F.A.SS -
「鋼の錬金術師」の二次創作
【基本のエドロイSS】 -
原作をベースにした、エドロイSSです。
時系列順に並んでいます。
(下に行くほど後の出来事になります。)
誰がために - (まだロイの片想い)08.06.25up
- (両想いでもお互い気付かない)08.6.26up
水の中の月 - (告白)08.6.29up
- 08.6.30up
- (初めての触れ合い。大佐が咥えるのみ)08.7.1up
- (初体験)08.7.11up
蹟(しるし) - (大佐から初めてのキスマーク) 08.7.16up
シチュー - (大佐が熱を出さなくなったあたり)08.7.16up
- (大佐が壊れてます。ちょっとギャグ)08.7.22up
フソク - (豆がいないと闇がぶり返す大佐)08.7.22up
摂取 - (「フソク」の続き。相変わらず闇に囚われている大佐と帰ってきた豆)
08.7.22up
Turn R
Turn E
幕間 - (ごめんなさいなギャグ)
08.8.8up
- (ヤってるときのエドVer. 「虚」と対になってます。)
08.8.8up
- (ヤってるときのロイVer. 「彩」と対になってます。)
08.8.8up
- (「虚」の続き。どーしようもなくグダグダなロイ)
08.8.8up
- (兄さんと酔ってご機嫌の大佐。未然ジェラシー)08.10.25up
- (鬼畜い兄さん♪後、ヘタレ)08.10.25up
【遊 シリーズ】 -
パラレル。税務署長のロイと税理士のエド。

このSSは途中からRPG方式で、「遊」(ロイエドVer.)と「遊 脇道」(エドロイVer.)に枝分かれします。
但し、「遊 脇道」は「遊」本編と「遊 番外編」数本を包括した入れ籠構造になっておりますので、
「遊」→「遊 番外編」→「遊 脇道」の順に読まれることをお奨めします。
その順番にupして行きます。

「遊」vol.1〜vol.9 - 「遊」「遊 脇道」とも枝分かれするまで共通です。
「遊」vol.1 - 08.11.12up
「遊」vol.2 - 08.11.12up
「遊」vol.3 - 08.11.13up
「遊」vol.4 - 08.11.13up
「遊」vol.5 - 08.11.13up
「遊」vol.6 - 08.11.16up
「遊」vol.7 - 08.11.16up
「遊」vol.8 - 08.11.16up
「遊」vol.9 - 08.11.16up
「遊」 Vol.10以降(ロイエドVer.) -
ロイエドがお嫌いな方も、これはこの後のエドロイver.がこの「遊」のロイエドバージョンを含んだものですので、お読み戴ければ幸いと存じます。

