…って、燃えるよね。」
ア…アルフォンス君!?
「まさかお前、ここで女とヤってんのか!?」
いや、オレの方がここに居る時間が長いよな。
アルはちゃんと毎日帰ってるけど、オレはしょっちゅう泊まってた。
「イヤだなぁ、兄さん。一般論だよ。一般論。」
そんな一般論あんのか?
「職場でか…確かにいいかもな。」
って、税務署でヤるのはちょっとイヤ。
…いや、却って燃えそうだ。
「でもボクが来そうな時間にここで最後までヤるのはやめてよね。
 野郎同士なんてボクは見たくないから。」
「…はい。ワカリマシタ。」
オレだってそんなあいつをお前に見せたかないっつの。

事務所に届いていた資料を処理していくと、やはり午前中にケリが付きそうだ。
アルと相談して、予定通り今日を仕事納めにした。
仕事を終わらせてからざっと大掃除をしていると昼になった。
「今日弁当、お前の分も作ってきてるからな。」
「へえ。兄さんが?それともロイさんが作ってくれたの?」
掃除機を片付けながらアルが楽しそうに言う。
「あいつは料理どころか家事の全てができねぇよ。
 ヤツが有能なのは風呂入れとコーヒー煎れることくらいだ。」
「あー。らしいと言えばらしいけどね。」
納得した声だ。

「じゃあ母さんの言う通り、兄さんは家事ができるから貰えたお嫁さんだね。」
母さんは常に
『家事も出来ない男は嫁の来手がないわよ。』
とオレ達に家事を仕込んだ。
解るまで出来るまで丁寧に教えたら、あとは自分たちでやらせるという主義だったんだ。
そのせいか母さんにしてもらうよりも自分たちでお互いの世話をやいてきた。
おかげでアルもオレも家事は万能だ。

「そうだな。って、アレがオレの嫁か?」
「だって、そうじゃないの?兄さんがお嫁さん?」
つか、夫婦なのか?
「や、嫁はごめんだが。
 ああ。嫁じゃねぇよ。
 アレは黒猫。オレがあいつの飼い主だ。」
ふうん、と弁当の包みを広げながら
「随分大きな猫だねぇ。ボクはうちの猫の方がかわいいな。」
言うアルに、ふふん、とオレは笑った。

「あんなかわいくて最上級の猫はいないぜ?」
「へえ。もしかしてロイさんって、兄さんと居るときはすごくかわいいとか?」
「そうだ。お前にも絶対見せてやんねぇよ?」
「いや、見たくないけどさ。
 ふうん。ロイさんって結構ツンデレだったんだね。」

ツンデレ?
凄く寒そうな光景がオレの脳裏に浮かんだ。←それはツンドラ(寒!)
「しかも誘い受けかぁ。やるな。ロイさん。」
サソイウケ?
「結構萌え要素押さえてるなぁ。
 もともとヤオイ関係なんだしね。」
燃エヨウソ?
八百遺憾系?
「あの…さ。アル。兄ちゃんにも解る言葉で話してくんないか?」
オレの弟は宇宙語を話してるのか?

「ああ。最近ウィンリィとシェスカがコミケに参加するって頑張っててさ。
 制作場所に困ってたから、兄さんの部屋を使ってるんだ。
 色々ボクも手伝わされてて、ヤオイ用語を覚えちゃったよ。」
八百異様語?
異様なのはお前が話してる言語だよ。

「コミケ?」
どっかで聞いた言葉だ。
コミケ…コミケ…。
頭がぐるぐるしそうになった時、インターフォンが鳴った。
「はい?ああ。すぐ開けます。」
アルが機嫌良くドアを開けるなんてめずらしい。
営業に対しては鬼のような冷たさで追い返すのに。
と思ったら男だった。

