F.A.SS -
「鋼の錬金術師」の二次創作
【基本のエドロイSS】 -
原作をベースにした、エドロイSSです。
時系列順に並んでいます。
(下に行くほど後の出来事になります。)
誰がために - (まだロイの片想い)08.06.25up
- (両想いでもお互い気付かない)08.6.26up
水の中の月 - (告白)08.6.29up
- 08.6.30up
- (初めての触れ合い。大佐が咥えるのみ)08.7.1up
- (初体験)08.7.11up
蹟(しるし) - (大佐から初めてのキスマーク) 08.7.16up
シチュー - (大佐が熱を出さなくなったあたり)08.7.16up
- (大佐が壊れてます。ちょっとギャグ)08.7.22up
フソク - (豆がいないと闇がぶり返す大佐)08.7.22up
摂取 - (「フソク」の続き。相変わらず闇に囚われている大佐と帰ってきた豆)
08.7.22up
Turn R
Turn E
幕間 - (ごめんなさいなギャグ)
08.8.8up
- (ヤってるときのエドVer. 「虚」と対になってます。)
08.8.8up
- (ヤってるときのロイVer. 「彩」と対になってます。)
08.8.8up
- (「虚」の続き。どーしようもなくグダグダなロイ)
08.8.8up
- (兄さんと酔ってご機嫌の大佐。未然ジェラシー)08.10.25up
- (鬼畜い兄さん♪後、ヘタレ)08.10.25up
【遊 シリーズ】 -
パラレル。税務署長のロイと税理士のエド。

このSSは途中からRPG方式で、「遊」(ロイエドVer.)と「遊 脇道」(エドロイVer.)に枝分かれします。
但し、「遊 脇道」は「遊」本編と「遊 番外編」数本を包括した入れ籠構造になっておりますので、
「遊」→「遊 番外編」→「遊 脇道」の順に読まれることをお奨めします。
その順番にupして行きます。

「遊」vol.1〜vol.9 - 「遊」「遊 脇道」とも枝分かれするまで共通です。
「遊」vol.1 - 08.11.12up
「遊」vol.2 - 08.11.12up
「遊」vol.3 - 08.11.13up
「遊」vol.4 - 08.11.13up
「遊」vol.5 - 08.11.13up
「遊」vol.6 - 08.11.16up
「遊」vol.7 - 08.11.16up
「遊」vol.8 - 08.11.16up
「遊」vol.9 - 08.11.16up
「遊」 Vol.10以降(ロイエドVer.) -
ロイエドがお嫌いな方も、これはこの後のエドロイver.がこの「遊」のロイエドバージョンを含んだものですので、お読み戴ければ幸いと存じます。