「遊」vol.10 - 08.11.19up
「遊」vol.11 - 08.11.19up
「遊」vol.12 - 08.11.19up
「遊」vol.13 - 08.11.19up
「遊」vol.14 - 08.12.7up
「遊」vol.15 - 08.12.7up
「遊」vol.16 - 08.12.7up
「遊」vol.17 - 08.12.7up
「遊」vol.18 - 08.12.7up
「遊」vol.19 - 08.12.7up
「遊」vol.20 - 08.12.7up
「遊」vol.21 - 08.12.12up
「遊」vol.22 - 08.12.12up
「遊」vol.23 - 08.12.12up
「遊」vol.24 - 08.12.12up
「遊」vol.25 - 08.12.12up
「遊」vol.26 - 08.12.12up
「遊」vol.27 - 08.12.12up
「遊」vol.28 - 08.12.12up
「遊」vol.29 - 08.12.12up
「遊」vol.30 - 08.12.12up
「遊」vol.31 - 08.12.16up
「遊」vol.32 - 08.12.16up
「遊」vol.33 - 08.12.16up
「遊」vol.34 - 08.12.16up
「遊」vol.35 - 08.12.17up
「遊」vol.36 - 08.12.17up
「遊」vol.37 - 08.12.17up
「遊」vol.38 (これで完結です) - 08.12.17up
「幻」 (「遊」 番外編)(エドロイ) - 08.12.17up - (旧テレビアニメのラストから映画シャンバラのその後。ロイVer.)
「惑」 (「遊」 番外編)(エドロイ) - 08.12.17up - (旧テレビアニメのラストから映画シャンバラのその後。エドVer.)
「遊 脇道」(エドロイVer.) - 「遊」Vol.10以降
こちらはエドロイバージョンのうえ、ロイが精神的に壊れてしまっています。
しかも暗いです。
弱いロイが厭だという方はお読みならないで下さい。
「遊 脇道」Act.1 - 08.12.17up
「遊 脇道」Act.2 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.3 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.4 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.5 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.6 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.7 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.8 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.9 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.10 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.11 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.12 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.13 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.14 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.15 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.16 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.17 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.18 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.19 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.20 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.21 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.22 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.23 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.24 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.25 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.26 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.27 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.28 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.29 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.30 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.31 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.32 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.33 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.34 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.35 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.36 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.37 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.38(とりあえず完結ですが、「澱」へ続きます) - 08.12.26up
「澱」 (「遊 脇道」完結話) - 08.12.26up - (「脇道」のロイVer. これで「脇道」の本編は終わりになります)
「寥」 (「遊 脇道」 番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (「幻」の割愛部分)
「仕」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (駅前相談するセンセイ)
「誤」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (ある日税務調査が…)
「加」 (「遊」番外編 エドロイでもどっちでも) - 09.1.7up - (本編に入れ忘れた生協の小ネタ)
「罪」 (「遊 脇道」番外編) - 09.1.7up - (そして今2人は)
「問」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (そして今2人はその2)
「策」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 16.12.29up - (あの夜の男は)
【その他 ロイ受】
「戯」 (ブラロイ) - 09.1.7up - (ロイにホムンクルスと知られ、別れを告げるブラッドレイ)
「蓮」 (キンロイ) - 09.1.7up - (イシュヴァールにて。意外にほのぼのかと…。)
「痴」 (エドロイ)(単発) - 09.1.7up - (淫乱ロイの純情)
「羞」 (エドロイ前提ハボロイ)(「痴」シリーズ?) - 09.1.7up - (「痴」の続編。エドを愛しているロイだが、ハボに…。いや、ハボは被害者なのですが。)
- 上下につながりはありません
「紅」 (エドロイ) - 09.1.7up - (久しぶりに司令部に来た兄さん)
【単発 ロイエド】 - (焦れたロイにレイプされるエド。18禁のレイプものですんで、ご注意下さい)
「赦」 Act.1 - 09.1.7up
「赦」 Act.2 - 09.1.7up
【単発 ハボロイ】
「憂」 - 14.10.16.up - (ロイとハボックの阿呆らしいすれ違い)
「今更」 - 09.1.7up - (自分の想いに気付くロイ)
「蜜」 - 09.1.7up - (恋人になった後。エロシーンばっか)
「背」 - 09.1.7up - (ハボの背中に惹かれるロイ)
【「錯」シリーズ】 - ハボロイオンリーです。
イシュヴァールでの経験がロイに与えたものは…。
- 今はなき某数字SNSで、2007年9月から書いていたものです。
「錯」 Act.1 - 09.1.7up
「錯」 Act.2 - 09.1.7up
「錯」 Act.3 - 09.1.11up
「錯」 Act.4 - 09.1.11up
「錯」 Act.5 - 09.1.12up
「錯」 Act.6 - 09.1.16up
「錯」 Act.7 - 09.1.16up
「錯」 Act.8 - 09.1.17up
「錯」 Act.9 - 09.1.17up
「錯」 Act.10 - 09.1.18up
「錯」 Act.11 - 09.1.20up
「錯」 Act.12 - 09.1.21up
「錯」 Act.13 - 09.1.24up
「錯」 Act.14 - 09.1.27up
「錯」 Act.15 - 09.1.29up
「錯」 Act.16 - 09.2.1up
「錯」 Act.17 - 09.2.6up
「錯」 Act.18 - 09.2.12up
「錯」 Act.19 - 09.2.15up
「錯」 Act.20 - 09.2.20up
「錯」 Act.21 - 09.2.26up
「錯」 Act.22 - 09.3.9up
「錯」 Act.23 - 09.3.13up
「錯」 Act.24 - 09.3.20up
「錯」 Act.25 - 09.3.26up
「錯」 Act.26 - 09.4.7up
「錯」 Act.27 - 09.4.21up
「錯」 Act.28 - 09.5.6up
「錯」 Act.29 - 13.5.21up
「錯」 Act.30 - 13.5.22up
「錯」 Act.31 - 13.5.23up
「錯」 Act.32 - 13.5.26up
「錯」 Act.33 - 13.5.31up
「錯」 Act.34 - 13.6.2up
「錯」 Act.35 - 13.6.17up
「錯」 Act.36 - 13.6.19up
「錯」 Act.37 - 13.6.26up
「錯」 Act.38 - 13.7.11up
「錯」 Act.39 - 13.7.14up
「錯」 Act.40 - 13.7.19up
「錯」 Act.41 - 13.7.27up
「錯」 Act.42 - 13.8.13up
「錯」 Act.43 - 13.11.22up
「錯」 Act.44 (完結) - 13.11.26up
「聴」 (『錯』番外編) - 最終話後、ツケを支払に行くロイ。
Vol.1 - 17.1.7up
Vol.2 - 17.1.7up
【瑠】シリーズ - 【注意書きです】
これはいつものロイエドロイと、また原作とも異なるパラレルのロイエドロイSSです。
(すみません!最初間違えて『ロイエド』と書いてましたが、ロイエドロイです。)
原作またはアニメ設定以外受け容れないと言う方はお読みにならないで下さい。
最初は「人魚」のタイトルでしたが、後に「瑠」にしました。
「瑠」 Act.1 - 16.12.30up
「瑠」 Act.2 - 17.1.1up
「瑠」 Act.3 - 17.1.3up
「瑠」 Act.4 - 17.1.11up
Gift - 頂き物など
取調室にて -
ヒューズ×ロイ from 志乃さま
give me more -
ヒューズ×ロイ from 志乃さま
> 【遊 シリーズ】 > 「遊」 Vol.10以降(ロイエドVer.) > 「遊」vol.16
「遊」vol.16
08.12.7up
アルと相談の結果、オレ達は28日の今日を仕事納めにした。
事務所の大掃除をすませ、いつもよりずっと早い時間に引き上げることにする。
「兄さん、このままロイさんちに帰るの?」
「いや、オレも一緒に家に帰る。
 他に持ってくるモンがあるかも知んないし。」
なんか追い出されたっぽいとはいえ、いきなり家を出ちまったからな。
「久しぶりだね。兄さんが『実家』に帰ってくるの♪」
「『実家』言うなぁぁあ!!」
とりあえず男の携帯に
「アルと家に帰ってる。」と、メールを送っておく。