「ああ?ナニしに来たんだ?」
「何って、昼食をセンセイと摂りに。」
「はあ?なんでここで喰うんだよ?」
「だってセンセイの作ってくれた弁当だ。
 センセイと食べたいじゃないか。」
ナニを言ってんだか。
ま、こいつのことだ。
少しでもオレといたいとか思っているんだろう。

あ!コミケ!
こいつの顔を見て思い出した!
「コミケって解った!
 銀行の娘が言ってたぞ。
 なんだ?それ?」
そしてオレはアルと男の説明で、オレと男のことが『お耽美』な『ヤオイ』(こっ恥ずかしいホモ話をこう呼ぶんだそうだ。)として描かれることになったと知った。

「兄さんがオリジナルで使われるのか。
 ウィンリィ達も使うって言ってたから、そのうち801で一つのジャンルになれるかもね。
 おめでとう♪」
「それってめでたいことなのか?」
「さあ? ウィンリィは壁サークル目指すって宣言してたから。
 沢山の人が読んでくれるといいね♪」
いいのか?それはいいことなのか?
つかなんで女がホモ話を喜ぶんだ?
自分たちに関係ないんじゃないのか?

「私は別にかまわないが?
 センセイとの関係をオープンにできる、いい機会ではないかね?」
オープンにしてなんのメリットがあるんだよ?
仕事が増えるとでもいうのか?
「つか、なんであんたまでその『ヤオイヨウゴ』っつの?を知ってんだよ?」
「ああ。実はホークアイ君が同様にレベッカと『実録 公務員シリーズ』という同人誌を昔から発行していてね。
 どうやら壁サークルと呼ばれているらしいのだよ。」
「へえ。すごいですね。壁サークルですか。」
感心したアルの声が遠くに聞こえる気がする。

「なあ。そのシリーズって、モデルは誰なんだ?」
すごくその辺が気になって仕方がない。
「ん?私らしいぞ。
 もちろん相手は君だ。」
やっぱりか!!
「じゃあ既にロイさんと兄さんは一ジャンルになりつつあるんですね!」
嬉しいか?
アル。
嬉しいか?
自分の兄がホモとして『お耽美』に女性達に広まっていて。

「腐ってる…。」
男を選んだオレの言えた義理じゃないが、生殖本能をなんだと思っているんだ?
「そうそう。だからヤオイ好きな女性は自分たちのことを『腐女子』とか『貴腐人』とか『腐淑女(ふれでぃー)』とか呼ぶらしいよ。」
また異様語をアルが紙に書いて寄越した。
「ほう。うまい言い方をするものだな。」
ナニ感心してんだよ!

オレが声を挙げようとしたところに
「そうだ。ホークアイ君で思い出した。
 これをここの冷蔵庫に入れてくれないか?」
男が包みを取り出した。
「なんですか?それ?」
アルが受け取る。
「鹿肉だそうだ。よかったら今日君たちの家で食べてくれないかと思ってな。」
鹿!?

「なぜ鹿肉?」
「ホークアイ君の趣味は狩猟でな。
 先日撃った鹿の肉が熟成されたと言ってくれたんだ。」
狩猟!?
「ええ!?ホークアイさんってそんな趣味があるんですか!」
アルが驚いて言う。オレも驚いたよ。
「ああ。腕が良いらしくて、その世界では『スナイパー』と呼ばれているらしい。」
銃を構えるホークアイさんを想像して、妙に似合うと思った。

「なんか格好いいですね。ボクもやってみたいな。」
アルに銃。
鬼に金棒より恐ろしく感じるのはなぜだろう。
「格好いいと思うかね?…センセイも?」
男がオレを見て言う。
「いや…。オレはいいや。
 食べるために他の者を殺すのは仕方のないことだと思ってるけど、進んでそれを趣味にしようとは思わない。」
そうか、と頷いた男にアルが
「ロイさんはされないんですか?なんだか似合いそうですけど。」
と聞いた。
「私はその資格が取れないのだよ。」
小さく笑って言う意味が解らなかったが、食べたことのない食材に興味が湧いた。