「遊」vol.10 - 08.11.19up
「遊」vol.11 - 08.11.19up
「遊」vol.12 - 08.11.19up
「遊」vol.13 - 08.11.19up
「遊」vol.14 - 08.12.7up
「遊」vol.15 - 08.12.7up
「遊」vol.16 - 08.12.7up
「遊」vol.17 - 08.12.7up
「遊」vol.18 - 08.12.7up
「遊」vol.19 - 08.12.7up
「遊」vol.20 - 08.12.7up
「遊」vol.21 - 08.12.12up
「遊」vol.22 - 08.12.12up
「遊」vol.23 - 08.12.12up
「遊」vol.24 - 08.12.12up
「遊」vol.25 - 08.12.12up
「遊」vol.26 - 08.12.12up
「遊」vol.27 - 08.12.12up
「遊」vol.28 - 08.12.12up
「遊」vol.29 - 08.12.12up
「遊」vol.30 - 08.12.12up
「遊」vol.31 - 08.12.16up
「遊」vol.32 - 08.12.16up
「遊」vol.33 - 08.12.16up
「遊」vol.34 - 08.12.16up
「遊」vol.35 - 08.12.17up
「遊」vol.36 - 08.12.17up
「遊」vol.37 - 08.12.17up
「遊」vol.38 (これで完結です) - 08.12.17up
「幻」 (「遊」 番外編)(エドロイ) - 08.12.17up - (旧テレビアニメのラストから映画シャンバラのその後。ロイVer.)
「惑」 (「遊」 番外編)(エドロイ) - 08.12.17up - (旧テレビアニメのラストから映画シャンバラのその後。エドVer.)
「遊 脇道」(エドロイVer.) - 「遊」Vol.10以降
こちらはエドロイバージョンのうえ、ロイが精神的に壊れてしまっています。
しかも暗いです。
弱いロイが厭だという方はお読みならないで下さい。
「遊 脇道」Act.1 - 08.12.17up
「遊 脇道」Act.2 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.3 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.4 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.5 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.6 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.7 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.8 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.9 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.10 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.11 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.12 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.13 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.14 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.15 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.16 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.17 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.18 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.19 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.20 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.21 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.22 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.23 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.24 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.25 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.26 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.27 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.28 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.29 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.30 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.31 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.32 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.33 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.34 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.35 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.36 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.37 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.38(とりあえず完結ですが、「澱」へ続きます) - 08.12.26up
「澱」 (「遊 脇道」完結話) - 08.12.26up - (「脇道」のロイVer. これで「脇道」の本編は終わりになります)
「寥」 (「遊 脇道」 番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (「幻」の割愛部分)
「仕」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (駅前相談するセンセイ)
「誤」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (ある日税務調査が…)
「加」 (「遊」番外編 エドロイでもどっちでも) - 09.1.7up - (本編に入れ忘れた生協の小ネタ)
「罪」 (「遊 脇道」番外編) - 09.1.7up - (そして今2人は)
「問」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (そして今2人はその2)
「策」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 16.12.29up - (あの夜の男は)
【その他 ロイ受】
「戯」 (ブラロイ) - 09.1.7up - (ロイにホムンクルスと知られ、別れを告げるブラッドレイ)
「蓮」 (キンロイ) - 09.1.7up - (イシュヴァールにて。意外にほのぼのかと…。)
「痴」 (エドロイ)(単発) - 09.1.7up - (淫乱ロイの純情)
「羞」 (エドロイ前提ハボロイ)(「痴」シリーズ?) - 09.1.7up - (「痴」の続編。エドを愛しているロイだが、ハボに…。いや、ハボは被害者なのですが。)
- 上下につながりはありません
「紅」 (エドロイ) - 09.1.7up - (久しぶりに司令部に来た兄さん)
【単発 ロイエド】 - (焦れたロイにレイプされるエド。18禁のレイプものですんで、ご注意下さい)
「赦」 Act.1 - 09.1.7up
「赦」 Act.2 - 09.1.7up
【単発 ハボロイ】
「憂」 - 14.10.16.up - (ロイとハボックの阿呆らしいすれ違い)
「今更」 - 09.1.7up - (自分の想いに気付くロイ)
「蜜」 - 09.1.7up - (恋人になった後。エロシーンばっか)
「背」 - 09.1.7up - (ハボの背中に惹かれるロイ)
【「錯」シリーズ】 - ハボロイオンリーです。
イシュヴァールでの経験がロイに与えたものは…。
- 今はなき某数字SNSで、2007年9月から書いていたものです。
「錯」 Act.1 - 09.1.7up
「錯」 Act.2 - 09.1.7up
「錯」 Act.3 - 09.1.11up
「錯」 Act.4 - 09.1.11up
「錯」 Act.5 - 09.1.12up
「錯」 Act.6 - 09.1.16up
「錯」 Act.7 - 09.1.16up
「錯」 Act.8 - 09.1.17up
「錯」 Act.9 - 09.1.17up
「錯」 Act.10 - 09.1.18up
「錯」 Act.11 - 09.1.20up
「錯」 Act.12 - 09.1.21up
「錯」 Act.13 - 09.1.24up
「錯」 Act.14 - 09.1.27up
「錯」 Act.15 - 09.1.29up
「錯」 Act.16 - 09.2.1up
「錯」 Act.17 - 09.2.6up
「錯」 Act.18 - 09.2.12up
「錯」 Act.19 - 09.2.15up
「錯」 Act.20 - 09.2.20up
「錯」 Act.21 - 09.2.26up
「錯」 Act.22 - 09.3.9up
「錯」 Act.23 - 09.3.13up
「錯」 Act.24 - 09.3.20up
「錯」 Act.25 - 09.3.26up
「錯」 Act.26 - 09.4.7up
「錯」 Act.27 - 09.4.21up
「錯」 Act.28 - 09.5.6up
「錯」 Act.29 - 13.5.21up
「錯」 Act.30 - 13.5.22up
「錯」 Act.31 - 13.5.23up
「錯」 Act.32 - 13.5.26up
「錯」 Act.33 - 13.5.31up
「錯」 Act.34 - 13.6.2up
「錯」 Act.35 - 13.6.17up
「錯」 Act.36 - 13.6.19up
「錯」 Act.37 - 13.6.26up
「錯」 Act.38 - 13.7.11up
「錯」 Act.39 - 13.7.14up
「錯」 Act.40 - 13.7.19up
「錯」 Act.41 - 13.7.27up
「錯」 Act.42 - 13.8.13up
「錯」 Act.43 - 13.11.22up
「錯」 Act.44 (完結) - 13.11.26up
「聴」 (『錯』番外編) - 最終話後、ツケを支払に行くロイ。
Vol.1 - 17.1.7up
Vol.2 - 17.1.7up
【瑠】シリーズ - 【注意書きです】
これはいつものロイエドロイと、また原作とも異なるパラレルのロイエドロイSSです。
(すみません!最初間違えて『ロイエド』と書いてましたが、ロイエドロイです。)
原作またはアニメ設定以外受け容れないと言う方はお読みにならないで下さい。
最初は「人魚」のタイトルでしたが、後に「瑠」にしました。
「瑠」 Act.1 - 16.12.30up
「瑠」 Act.2 - 17.1.1up
「瑠」 Act.3 - 17.1.3up
「瑠」 Act.4 - 17.1.11up
Gift - 頂き物など
取調室にて -
ヒューズ×ロイ from 志乃さま
give me more -
ヒューズ×ロイ from 志乃さま
> 【遊 シリーズ】 > 「遊」 Vol.10以降(ロイエドVer.) > 「遊」vol.25
「遊」vol.25
08.12.12up
「年始のご挨拶には今日行くのか?」
男が聞いてくる。
「うん。よく解んないけど今日行こうかと思ってる。」
オレだって『実家』へ新年の挨拶に行くのは初めてだよ。