「ただいまー。」
なんか本当に久しぶりに家に帰ってきたな。
「お帰りなさい。あら。エドも来たの。」
「や。母さん。オレ『来た』んじゃなくて『帰ってきた』から。」
オレの声を聞きつけたのか、親父まで玄関に来る。
「なんだ、エド来たのか。」
「親父、だからさ…。」
「家を出たら、『ただいま』じゃなくて『こんにちは』って言うモンだぞ。」
「おい!いつオレが家を出るって言ったよ!?
 どいつもこいつもオレを追い出しやがって!」
「あらぁ。実家に帰されちゃったの?ケンカでもした?」
のんきにそんなことを言わないで欲しい。
オレの家族ってこんなにヘンだったか?
いや、元々親父はヘンだけど。
「いや。ケンカはしてないし、別に帰されてきたわけでもねぇ。」
も。いい。
きっと何を聞いてもムダな気がする。

「それで新婚生活はどう?」
「いや、新婚違うから。」
リビングで久々に家族全員がそろって茶を飲む。
せめてもの救いは、オレの分が客用のティーカップで出されなかったことか?
親父が心配そうな顔をしたと思ったら
「ちゃんと大切にされてるか?」
とほざきやがった。
「なんだよそれ。オレは嫁じゃねぇ。」
大切…にされているとは思う。
大変な目にも遭わされたけど。
マズい。顔が紅くなってきた。

「夫婦生活って、最初が肝心なのよ?
 家事の分担とか、きちんと躾けなきゃだめよ?」
「だから母さん、夫婦じゃないから。」
夫婦生活って…。
うわ。顔が火照ってる!
「幸せそうだね。兄さん。」
アル、余計なこと言うな!
「そうね。幸せそうで安心したわ。」
「いつでもイヤになったら帰ってきていいんだぞ。
 父さん待ってるからな。」
「あら。簡単に逃げ出すようじゃだめよ。」
「〜〜〜!」
絶対ヘンだ!オレの家族!