「鹿肉って、どうやって喰うんだ?」
「ああ。包みが二つある。一つの『生』と書いてある方は、そのまま塩を付けて食べられる。
 おろしたガーリックを薬味にしてもうまいそうだ。
 もう一つの『加熱』と書いてある方は塩コショウしてステーキにしたり、シチューに入れたり普通の食肉と変わらない扱いでいいと言っていた。」
「へえ。馬肉や牛肉みたいですね。生でも食べられるんだ。」
アルも珍しい食材に興味が湧いているようだ。
鹿肉やホークアイさんの狩猟での話に昼食は盛り上がった。

「では私は仕事が終わったらそちらに向かうから。」
玄関に立った男が言う。
「ああ。オレ達はもう少し掃除をしたら家に帰ってる。」
「ロイさんは車でいらっしゃるんですか?」
オレと並んで見送るアルが聞いた。
「ああ。そのつもりだが?」
「じゃあ、明日車を使う予定がないのなら、ボクが送りますよ。
 ロイさんも兄さんもお酒を飲むでしょう?」
「「いや」」
男とオレが同時に言う。
「?」
「や、オレ飲まなくていいから。」
「いや。私は飲まなくていいから。」
またほぼ同時に言う。
「ぷっ!本当に二人は仲がいいんですね。」
可笑しそうにアルが笑う。
オレと男は顔を見合わせて苦笑した。

「まあ。その時になったら運転者を考えましょう。
 ボクはあまりお酒を好みませんから。」
まだ笑いが止まらないアルが
「じゃ、ボクは隣の部屋で資料の整理をしてますから、別れの挨拶をどうぞ。」
言うなりその場を離れて、資料置き場の部屋に入ってドアを閉めた。

「あ…じゃな。仕事頑張れよ?」
「ああ。…では後で。」
そのままオレから去ろうとする男がなんだかイヤだった。
「って、あんたは行っちまっていいのか?」
それでもオレから求めるのは悔しくて。
「センセイ?
 ……抱きしめて、口づけて欲しい。」
オレは甘やかされているんだろうか。
それとも言葉通りに求められているんだろうか。

「来いよ。ほら。キスしてやるから。」
オレは腕を広げてみせた。
来い。
オレを求めろ。
もっとオレに溺れろ。
オレだけだと言う言葉を吐くその唇をオレだけに触れさせろ。

今まで女に対して自分は淡泊な方だと思っていた。
それほど強い性欲を感じたこともあまりない。
でもこいつには全然違うんだ。
こいつが欲しい。
こいつに欲しがって欲しい。
オレだけを欲しがって欲しい。

「センセイ…。」
掠れた声すらオレを蕩かせる。
オレの腕に縋るように男が躰を寄せた。
それを強く抱きしめて
「も一度、言え。」
「…口づけて欲しい。」
「ん。こっち向けよ。」
貪るようなキスをお互いが求めるままに交わす。

「…ン…。」
洩らされる甘い声に一度口を離し
「声をあげるな。あんたのこんな声はオレにしか聞かせるな。」
囁いてまた唇を合わせる。
声をあげない分なのか、震える躰が愛おしい。
やがて離れた唇と唇の間に細く唾液が銀糸のように垂れる。
男のアゴについたそれを指で拭って
「また後でな。」
そっと耳元に囁いた。
「ああ。また後で。」
返ってくる声も少し震えていて。
なんてこいつはかわいいんだろうとまた改めて思う。
くしゃり、と男の髪を乱して見送った。

「熱いねぇ。」
男が去った後に部屋から出てきたアルが言う。
「かわいいだろ?」
どうせ耳をそばだてていたんだろうアルに自慢げに言ってやる。
「ウィンリィの作品はまだ甘いようだね。アドバイスしておくよ。」
オレ達って、本当に一部ではもう有名なのか?

しかしそれを『イヤだ』とは思わなくなっている自分がちょっと、ちょっとだけイヤだった。



Act.10

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