チェックアウトを済ませて土産でも買おうかとあたりをぶらつく。
『温泉まんじゅう』ってなんだろう。
試食してみると甘くて美味い。
「これ美味い。中身は何なんだろう?」
真っ黒だけどゴマ…じゃないよな。
「餡というらしいぞ。
 材料はアズキという…赤くて小さい豆だ。」
「へえ。赤いんだ。このアンってのは真っ黒なのにな。
 豆なら躰に良さそうだ。これ買っていこう。」
アルが喜ぶだろう。
東の食べ物は躰にいいモノが多そうだ。
帰ったら少し調べてみよう。

「明けましておめでとうございます。」
『実家』で挨拶をする。
男は親父へ酒のプレゼントを渡し、早速アルも含めて3人で飲み始めた。
ふーん。ホントに気が合ってるみたいだ。
ま、調査に来てる頃から雰囲気は悪くなかったけどな。

オレは母さんのいるキッチンへ行く。
「なんか手伝うことある?」
「大丈夫よ。みんな年末に作っておいたから。ありがとう。」
ダイニングテーブルに着くと、母さんがオレ用のマグに紅茶を煎れてくれた。
「手伝いに来なくてごめんな。」
一人のんびりした年越ししちゃったな。
「あら。もう違う家庭なんだから、エドはエドの家のことをすればいいのよ。」
うん。やっぱオレ三界に家無しっぽいな。