「ところで、家財道具は足りてるの?」
「え?」
「洗濯機とかアイロンとか電子レンジとか。ちゃんとあるの?」
有った…かな?
「えっと、洗濯機はあった。電子レンジはなかったな。
 包丁とまな板も無かったくらいだ。
 アイロンは…分からない。」
「やっぱり嫁入り道具は用意しなきゃダメだったわね。
 ロイさんは自分が用意するからいいって言ってたけど。」
そんな話まであいつとしたのか!?
つか『嫁入り道具』って…。

「あのさ…。」
1つだけ聞いておきたいことがあった。
「オレ、長男なのに家を出ちゃっていいのか?
 子供だって作れないんだぜ? あいつといちゃ。
 それで親父や母さんはいいのか? 本当に。」
男を受け容れるまでは色々考えたけど、オレは長男気質だ。
一度受け容れた人間は護るし、大切にする。
でも、本当にそれで母さんたちはいいんだろうか?
孫の顔も見せられなくて。

「エドは父さんの仕事を継いでくれたじゃないか。
 もちろんアルもだが。
 長男としての努めは充分果たしてくれたと父さんは思ってる。
 それで充分だ。」
「エドはロイさんが好きでしょう?
 一緒にいて幸せなんでしょう?」
「う…うん。」
「それで充分よ。
 エドが幸せなら、それが親孝行よ。」
「孫ならボクが沢山母さん達に見せてあげるよ。
 結婚しても子供を作らない夫婦だっているんだから、兄さんが気にすることはないよ。」
うん。なんか根本的に全員間違っているような気がするけど、やっぱり気持ちは嬉しかった。
「うん。…ごめんな。」
「兄さんが謝ることないってば。」
うん。
そもそもは男の口車にこいつらが乗せられなければオレが謝る必要も無かったと言うことは、この際置いておこう。
もうオレがノーマルだったことなど、なんの意味も持たないのだから。

その時携帯が鳴った。
「悪い。メールが来たみたいだ。」
開けてみると男からだ。メッセージは
「家ってどちらのだね?」
の一言だった。
「なに?ロイさんから?」
好奇心に充ち満ちた顔で母さんが聞く。
「うん…。」
「え?なんて来たの?早く帰ってこい?」
なんで嬉しそうなんだ?アル。
あいつはまだ仕事中のハズだぞ。

黙って携帯をアルに渡す。
アルから母さん、親父へと携帯が廻される。
「兄さんはなんて送ったの? その返事だよね?」
「『アルと家に帰ってる。』って送った。」
「あら、ちゃんと『家』と『実家』は使い分けなきゃだめよ。
 それじゃロイさんもどっちにいるか解らないわ。」
あー。解りました。
今日からここは『オレんち』じゃなくて『実家』デスネ!
男に「実家。」と返事を返す。

「エド。」
黙っていた親父が口を開く。
「あ?」
「いつもの銀行のな、受付の子から
 『今、鋭意制作中なんですけど、どちらが「セメ」なんですかぁ?』と聞かれた。
 今度聞いておくと言っておいたんだが、なんと答えればいいんだ?」
「…!」
あのメガネの娘か!
どちらが攻って…。
「あのな。『ご想像にお任せします。』と伝えてくれ。」
まさか怖くて抱かれてませんとは言えない…。
つか、ナニを制作してるんだ?
男は解っていたようだけど。
オレの知らない世界だ…。

「オレ、そろそろ帰るよ。」
しばらく雑談をした後で告げる。
オレの部屋にはもう送られた後らしく、スーツすら残されていなかった。
空の本棚とベッドが残されているだけで。
ちょっと寂しかったな。