「あのさ。これ。」
プレゼントを渡す。
「まあ。いつもありがとう。」
嬉しそうに笑う母さんは、やっぱり若くてかわいいなと思う。
いや、オレはマザコンじゃないけど。
丁寧に包装を解いてショールを広げた母さんが
「きれいね。とても素敵。」
いつものように喜んでくれる。

「オレ、いつもなにがいいかよくわかんなくて。
 今年はあいつに選んで貰ったんだ。」
オレのセンスには問題があると常々アルに言われてるしな。
「そうなの。
 でもお母さんはエドがプレゼントしてくれることがやっぱり嬉しいわ。
 どうもありがとう。大切に使うわね。」
「ん。喜んで貰えて嬉しいよ。」
「早速明日の挨拶回りに使わせてもらおっと。」
本当に嬉しそうにふふ、と笑ってくれる。
ああ。
オレこういう可愛い嫁さんが欲しかったな。
今更言っても仕方のないことだけどさ。

「それで新婚生活はどう?」
「うん、新婚じゃないけど。
 あ、そうだ。食事のことなんだけどさ。」
「どうかしたの?」
母さんも自分の紅茶を煎れて向かいに座る。

「あいつ半端なく酒を飲むんだ。
 いい年だしさ、脳梗塞とか怖いからあまり脂とか摂らない料理の方がいいのかなと思って。
 野菜もあまり食わないし。」
「あら。ロイさんお野菜が嫌いなの?」
「いや、セロリ以外は食べるんだけど、オレに野菜料理のレパートリーがあんまない。」
「そうね。野菜料理はお肉より手間が掛かるものね。」
「サラダか茹でるかしか、してるヒマもアイディアもなくてさ。
 母さんの常備菜とかレシピある?」
「あらためてレシピとかは…。
 昔使ってたお料理の本を探しておくわね。」
「ん。頼む。」

「それにしてもいいお嫁さんしてるのね。
 お母さん感心しちゃったわ。」
「や、母さん、オレ嫁じゃないから。」
「旦那さんの健康管理が出来れば立派なお嫁さんよ。」
なんか根本が間違ってるよ。母さん。

「でもこれから忙しくなるんだから、無理をせずに二人でこっちに食べに来なさいね。」
「うん。…なんだよ?」
後ろに男の気配がしたので振り向かずに声を掛ける。
「センセイが帰ってこないから、どこにいるのかと探しに来た。」
「ここにいるよ。
 気にしないであっちで飲んでろ。」
「寂しいじゃないか。」
「なにヌかす…やめろって!」
後ろから抱きついて来やがった!

「母さんがいんだろ!放せよ!」
恥ずかしいからやめろ!
「あらあら。新婚さんはアツアツねぇ♪」
母さーん!
にこにこしてないで止めて下さーい!
「ええ。センセイがいないと寂しくて仕方がないんです。」
「うるせぇ!
 たまの親子の語らいくらい、邪魔すんな!」
必死に男を引きはがす。

「では私も混ぜて戴こうかな。」
オレの隣に座って手を握ってきやがる。
「放せって!あんたはあっちで飲んでろよ。親父が待ってるぞ。」
「君がいないとつまらないじゃないか。」
「だからオレは母さんと話してんの!」
「それで、なんのお話しですか?」
にっこり母さんに話しかけんな!話題に混ざるな!

「そうそう。
 エドの仕事が忙しいときには二人で食事に来なさいね。って話していたの。
 ロイさんは残業があまりないんでしょう?」
「ええ。
 センセイの仕事が遅くなるときには私が3人分の食事を戴いて帰りましょうか。」
「そうして貰えると助かるわ。
 エドはすぐに食事を抜くから。」

「おい!二人で話を進めんな!」
「あら。だってそうすればロイさんにもバランスのいい食事をさせてあげられるわよ?」
「う…。」
確かにオレが作れないときに母さんの食事があると助かるし躰にいい。
「本当にいいお嫁さんしてるわね。ロイさん、お幸せね♪」
「ええ。私には過ぎた妻だと思っています。」
しれっと言うなぁ!

「マスタングくーん!」
リビングから親父の声がする。
「ほら。親父が呼んでるぞ。行けよ。」
「お母さんも行くからエドも行きましょう。
 ロイさんを放っておいちゃだめよ。」
なんで四六時中くっついてなきゃならないんだよ!?

「へぇへぇ。…氷とか足りてるか?」
「そういえばそろそろ無いかも知れないな。
 器を持ってくる。」
「あら。私がするからロイさんは座ってて。」
「いいえ。お義母さんこそあちらで座っていて下さい。」
いつの間にオレの母さんがあんたの『おカアさん』になってんだよ!?

オレが氷を用意してる間に男がリビングから氷入れを持ってきた。
「ん。よこせ。」
氷を入れていると後ろから抱きしめてくる。
「放せよ。」
「センセイ。口づけしてもいいか?」
「人のいるトコですんなって言ったろ?」
「今誰もいない。さっき君と離れていたからしたいんだ。」

も、なんなの?こいつ。
万年発情期?
オレと離れてたって、何時間もじゃなし。それが理由になんのか?
思わずため息が出た。
「キスだけだぞ。すぐ終わらせろよ?」
「ん。」
オレの手から氷入れを取るとシンク台に置く。
振り向いたオレの腰とうなじに手が廻される。
ゆっくりと触れた男の唇に慣れてしまった自分がどうもなー。
口ん中に入ってきて絡む男の舌に、気持ちいいとか思っちゃう自分はもっとどうかと思う。

「ぅ…ん…!」
ちょ、長い。長いって!
いつまで舌を絡めてんだよ!?
脚の間に膝を入れんな!
「兄さん、水も。…お邪魔しましたぁ!」
え!?
アルっ!?
「放せよ!アルに見られたじゃねぇか!」

ああああ。リビングに行けねぇよぉ!
「そんなに恥ずかしがらなくても。」
「恥ずかしいに決まってんだろ!バカ!」
「しかし行った方が良いと思うぞ。」
「…なんで?」
「アルフォンス君が楽しそうに報告している声が聞こえる。」
「アルーーーー!!!」
オレはリビングに向かってダッシュした。

それからは散々だった。
母さんとアルにからかわれ、親父に泣かれ。
(なんで泣くんだよ?バカ親父。)
もうイヤになって早々に帰ろうとしたとき、男が思い出したように
「そういえばセンセイ。
 税理士証とバッジを家に持ってきているかね?」
と聞いてきた。
「あー。ここんちの金庫に入ったままだ。
 持って行かなきゃな。」
「レプリカは使っていないのか?」
「使ってねぇ。あんな高いモン。
 つうか、オレ普段持ち歩いてないもん。」

本来税理士は仕事をする時、税理士証とバッジ(税理士徽章のこと。)の携帯を義務づけられている。
ま、弁護士なんかと一緒だ。
このバッジがクセモノで、これを無くすとマジでシャレにならない。
(噂ではこれを無くすと税理士会幹部から散々怒られた挙げ句、新しいバッジは20万センズするとも言われている。)
だから多くの税理士は無くすの怖さに、このバッジを持ち歩くことを嫌がる。

それでも付けていなくてはいけないと思う真面目な人のために『バッジのレプリカ』が存在している。
これを付けていれば本物を付けているのと同等と認められる、税理士が税理士会だけで購入できるモノだ。
『レプリカ』と言ってもそれは2万センズだったか4万センズだったか、えっらい高い。
無くして困るくらいなら、これを買おう。と思う人がいるんだろうけど。
残りの不真面目な人はオレのように(違法だけど)普段持ち歩かなくなることが多い。
オレがマジメにバッジを持つなんて、バッジ検査と無料相談の時くらいだ。

ちなみに税理士証の方は一生書き換えがないので、無くさない限りは登録時の写真が使われ続けることになる。
以前、税理士業40年というご婦人に税理士証を見せてもらったことがあったが、本人だか他人だかオレには判別が付かなかった。