「ロイさんによろしくね。兄さん。」
「また飲みに来るよう伝えてくれ。」
「仕事が忙しくなったら食事しに二人でいらっしゃいね。」
『帰る』という言葉が自然に出たのに自分でちょっと驚いたが、それにはなんの疑問も抱いていない見送りの言葉を受ける。
「ああ。じゃ、また。正月に来るよ。」
次に『来た』ときは『こんにちは』と言わなきゃいけないんだな。
そんなことを思った。
うん。なんか違うと思うけど。


『オレんち』はもうここなのか。
ドアの鍵を開けながら考える。
ちょっと感慨深い。
まだ5時前だ。
『新しい家族』が帰ってくるまでに掃除でもするか。
雑巾を探しにランドリーに行く。
そうだ。ここんちは乾燥機が備え付けてある。
ついでに洗濯もしちまおう。
と、洗い物を洗濯機に入れた時点で気が付いた。
「洗剤がない…。」
もしかしてあの男、パンツまでクリーニングに出してるのか!?

洗剤(オレの『実家』は洗濯石けんを愛用している。)は食料品をのついでに買えばいいか。
あ、アイロンは?
しばらく探したが無いようだ。
アイロン台も買うとなるとやつと二人で行った方がいいかな。
電子レンジも欲しいな。
裁縫道具も必要だ。

ふと、オレが来てから増えるものを思い浮かべた。
包丁、まな板、アイロン、アイロン台、電子レンジ、裁縫箱…。
『嫁入り道具』
という言葉が頭に浮かんで、思わずへたり込んでしまった。
オレ、やっぱ『嫁』?
『嫁』なの?
つか、『新婚さん』なのか?オレ達。
いやいや。落ち着け。
オレまで常識を失ってどうする!

「何をしているのかね?」
「なぁ!?」
いきなり降ってきた声にびっくりする。
「どうした?センセイ。
 座り込んでいるかと思ったらいきなり頭を振り出すし。
 …そんなに驚いたか?」
「あ…。おかえり。」
「ただいま。で、どうしたのだね?」
「や。えと、洗剤が無かった。
 あと、アイロンとか電子レンジとか買おうかなと。」
「それで座り込んでいたのか?」
「ああ…。まあ。」

釈然としない表情ながらも男がオレをリビングへと連れて行き、ソファに落ち着いた。
「ただいま。センセイ。」
「? さっきも言ったぞ? おかえり。」
「いや、いいものだな。
 仕事から帰ると灯りがついていて『おかえり』と言ってくれる人がいるのは。」
ああ。大抵オレの方が仕事が終わるのが遅いからな。

「明日も言ってやれるぜ。オレは今日で仕事納めだ。」
「それは嬉しいな。
 君のいる家に帰るのはとても幸せな気分だ。
 もう実家から帰っていたのだね。
 遅くなるようなら迎えに行こうと思っていた。」
「ああ。なんか意思の疎通が図れないような気がして帰ってきた。」
「?」
「いや、いいんだ。それより買い物に行かないか?」
「アイロンや電子レンジを買いに?
 すまなかった。君が来る前に用意をしたかったのだが、なにが必要か私には解らなくてな。」
「や、気にすんな。オレ、あんたと1つ1つ買い揃えて行くのもいいなって思う。
 オレ達の生活を作るって感じがするから。」
思った以上に嬉しそうな顔が見られた。
「センセイ!早く行こう!」
腕を引っ張るな!
コドモか!?あんたは。


なんだか上得意になってしまった気がするショッピングセンターで、ふと思いついて聞いてみる。
「なぁ。これからオレ忙しくなるから生協やらないか?」
「生協?」
「うん。個人宅配もしてるから買い物に出なくて済むんだ。オレんちも共同購入だけどやってる。」
「センセイがいいと思うなら私はかまわないが?」
「じゃあ申し込んでおくよ。出資配当も1%近く付くしな。
 今時どの預金でも1%は付かないぞ。」
「それがメリットなのか?」
「いや、そういう訳じゃないけど。
 遅い時はオレ、日をまたいで帰るかも知れないから。」
洗濯石けんも見付けて買っておく。
やはり男はすべての洗濯物をクリーニングに出していたようだ。
本当にもったいないオバケを常駐させたいやつだ。