「じゃ、また来るから。」
「御馳走様でした。また参ります。」
挨拶を済ませて実家を後にする。
帰る車の中でふと思って聞いた。
「なあ。あんたの実家って?
 挨拶に行かなくていいのか?」
「ん?私は両親がもう亡くなっている。
 その必要はないよ。」
知らなかった。そうだったんだ。

「親戚もいないのか?」
オレ、こいつのこと全然知らないんだと気が付いた。
一緒にずっと暮らして行こうと思ったのに。
「…。」
ん?なんだ?この沈黙。
「なあ。親戚っていないの?兄弟とか。」
「…姉が…」
「お姉さんがいるんだ。
 じゃ、挨拶に行かなきゃな。」
ちょっと気が重いけど。

だってうちのネジの外れたヤツらとは違うだろう。
自分の弟が同性と暮らしていると知ったら戸惑うだろうし。
でも新年の挨拶にも行かないのはマズいよな。
なんだったら、こいつだけでも行かせればいいか。

「いや。何年も逢ってないし。
 行かなくてもいいだろう。」
なんか顔色悪くねぇか?
「は?お姉さんなんだろ?
 挨拶くらい行けよ。」
「…センセイも一緒に行ってくれるか?」
「あ?ああ。
 あんたなんでそんなイヤがんの?」
「…姉に逢えば解る。
 ああ。姉は偏見を持っていないから、私たちのことは解ってくれている。」
なんだ。ちゃんと連絡は取ってんじゃん。
へえ。弟の異常な性癖も理解するとはおっとこ前なお姉さんだな。
ちょっと感心した。

「じゃあ明日お姉さんが家にいるんなら、挨拶に行こうぜ。
 ショチョウから連絡しといてくれよ。」
「…本当に行かなきゃダメか?」
「だからさ。なんでそんなに厭がるかな。
 苦手なの?」
「苦手…そうだな。苦手だ。」
いつも余裕のこいつが苦手な人というのに興味を持った。
「あんたが本当に不快な思いをするってんなら無理強いはしない。
 けど、オレはお姉さんがいるんなら、年始の挨拶くらいはするべきだと思う。」
もしかしたら好き放題しやがるこいつの弱点を掴めるかも知れない。と思ったのはこいつにはナイショだ。



「明けましておめでとうゴザイマス。
 初めまして。エドワード・エルリックと申します。
 あの、弟さんとは…。」
実はその後の言葉が思いつかなかったんだけど、それは杞憂のようだった。
「ああ、センセイ。初めまして!
 私はイズミ・カーティス。お噂は弟からかねがね。」
がはは。と豪快に笑う女性にオレは好感を持った。
うーん。この髪型はドレッド?とは思ったが。

「よく似ていらっしゃるんですね。」
オレは第一印象を口にした。
だって、男とお姉さんはそっくりだった。
「ああ、姉弟だからね。
 でも性格は似て無くて。
 情けない弟で申し訳ないね。」
情けない?
オレはそう思ったことは無かった。

「姉さん、とりあえずその辺で。
 …義兄さんは?」
なんで男がビクビクしているのかと思ったが、こんな豪快なお姉さんじゃ仕方がないかな。
「新年だってのに急な配達が入ってね。
 お得意さんだから仕方ないけど。
 ま、入んなさい。」
お姉さんの嫁ぎ先はお肉屋さんだった。
こいつは肉好きだから連絡を取っていたのかな。
(んな訳ないか。)

「最近もちゃんと躰を鍛えているのかい?」
お姉さんが男に聞いた。
「ええ。なまらない程度には。
 そうだ。エルリックセンセイも組み手が得意なんです。
 手合わせしてはどうですか?」
おい!
オレに相手をさせて、あんた逃げようとしてないか?
「ふーん。そうか。
 ところで東側の壁が壊れかけていてね。
 ロイ、あんた手合わせの間に直しておきな。」
「ハイ。」
うーん。力関係が如実に解る姉弟だ。