そういえば正月のプレゼントをまだ用意していなかった。
丁度いいから買ってしまおう。
「なあ。プレゼント選ぶの付き合ってくんないか?」
「プレゼント?かまわないが。
 どんなものがいいんだね?」
「女性が好きそうなもの。
 あんた選んでくれないか?」
「女性に?」
あれ?男の声が低くなった?
「うん。貰って喜ぶようなもんって何かな?」
毎年選ぶのに苦労している。
今年からは悩まなくて済むな。

「相手によるな。どんなタイプの女性だね?」
タイプ…。タイプで言うと…。
「…大人なんだけど、いつまでも少女みたいなタイプ…かな。
 優しくて、かわいい感じ?」
「ほぉ。そのかわいい女性に贈るものを私に選べと?」
なんで青筋立ててんだ?
「ああ。あんたの方が女性へのプレゼントに詳しそうだからな。
 オレよくわかんないんだ。」
「女性など花でも贈っておけばいいだろう。これはどうだ?
 フランス原産の花だぞ。」
「おい。それ仏花だろう。なにウソこいてんだよ。
 つかなんでそんな不機嫌なの?」
「なぜ私がその女性に贈るものを喜んで選ばなくてはならないんだ?
 君は私の恋人としての自覚があるのかね?」

「あのさー。たまの親孝行くらい、もちょっと広い心で受け止めらんねぇの?」
「親孝行?」
「そうだよ。オレ働きだしてから、お年玉代わりに毎年母さんにプレゼントしてんの。」
「…ショールなんかどうだ? ご母堂に合うと思うのだが。
 それともカシミヤのカーディガンとか。
 綺麗な色合いがきっとお似合いだな。
 婦人用品のフロアへ行こう。」
うわ。いきなり上機嫌かよ。
しかもいやに熱心だ。
なんなんだよ。一体?

男が選んだのは淡い色合いのパシュミナ?とかいう薄地のショールだった。
これは母さんが喜びそうだ。
「やっぱあんたに選んで貰ってよかった。これからもよろしくな?」
「君のご家族は私にとっても大切な人だ。
 喜んで貰えると私も嬉しいよ。
 ところでお父上にはなにか贈らないのかね?」
「親父はいいんだ。まだ稼げんのに勝手に引退してんだから。
 母さんだけで充分。」
「ではお父上には私から酒でも贈るか。
 いつも御馳走になっているからな。」
「ああ。喜ぶんじゃねぇ?」
アルはあまり酒を飲まないし、オレは事務所に泊まりがちだったからゆっくり酒を飲む相手ができて嬉しいんだろう。
母さんもこいつに対しては満更でもないようだし。
いつの間にオレんちに馴染んでたのかは謎だけど、正月に帰ったらきっとみんなで楽しく過ごせる。
それがオレには嬉しかった。


晩メシは昨日のシチューが残っているから特にすることはない。
サラダでも作ればいいだろう。
やっぱり洗濯をしておこう。
「なぁ。」
ここは一つ、家事分担は最初に躾けるという母さんの言葉に従おう。
「ん?どうした。センセイ。」
「あのさ、オレも仕事が有るから家事全部はこなせない。
 あんたも簡単なモンでいいから、これから家事を覚えてくんないか?」
「もちろん。君が教えてくれるなら。
 私は何を担当すればいいのかな?」
厭がるかと思ったら嬉しそうだ。
これは上手く行くかも知れないな。

「とりあえず洗濯を覚えてくれ。ここんちは乾燥機があるから干さなくて済むし。」
ランドリーに連れて行き、洗濯機の使い方を説明する。
このくらいは出来るだろう。
「これでスーツも洗えるのか?」
うーん。
常識のあるヤツはオレの周りにいないのか?
「スーツは無理だ。クリーニングに出す。コートも無理だ。」
「シーツは?」
「糊が利いてなくてもいいんなら洗える。
 ここで洗ってアイロンだけクリーニングに頼むって手もあるしな。」
「ワイシャツは?」
「オレがアイロンを掛けられるときは洗濯してもいいけど、当分は忙しいからクリーニングだな。」
男がオレの手を握ってくる。

「ワイシャツはずっとクリーニングにしよう。
 センセイがアイロンを掛けている間、私がつまらない。」
「つまるとかつまらないって問題か?」
手にキスすんな。
「君はクリーンサービスも断るつもりだろう?」
「ああ。金のムダ。贅沢だ。」
「君が家事に時間を取られるくらいなら、頼んだ方がいいんじゃないか?」
「掃除くらい、週一でもいいから自分ですればいいだろう?」
「その間君に触れられない。」
「日がな一日いちゃつくつもりか?
 掃除くらいこなせなくてどうするんだ。」

こらこら。
腰に手を廻すな。
必要以上に近づくな!
耳にキスするな!!
「仕事の間離れているのだから、家にいるときくらい君に触れていたい。」
オレは家にいるときくらい身の危険を感じないでいたい。
別に仕事中に危険を覚えるわけではないが。

「も…。放せよ。
 家事の話が済んでない。」
「このままでも聞こえる。」
「ん…っ!」
耳たぶに歯を立てるな!
「それで…?
 他に私はなにをすればいいのかな?」
おま!それ、聞いてる意味が違わないか!?

言葉と共に男の息が耳に吹き込まれて。
うわ。膝が堕ちた。
腰に廻されていた腕に力が込められて、ゆっくりと床に降ろされる。
オレに覆い被さるように男も腰を降ろす。
「おい。こんなとこでサカんな。」
「そんな艶っぽい顔で言っても効果がないよ?」
オレのすぐ後ろは洗濯機だ。
逃げ場がない。

とにかく家事の話だ!
「あとあんたに任せられるものといったら風呂入れとゴミ出しくらいか?
 掃除を覚えてくれると助かるんだけどな。」
「掃除はサービスに頼もう。他は引き受けた。
 …話は終わったな。」
「まっ…!」

それでも言葉の強引さとは裏腹に、そっと確かめるような優しいキスをされた。
ここでオレがイヤと言えばきっと男は引き下がるのだろう。
……多分。
舌を入れんな。
ネクタイを弛めるな!
ワイシャツのボタンを外すな!

ふと男が顔を上げる。
「なあセンセイ?」
「…ん?」
オレ息が荒いよ。マズいよ。
この隙に逃げたいが無理だ。
男がゆっくりとオレのネクタイを外す。
「ネクタイは洗えるのか?」
「…汚れたらクリーニングに出す。」
「そうか。」
「もうや…」
続行するなーーー!!!


「ふ…。」
男がオレの鎖骨を舐める水音がランドリーに響いている。
こんな明るいところで男に肌を晒すのは初めてだった。
それが恥ずかしいのに。
「んんっ!」
右の胸の先を舐められ、左は男の指で撫でられ、弄られる。
「は…ぁ…」

オレを怯えさせない為なんだろうけど。
ひどく優しい触れ方が、かえってオレに強く拒むことをさせてくれなくて。
激しくない分ゆっくりと時間を掛けて、意識が翳むほどの快感に蝕まれていく。
とっくに身体から力が抜け、洗濯機に背中を預けている。
その冷たさが始めは気持ち良かったのに、もうオレの体温と同じになってしまった。
どの位こうしているんだろう?
もうここが何処かもどうでも良くなってしまっている。

「ん…も…。」
オレの内腿に舌を匍わせている男の髪に指を差し入れる。
「イきたいか?」
「ん…。」
男の手がオレのモノに添えられ、舌で舐られる。
「は…ぁ。」
咥えた男が上目遣いにオレと視線を合わせる。
「っ!」

視覚でヤられた!
今まで何度かされたが、それを見たことはなかった。
暗かったし、オレは仰向けのままだったから。
オレの様子に気付いたのだろう。
一度口から離し、オレを見据えたまま大きく舐め上げる。
「…ぁ!」
そのまま先を突くように舐め、舌を全体に匍わせる。
その陶然とした表情と直接与えられる快感に脳がとろけそうだ。

「くわ…て?」
ああ。声が掠れて出ない。
「ん?」
どうしてそんないやらしい顔ができるんだろう。この男は。
「咥えて?も…イっちゃう。」
荒い息の合間に伝える。
男の口の端があがる。
その表情だけでもイけそうだ。
ゆっくりとオレのモノが男の口に咥えられている。
ゆるやかで激しさはなくて。
それでもあっと言う間にオレは達してしまった。



Vol.17

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