オレはアルに勝ったことは無いけれど、体術にはそれなりの自信が有った。
それでも全くレベルが違う。
お姉さん、強すぎます!
乱れた息を直す間もなく地面に倒れ込んでしまった。

「スミマセン。完敗です。」
「あー、いや。仲々やるね。センセイ。愚弟とは比べものにならないよ。」
「え?やつ、そんなに弱くはないでしょう?
オレはあいつに敵うと思ったことはありませんよ?」
いや、体術で組み手をしたことはないけども。
「そんなことはないと思うけど。
 ああ、アレは昔からハッタリが強くてね。」
はは、と笑いながらオレの傍らに座る。

「昔からあの子は無表情で無関心な子でね。
 親も私も心配したモンだ。」
それは意外な言葉だった。
あいつの表情豊かな所や、オレへの異常な固執を知っているオレには。
「そんな子供だったんですか?」
「子供時代だけじゃなく、大人になってもそうだったよ。
 本当に何が楽しいのかと思うくらいまわりに無関心で。
 それでも妙な迫力が有ったらしくて周りからは一目置かれていたようだ。
 私はあいつが心配で色々躰を鍛えようとさせたんだけどね。」
あの…お姉さん、それがあいつのトラウマになってやしませんか?
オレにはどうもそんな気がしてならないんですが。

「そんな私の心配を余所に、ヤツは私に反抗して『ホワイト・カラーになる』とほざいて税務署なんかに勤務しやがった。」
お姉さん、その握り絞めた拳が怖いです。
「でもあの子がある日、とても嬉しそうに帰ってきたんだ。
 それがセンセイに逢った日だったらしい。
 ま、かるい運動の後、あの子に聞いたんだけどね。」
それは所謂セッカンというヤツでは?
あ?
それってオレが9歳の時ですか?

「なんて言ってたんですか?その…元気に帰ってきた日に。」
思い違いかと確認をしたかった。
「うん?『金色の天使に逢った。』とヌかしていたよ。
 探し求めていた恋人にやっと逢えたと。」
はあ。そうですか。
ここんちでも立派な変態でしたか。ヤツは。

「それが男で、お姉さんはどう思われました?」
オレはやっぱり自分をやつの親戚には認めて貰いたいと思った。
特にこの人には。
「ん?性別なんて問題がないと思ったよ。
 たまたまあの子が人間として好きになった人が男だっただけだろう?
 その程度のことだと思ったし、それよりもあの子が他の人間に執着を持ったことが嬉しかった。
 …センセイにとっては迷惑だったかな?」
オレはあいつのお姉さんがイズミさんで心底よかったと思った。

「いいえ。迷惑なんかじゃありません。
 オレはあいつのお姉さんがあなたで嬉しいです。
 ただ…ごめんなさい。
 オレじゃ、あいつの子供が作れません。
 それでもいいですか?
 …オレでもいいですか?」
いつの間にオレは泣いていた。
こんないい人を、もしかしたらオレの存在は哀しませるかも知れなくて。
それが申し訳なくて。

「ごめんなさい。
 オレ、あいつが好きです。
 …ごめんなさい。」
「センセイ。謝らなくていい。
 私はセンセイに感謝しているんだから。」
「…でも、…オレじゃ…。」
「センセイ、あの子を頼めるのはセンセイだけだ。
 どうかお願いしますね。」
オレの頭をずっと撫でてくれたイズミさんの手は優しかった。
それは男の手の優しさに似ていて。

「ごめんなさい。」
オレはバカみたいにその言葉を繰り返して。
イズミさんは呆れずにその言葉を否定してくれて。
オレの意識が掠れる頃
「エルリックセンセイ、あなたも私の大切な弟だ。」
その言葉が嬉しくてオレはもっと泣いてしまった。

オレにとっても、イズミさんはアルと同様オレの大切な姉弟です。
泣きすぎておかしくなっていたのかも知れない。
男はオレを抱きしめて家に帰ったらしい。
そんなことすらオレには解らなくなっていた。




Vol.26

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